Pride and Glory

pride and glory

例によって年末年始はDVD三昧だったわけですが、今年は『プライド&グローリー』(08)と『ヒットマンズ・レクイエム』(08)で立て続けにコリン・ファレルを見る事になりました。

『プライド&グローリー』はNYPDの汚職を題材にした刑事ドラマ。フランシスSr.(ジョン・ボイト)を家長とするアイリッシュ系のティアニー一家は、長男のフランシスJr.(『リトル・チルドレン』(06)のノア・エメリッヒ)、次男のレイ(エドワード・ノートン)、義理の息子のジミー(ファレル)も警察官という警官一族で、ジミーとその仲間が汚職に手を染めていた事から、家族の絆が揺らいでいくというクライム・サスペンス/家族崩壊劇です。

これまでもいろんな汚職デカ映画がありましたが、どうも汚職に走る最大の理由は「警察官は身体を張った危険な仕事なのに、給料が安い」という事に尽きるのではないかと。劇中のセリフにもあるのですが、ヤクの売人が自分たちの年収をたった1週間で稼ぐ現実を目の当たりにしたら、そりゃ「もうやってらんねーよ」という気分にもなるでしょう。だからといって給料を3割ほどアップしたところで恐らく何の解決にもならないだろうし、うーむ・・・と、見終わった後で重ーーい気分になる映画でございました。見応えあって退屈はしませんでしたが。

ファレル扮する悪徳警官のレイは、狡猾なタイプではなく浅はかな悪党という印象。「どうせ相手はヤクの売人なんだし、金をせしめてブッ殺したところで何が悪いんだ?」という感じで淡々と悪事に手を染めているんですが、この「ちょっと頭の悪そうなワル」というキャラ作りが実に巧い。過去の不祥事で辛酸を舐め尽くしたレイの複雑なパーソナリティーを体現したノートンの演技(『アメリカン・ヒストリーX』(98)を思い起こさせます)とは対照的な感じかな。最初に見た時は2人の配役が逆でも結構イケたんじゃないかと思いましたが、ノートンだったらもうちょっと思慮深い(もしくは頭の切れる)汚職デカになったような気もします。ファレルの極悪演技は一見の価値ありです。

重暗い展開といい、後味の悪いラストといい、陰鬱な暴力描写といい、どこかで見たノリだなーと思ったら、脚本に『NARC/ナーク』(02)のジョー・カーナハンが携わってました。あれも暗い映画だったなー(見応えあったけど)。それにしても、クライムドラマに登場するチンピラの悪党はひと昔前までは黒人が主流でしたが、最近は圧倒的にヒスパニック系が多くなりましたな。またそれが怖いのなんの。あの『トレーニング デイ』(01)より怖い。ヒスパニックの連中は黒人のチンピラとも違った怖さがありますな。ジャガイモをサイレンサー代わりに使うなんて、この映画で初めて観ましたよ。映画史上に残る間違ったジャガイモの使い方だわ、あれは。

音楽はスポ根ドラマ『ミラクル』(04)でギャヴィン・オコナー監督と組んだマーク・アイシャム。今回はジャズ・エッセンスを封印して『クラッシュ』(05)系のアンビエント・スコアを披露。メロディーが印象に残るような曲ではありませんが、このシブい音楽がまた重暗いドラマによく合うんだなーこれが。時折流れるピーター・マウヌの”泣き”のギターソロが哀愁を誘います。

ちなみにエンドクレジットで流れる”Waterline”はアイシャムとラッパーのSage Francisの書き下ろし。サントラでしか聴けないので必聴。