『キング・オブ・エジプト』は映像も音楽もゴージャスだぜ!!!の巻

gods of egypt

先頃ランブリング・レコーズ様のご依頼で、
『キング・オブ・エジプト』(16)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。
音楽を手掛けたのは売れっ子作曲家のマルコ・ベルトラミ氏。

ワタクシ、マルコさんのサントラは過去に何度かライナーノーツを担当させて頂いておりまして、
(『アイ,ロボット』(04)、『フライト・オブ・フェニックス』(04)、『ダイ・ハード4.0』(07)、『スパイ・レジェンド』(14)の計4回)
時々ご本人にもインタビューしたりなんかもして、
ワタクシが駆け出しの物書きの頃からお世話になっているのでした。

今回は原稿の締切まで比較的日数の余裕があったので、
久々にご本人に直接お話を伺うことが出来ました(いわゆる独占インタビュー)。
マルコさんにコンタクトを取った時の第一声(?)が、

「おお、久しぶり!元気だった?」
「『キング・オブ・エジプト』の音楽解説書くの?そりゃよかったじゃないか!」

…みたいな感じだったのはちょっと嬉しかったですね~。

というわけで『キング・オブ・エジプト』の詳細な音楽解説については、
マルコさん本人のコメントが載った国内盤ライナーノーツを読んで頂きたいと思いますので、
ここでは音楽の概要や、
字数の都合で原稿に書けなかったこと、
ライナーノーツには使えないなーと思ったボツネタなどを書かせて頂きたいと思います。

 

サントラマニアには有名な話ですが、
マルコさんは故ジェリー・ゴールドスミスを”師匠”と慕っておりまして、
「汝、書き込みすぎるべからず」というゴールドスミスの教えに忠実な曲作りを行っています。
音数やサブテーマの数を必要以上に増やさない倹約的な音楽とでも申しましょうか。

で、『キング・オブ・エジプト』もエキゾティックでエピックな感じのメインテーマがあり、
このメインテーマのメロディーが劇中繰り返し登場する構成になっております。
しかし今回はメインテーマ以外にも、
セト、ホルス、ハトホルらエジプトの神々や、
主人公のコソ泥青年ベック、
ヒロインのザヤたそのテーマ(正確にはベックとザヤの”愛のテーマ”)など、
かなり多くのサブテーマがスコアの中に登場します。
いつものマルコさんの「倹約の達人」的な曲作りに比べると、
今回は音数やテーマ曲のメロディーが多めの贅沢なサウンドに仕上がっているのです。

どうも『キング・オブ・エジプト』はアレックス・プロヤス監督の頭の中に「ハリウッド黄金時代の冒険活劇のような映画を作る」というコンセプトがあったようで、
音楽担当のマルコさんも、あの時代の豪華絢爛・きらびやか&異国情緒溢れるサウンドを心がけたようなのです。
例えるならばディミトリ・ティオムキンの『ピラミッド』(55)とか、
アレックス・ノースの『クレオパトラ』(63)とか、
ああいう感じの音楽をイメージして頂けると分かりやすいかと。
実際、本作のメインテーマの旋律はモロに往年の歴史ロマン大作のイメージですし。

 

これだけだと「昔の映画音楽の完コピ」という見方をされてしまいそうですが、
現代の映画音楽らしいサウンドもしっかりと取り入れておりまして、
バトルシーンのスコアなどでは、
「唸るストリングス!荒れ狂うブラス!刻むぞ打楽器のビート!」という、
マルコさんが若い頃にホラー映画で培ったキレッキレのスコアが存分に楽しめます。

ホルスとセトの1stバトルの曲”Set vs. Horus”や、
大蛇とのバトルシーンの曲”Snakes On A Plain”(←『スネーク・フライト』の原題”Snakes On A Plane”と引っかけたダジャレタイトル)、
オベリスクを舞台にしたラストバトルの曲”Elevator Music”や”Obelisk Fight Part 1″、”Part 2″あたりはひたすらアツいので、
アクション映画音楽ファンの方は必聴ではないかと。

アクション・スコア以外の楽曲でも、
古今東西の民族楽器(必ずしもエジプト由来とは限らないのがポイント)を使ってエキゾな雰囲気を演出したり、
異世界的なムードを演出するために非音楽的な音を作り出したり、
サウンドメイク的にも結構面白いことをいろいろやってます。
“異世界的な音”作りで安易にシンセを多用しないところにマルコさんのこだわりが感じられます。

サブテーマが増えると、映画を観ている間にモティーフとなる個々のメロディーを把握しにくくなるものですが、
『キング・オブ・エジプト』のメインテーマやサブテーマのメロディーはどれもかなり特徴的なので、
3回ぐらい聴けばどのメロディーが誰のテーマなのかすぐ分かるのではないかと思います。
トンデモ映画っぽい印象とは裏腹に、
音楽はかなり緻密に作り込んであるような印象を受けました。

ハンス・ジマーやブライアン・タイラーともひと味違う、
マルコ・ベルトラミ式の「ゴージャスな音楽」を是非本作で楽しんで頂きたいな、と思います。

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ちなみこの映画、海外版と日本版でポスタービジュアルが全然違うので、
『キング・オブ・エジプト』のサントラ盤だと分かりやすいように、
国内盤はキャラメル包装の上に日本版ポスタービジュアル準拠のシールが貼ってあります。
日本のサントラレーベルの良心・Rambling Recordsさんならではの細やかな気配りにグッとくる。

 

『キング・オブ・エジプト』オリジナル・サウンドトラック
音楽:マルコ・ベルトラミ
レーベル:Rambling Records
品番:RBCP-3151
発売日:2016/08/24
価格:2,400円(+税)

 

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