『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』のジョン・ウィリアムズは音楽で”夢”を描くの巻

BFG_JP

エイベックス&ウォルト・ディズニー・ジャパン様からのご依頼で、
『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』(16)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。

音楽はみんな大好き巨匠ジョン・ウィリアムズ。
ウィリアムズの健康上の理由もあり、
スピルバーグの前作『ブリッジ・オブ・スパイ』(15)の音楽はトーマス・ニューマンでしたが、
本作でスピルバーグ×ウィリアムズのコンビが復活しました。
御年84歳ともなると、いろいろ心配してしまいますからね。。
YouTubeで『BFG』のレコーディング風景を見ましたが、
ウィリアムズがお元気そうだったので安心しました。

 

さて巨匠の音楽を拙稿でどう紹介したものかとかなり悩みましたが、
まあ自分があれこれと推察したりするよりは、
ウィリアムズ本人やスピルバーグが音楽について語っているならば、
それをメインに紹介させて頂くのが一番いいのだろうと考えました。

幸いサントラ盤のブックレットにはスピルバーグが寄稿したコメントが載っていて、
ウィリアムズ本人が音楽について簡潔に語っている資料もいくつか見つかったので、
それらをきちんと翻訳して、
これらの資料を元に『BFG』の音楽を紹介させて頂きました。

彼らのコメントの全訳を載せるにあたって、
ワタクシの英語力では心許なかったので、
今回は念には念を入れてスピルバーグのコメント訳を学生時代の恩師にお願いして、
ウィリアムズのコメント訳も見てもらいました。
その後ディズニーとエイベックスさんの二重の原稿チェックも入ったので、
しっかりした翻訳になっているのではないかと思います。

確か原稿を書いている段階では、
「映画の劇場用パンフレットには音楽のコラムは載らない」という話だったので、
それなら日本版サントラのブックレットが情報を補完する形になるのでちょうどよかったかな、とも思います。
(今日パンフを買ってきて内容を確認してみたら、確かにプロダクション・ノートの項目に音楽関係のトピックはありませんでした…)

 

さてその『BFG』の音楽ですが、
ジョン・ウィリアムズの職人技が思う存分楽しめる普遍的なオーケストラ音楽になっています。
魅力的なメロディーと表情豊かなオーケストラの音の響き、
そしてウィリアムズの十八番、ライトモティーフ技法が随所でビシバシ効果を発揮する、
「ファンタジー映画の音楽かくあるべし」というファンタスティックでドリーミンな音楽です。

で、この「ドリーミン」という部分が『BFG』の音楽のポイント。
ジョン・ウィリアムズは音楽で「夢」を描いているのです。
「夢のような世界」とか「夢のような出来事」ではなく、
そのものズバリ「夢」。
「夢」というその抽象的な存在を音楽で表現しているわけです。

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これは映画本編を観て頂くとよく分かるのですが、
BFGのじいちゃんは「子供にいい夢を見せる」ことをライフワークとしておりまして、
そのために「夢の国」へ出掛けて、
蛍のように飛び回る「夢」を網でキャッチしたり、
「ドリーム・ツリー」なる木に咲いている「夢」を採ったりして、
集めた「夢」を自宅で調合して「いい夢」を作り出す過程が映画の中で描かれます。

その場面で流れるのが、創意工夫をこらしたウィリアムズの音楽なのです。

ピロロロロローーーと流麗な音色を響かせるフルート、
ポロンポロンと繊細な音を奏でるハープ、
キラキラキラーーーンときらめく音色を響かせるウィンドチャイムなどの楽器を使って、
色鮮やかに光り輝く「夢」が活き活きと動き回る様子を音楽で表現しているのです。
それがアルバム4曲目のDream Countryや、
8曲目のDream Jarsという曲なのですが、
曲だけ聴いても見えてこなかった部分が、
映画本編を観ると「なるほどこの曲の展開はそういうことだったのか!」と明確になる、
映像と一体化したスコアですね。

全体的に『BFG』の音楽はとても動きのある(躍動感のある)スコアになっています。
ウィリアムズ自身もそのあたりは意識して曲作りを行っていたようで、
彼の音楽を聴いたスピルバーグが「プロコフィエフの『ピーターと狼』のようだ」と感想を言っているインタビュー動画がありました。
つまり『BFG』のウィリアムズの音楽には、
バレエ音楽やミュージカル映画の要素があるというわけです。

 

そしてウィリアムズの音楽といえばライトモティーフの手法が欠かせないわけですが、
今回は登場人物もそう多くないし、
主人公のソフィーとBFG、あとは女王様のテーマか何かでモティーフは3つくらいかな?と予想していたものの、
実際にサントラを聴いてみたら違いました。
少なく見積もっても6つ、
短いフレーズも含めれば8つくらいのモティーフがあるのではないかと思います。

このあたりは実際にサントラ盤を聴いて頂いて、
宝探しのような感覚でスコアの中から主要なモティーフを見つけ出して頂きたいですねー。
『BFG』の音楽は聴く度に新たな発見があって面白いですよ。
ワタクシは仕事の関係で本作のサントラを80回くらい聴いたと思いますが、
その作業が全く苦痛にならなかったし、
原稿を入稿する頃には完全にウィリアムズの音楽の虜になっておりましたので。

…とまぁそんなわけで、
御年84歳の巨匠が手掛ける若々しくて躍動感溢れる音楽を多くの方に楽しんで頂きたいなーと思います。

『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ジョン・ウィリアムズ
品番:AVCW-63160
レーベル:Walt Disney Records/エイベックス・ミュージック・クリエイティヴ
定価:2,500円+税

 

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