不朽&不遇の名作『アイアン・ジャイアント』のサントラ盤を振り返ってみる。

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先日『世界一キライなあなたに』(16)のマスコミ試写に行った時、
ワーナー試写室の前に『アイアン・ジャイアント』(99)シグネチャー・エディションのチラシが置いてありました。

劇場公開、楽しみにしてたんですけどね…。
劇場公開、楽しみにしてたんですけどね…。

で、『セカキラ』本編が始まるまでチラシを読んでいたらのですが、
特別版Blu-rayの発売と一部劇場での10/29映画公開、
そして劇場限定のシグネチャー・エディション・スペシャルセット発売の告知が載っていて、
「おおお、劇場公開当時不遇だった『アイアン・ジャイアント』が再び劇場公開されるとは!世の中いいこともあるもんだなぁ」…と楽しみにしていたのですが…。

まさかの劇場公開中止のお知らせ…。

http://wwws.warnerbros.co.jp/iron-giant/

 

1999年当時も作品の評価は高かったのに本国で興行的に失敗して、
それゆえに日本でもマトモに宣伝されず不当な扱いを受けてきたのに、
劇場公開から16年を経て根強いファン人気に支えられてきたにもかかわらず、
またしても劇場公開中止という気の毒な扱いを受けることになるとは…。
(ワーナーのサイトには”一旦公開を中止”と書いてありますが)

まあBlu-ray自体は予定通りリリースされるようではありますが、
ワタクシは劇場の大画面で『アイアン・ジャイアント』を観たかったんですよね…。

 

ことほどさように不遇な『アイアン・ジャイアント』ではありますが、
そのコアな人気を証明するかのように、
当時VOLCANO RECORDSから発売になった国内版のスコア・アルバムはなかなか凝った作りでした。

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紙ジャケ仕様なのですが、
ケースの中にさらにCD収納用のケースが入っているという特殊紙ジャケパッケージ。
言葉で説明してもうまく伝わらないので、
詳しくは写真をご覧下さい。

あまりこういう構成の紙ジャケは最近見ないような。
あまりこういう構成の紙ジャケは最近見ないような。

作り手のサントラ愛、アイアン・ジャイアント愛が伝わってくる紙ジャケですよこれは…。

音楽は『ダイ・ハード』初期3作や『リーサル・ウェポン』シリーズのマイケル・ケイメン。
エリック・クラプトンやブライアン・アダムス、ピンク・フロイドなど、
ロックミュージシャンとの交流が多い「ロック大好き作曲家」のケイメンですが、
映画音楽では(一部の例外を除き)かなり本格的なクラシック音楽寄りのスコアを書いておりまして、
『アイアン・ジャイアント』でも渾身のフルオケ・スコアを聴かせてくれています。
物語の舞台が1950年代後半のアメリカなので、
普遍的なフルオケ・スコアが映像とマッチしております。
しかも演奏はチェコ・フィルハーモニック・オーケストラでドヴォルザーク・ホール録音
アニメだからといって、そして予算が潤沢ではないからといって音楽の手を抜いていないのが素晴らしい。

それゆえオーケストラの音の響きもクラシックのそれに近い質感になっているように思います。
印象的なメロディーはそれほどないのですが、
アクションシーンでのブラスの和音の聴かせ方などは『ダイ・ハード』などにも近いものがあり、
“ケイメンらしさ”は出ているかなと。
その一方で少年とアイアン・ジャイアントの”友情”を描いたシーンでは、
この時期に『ジャック』(96)や『陽のあたる教室』(95)を手掛けていた彼らしく、
温かみのある音楽で観客の涙を誘ってくれます。

確かケイメンは1997年頃に多発性硬化症を患って、
2003年に55歳の若さで亡くなったので、
『アイアン・ジャイアント』の時も闘病中だったのでしょうかね…。
(亡くなる直前まで病気は公表していなかった記憶がありますが)

『アイアン・ジャイアント』は映画本編の出来もさることながら、
マイケル・ケイメンの音楽もクオリティ高いので、
今回のシグネチャー・エディションをご覧になった後は、
是非スコア・アルバムも聴いて頂きたいなーと思います。
(ダウンロード版で聴けますので)

 

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