これはこれでアリではないかと思う 『コズモポリス』

cosmopolis

どちらかというと苦手なのに、つい観てしまうもの。
それはデヴィッド・クローネンバーグの映画。

自分はクローネンバーグ映画で好きな作品もあるけれども、
それ以上に苦手な作品も多かったりもするので、
今回の『コズモポリス』(12)は果たしてどっちだろうなーと、
期待と不安が入り交じった状態で本編を鑑賞しました。

ちなみに、
好き→『デッドゾーン』(83)、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』(05)、『イースタン・プロミス』(07)
苦手→『クラッシュ』(96)、『スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする』(02)
…という感じ。まだまだ甘ちゃんですね…。

 

『コズモポリス』は決して面白い話とは言えませんが、
クローネンバーグらしさという点で言えば「これはこれでアリ」だったのではないかと。
エリック(ロバート・パティンソン)がボディーガードのトーヴァル(ケヴィン・デュランド)を唐突にアレする所とか、
ベノ・レヴィン(ポール・ジアマッティ)の粘液質なキャラとか、
「不均衡(=左右非対称)」に固執する後半のストーリー展開などは、
特にクローネンバーグ度の高い要素だったような気がします。

他にもリムジンの車内や屋内の閉塞的な雰囲気とか、
妙に生々しい性描写とか、
絶妙なタイミングで突如暴発する暴力描写とか、
このあと何が起きるか分からない会話中のドンヨリした空気とか、
全編に渡って「クローネンバーグ的空気感」が充満していて、観ていて疲れます。
ある意味、いつものクローネンバーグ映画だった言えるでしょう。

しかし巷の評価はおしなべて低い様子。
まぁそれも無理ないかなーとは思うのですが、
いくらロバート・パティンソンが全編出ずっぱりの会話劇だからといって、
「こんなの舞台でやれ!」という批判はいかがなものかと。
「映画で会話劇をやられても退屈だから、そんなの舞台でやれ」というのは、
舞台俳優さんや舞台演出家の方にも失礼ですので。
まぁ確かに本作の会話は内容が抽象的で、
何が何だか分からない面もありますが、
舞台でやっても恐らく結果は同じだと思います。

 

そんな『コズモポリス』ではありますが、
個人的に文句なく素晴らしかったのは音楽。
クローネンバーグ作品なので、スコアの作曲は当然のようにハワード・ショア。
興味深いのは、演奏(兼共同作曲)をカナダのインディーバンドMetricが担当している点。
自分の場合、本編を観るより先にサントラを聴いていたので、
必要以上に映画への期待値が上がってしまいまして、
いざ本編を観たら少々頭を抱える事になってしまったという…。

なかなか罪なサントラです。

サウンド的にはエレクトロ系ギター・インストとでも申しましょうか。
『クラッシュ』の不協和音ガンガンエレキギター四重奏(?)も凄かったけど、
あれよりもう少しポップ要素やエレクトロ・サウンドの要素が強くて、
それでいてクローネンバーグ&ショアのコンビに顕著なネットリした音の質感もあって、
延々リピート再生していると気持ちよくなってくるタイプの音楽です。
それにしてもショアがMetricと組むとは、相変わらずショアは実験精神旺盛のようです。

サントラにはショア×Metricのスコアの他に、
遺体役でスクリーンデビューを果たした(笑)ソマリア出身のラッパーk’naanの”mecca”と、
エンドクレジットで流れるMetricの”Long to Live”も収録。
後者のエミリー・ヘインズの浮遊感溢れるヴォーカルがたまりません。
80年代ニューウェイヴの香りがしますね。

映画本編だとスコアの音量がやや小さめだったので、
(恐らく会話劇だからでしょう)
ここはサントラを買って大音量でスコアを聴いて頂きたいところです。
アルバム11曲目、”Benno”の異様な緊張感と後半の盛り上がり(?)が素晴らしい。

 

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