ロックなヘンゼルとグレーテルの音楽はまさに Baroque’n’Roll!!

hansel

TSUTAYAにて『ヘンゼル&グレーテル』(13)のDVDをレンタル。
去年都内某所で一緒にお茶したアトリ(・オルヴァルッソン)さんが、
「あの映画の作曲は面白かったなぁ」
…と言っていたので観てみようかなと。
この映画、結局劇場未公開のままDVDスルーになってしまいましたなぁ。

一時期『不思議の国のアリス』とか『白雪姫』とか『オズの魔法使い』とか、
有名な童話をアレンジして実写化するのがハリウッドでブームになりましたが、
この映画もその時期に作られたもの。
「大人になったヘンゼルとグレーテルは凄腕の魔女ハンターになっていた!」…というお話。
レザースーツに身を包んだヘンゼル(ジェレミー・レナー)とグレーテル(ジェマ・アータートン)が、
ファムケ・ヤンセン率いる魔女軍団とドツキ合いを繰り広げます。

MTV FILMS製作で、
プロデューサーがウィル・フェレルとアダム・マッケイ、
(『俺たちニュースキャスター』(04)などの主演&監督コンビ)
監督のトミー・ウィルコラは元ドラマーという事で、
全編ヒジョーにロックなノリのB級ファンタジー映画に仕上がってます。

 

この映画が一時期量産された実写ファンタジー作品と明らかに違うのは、
決して万人向けの作りではないという事。
ヘンゼルとグレーテルはFワードを連発するし、
牛乳瓶に行方不明の子供の写真を載せてるし、
(牛乳パックに行方不明の子供の写真を載せるアレ。詳しくはBLURの”Coffee&TV”のPV参照)
子供の頃に魔女からお菓子をたらふく食わされたヘンゼルが糖尿病を患っているなど、
ブラックなジョークも織り交ぜつつ、
頭部粉砕、人体爆散、串刺しなどのキツ目の残虐描写もかなり多め。
「このノリについて行ける人だけ楽しんで下さい」という、
かなり観る人を選ぶ作風です。
そのくせ「魔女がほうきに乗って空を飛ぶ」という設定をきちんと踏襲しているのが笑えます。

中規模予算で結構頑張ってるなとは思うのですが、
「主役喰い」の怪優ピーター・ストーメアを使っておきながら、
大した見せ場もなく物語中盤であっさり退場させてしまうのは、
ちょっと演出のセンスがないなぁ、と思ってしまいました。
まぁジェマたんが大暴れしてくれる(&かなりボコられる)ので、
『タイタンの戦い』(10)のイオ役のジェマたんにクラッと来た方は観て損はないかと。
ファムケさんの魔女役もハマリ過ぎです。

 

さて肝心の音楽ですが、これは文句なく面白いです。
この映画のハイライトはアトリさんの音楽といっても過言ではないでしょう。
監督から「メタリカみたいな音楽をやってほしい」と言われて、
その後モーツァルトやダブステップの要素もブチ込んでみたりして、
最終的に「バロック’ン’ロール」なスコアが出来上がったという話です。

で、この「B級映画じゃなきゃ鳴らせなそうな音楽」が実に痛快。
ハードロック風味のエレキギターとドラムのリズムがインパクトありすぎ。
「メタリカっぽい音楽」という監督のリクエストに見事に応えている印象。

オーケストラ・スコアとしても楽しめるし(アトリさん自ら指揮を担当)、
ノリノリのギターロック・スコアとしても楽しめる。
決して高尚ではないし、正統派の流れからは外れてしまうけれども、
「何かすげえ面白い音楽を聴いたなぁ」という満足感に浸れるサウンドですね。
個人的にはかなり好きなスコアです。

 

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