マスタリング・エンジニアの葛巻氏も大絶賛(?)!『LOST』のDSDリマスター盤を検証するの巻

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昨年ランブリング・レコーズさんから発売になった「サウンドトラック傑作選50」シリーズですが、
「3枚買ったら1枚もらえる!」キャンペーンの応募締切が明日3月31日(当日消印有効)ということで、
まだ応募されてない方はお忘れなく!…というお知らせの意味も込めて、
本日こちらのネタを投稿させて頂きました。

さてこの「サウンドトラック傑作選50」の企画ですが、
映画以外にTVシリーズのサントラ盤もいくつかラインナップに入っておりまして、
先日このブログでも『プリズン・ブレイク』『24 -TWENTY FOUR-』について書かせて頂きました。

上記の2作品は基本的に全編シンセ・スコアでしたが、
今回改めてご紹介させて頂く『LOST』は違いました。
この時期(2000年代前半)のTVシリーズにしては珍しく、
全編フル・オーケストラによる音楽で構成されていたのでした。

音楽担当はJ・J・エイブラムスの盟友マイケル・ジアッキーノ。
ジアッキーノといえば「100%フルオケ主義!」を貫く人で、
映画だろうがTVシリーズだろうがビデオゲームだろうが、
音楽は可能な限りフルオケで行くという作曲家です。
まだ彼が売り出し中だった頃に話を聞く機会があって、

「でも『エイリアス』ではテクノビートを使ってましたよね?」と尋ねてみたら、
「そうだね。でもシーズンが進むにつれオーケストラ主体の音楽になっただろう?

…と言っていたので、フルオケに相当こだわりがある人なんだなーと思ったものです。
ま、『エイリアス』はスパイ・アクションものだったので、
製作サイドも「デヴィッド・アーノルドの007音楽」のようなスコアを求めていたのだと思いますが。

そんなわけで、『LOST』の音楽は念願叶ってフルオケ・スコアになっています。
オケの編成もこの時期のTVドラマにしてはかなり大きめ…ではあるのですが、
多くのジアッキーノ・ファンが期待しているであろう、
「キャッチーなメロディー」「燃えるアクション・スコア」は皆無に等しいサウンドです。
何しろ『LOST』シーズン1は無人島が舞台の怪奇ドラマ的な内容でしたので、
いわゆる「美メロ」を聞かせるような音楽ではなかったと。

その代わりと言っては何ですが、
トレモロやグリッサンドなどの演奏技法や、
リヴァーブ、アンビエント・サウンドなどのエフェクトを駆使した、
かなり面白い音を鳴らしています。
ある意味、音響系スコアと言えなくもない。

 

このあたりをリマスタリングを担当した葛巻さんが大絶賛しておりまして、
リマスター前の音源に関しても、

『24 -TWENTY FOUR-』と比べるとサウンドの質は雲泥の差。
プロフェッショナルさを感じさせる作・編曲、演奏、録音、ミックス&マスタリング。

…などなど、特設サイトでベタ褒めしておりました。
(『24』リマスター前音源へのダメ出しは、作曲家のショーン・キャラリーさん涙目レベル…)

で、今回のDSDリマスタリングで

リヴァーブやアンビエンス成分といった空気感が、
リマスタリング前に比べると飛躍的に向上。
気持ちの良いサウンドになっている。

…のだそうです。
(詳しくは「サウンドトラック傑作選50」のページをご覧下さい)

 

言うなれば今回の『LOST』DSDリマスター盤は、
宅録系ミュージシャンやミキサーさん、
マスタリング屋さん、オーディオ機器関係者の皆さん、
音響効果マンの方など、
プロの音屋さんやオーディオマニア必携のアルバムになっているのではないかと。
メロディーというより、「音の響きそのものを味わう」アルバムと申しましょうか。
「広がりのある音」「心地よい音」とは何か?という問いへの答えが、
このリマスター盤に詰まっているのではないかなと思います。
「3枚買ったら1枚もらえるキャンペーン」でこのサントラをもらっちゃうのもいいかもしれませんねー。

『LOST』のサントラは6シーズン全てリリースされましたが、
後半のシーズンに進むにつれてどんどんマニア向けになったというか、
「ドラマのコアなファンでなければ聴くのがキビしい」サントラになっていきましたが、
シーズン1のサントラは比較的メロディアスな曲を多めに収録しているので、
全6シーズン中で最も聴きやすいアルバムになっていると思います。

事実上のメインテーマにあたるのがアルバム6曲目の”Hollywood and Vines”ですね。
「友情のテーマ」に相当するメロディーが流れるピアノ曲”Win One for The Reaper”とか、
ソーヤーたちがイカダで島を脱出するシーンの”Parting Words”などは、
『LOST』のスコアの中でもメロディアスな部類に入ります。
葛巻氏こだわりのリマスタリングが施されているのが、
24曲目の”I’ve Got A Plane to Catch”。
アコースティック・ギターの響きにこだわったそうです。
この曲、確かハーリーが815便に乗るため空港をドタドタ走るシーンの曲だったでしょうか。
グダグダなシーンだけど音楽はいいというシーズン1終盤の迷場面でした。

 

ブックレットのライナーノーツ原稿は、
ワタクシが2006年当時書いたものをそのまま使っておりますが、
プロデューサーが寄稿したライナーノーツの和訳と、
ジアッキーノ本人から聞き出した音楽解説のコメントも載っているので、
9年前に書いた原稿ではありますが、我ながらよく頑張ったなぁと思いました。

ちなみにこの『LOST』のサントラ盤、
初期のジアッキーノ作品に顕著なのですが、
収録曲の原語タイトルがかなりフザけてます。
第1話のオープニング・クレジットに被さるシーンの曲タイトルが、
ハーリーの口調をもじった”Credit Where Credit is Due”だったり、
クレアのシーンの曲タイトルが”Thinking Clairely”だったり、
ブーンの”あのシーン”の曲タイトルが”Booneral”だったり、
結構しょーもないダジャレタイトルが並んでます。

 

原語タイトルからどの曲がどの場面に使われたか推測したり、
ダジャレの元ネタを英和辞典やグーグル先生で調べてみるのも面白いと思います。
そうやって「活きた英語」を学ぶのも一興ではないかと。

ワタクシ的には今回のDSDリマスター盤で、
トレモロ奏法を使ったブルブル震える系の音を存分に楽しんで頂きたいですね。
こんな大編成のフルオケ・スコアを2006年の時点でTVドラマで流していたのは、
いま考えてもやっぱりすごいことだと思いますよ。

 

『LOST』オリジナル・サウンドトラック
音楽:マイケル・ジアッキーノ
レーベル:Rambling Records
品番:RBCP-2833
発売日:2014/11/19
価格:1,800円(+税)

 

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