マシュー・マージソンとマイク・ハイアムによるティム・バートン映画の音楽はどんな感じ? 『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』

missperegrine

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、
『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。
ティム・バートン監督作だけど音楽はダニー・エルフマンではなく、
『スカイライン-征服-』や『キングスマン』のマシュー・マージソンと、
多くのバートン作品でミュージック・エディターを務めるマイク・ハイアムの二人です。

まずこの時点で「何で今回はエルフマンじゃないの?」となるわけですが、
まぁ今回は90年代のような仲違いとかではなくて、
単にスケジュールの都合ではないかと思います。

だってもし万が一仲違いしていたら、
去年「ティム&ダニー 映画音楽コンサート」なんてやってるわけないじゃあないですか。
(ついでに言えばワタクシがバックステージ見たダニーさんも終始ゴキゲンでしたし…)

ま、そのへんはバートン監督の次回作で答えが出るでしょう。

 

何しろダニー・エルフマンの作風がああいう感じなので、
彼の音楽に比べるとマージソンとハイアムの音楽は強烈な個性はないものの、
バートン映画にふさわしいフルオケのダークファンタジー音楽を聴かせてくれています。
そしてメインテーマやサブテーマ、
ライトモティーフに相当する特徴的な短いフレーズの積み重ねで、
非常に丁寧なスコアの組み立て方をしている印象です。

マージソンは『スカイライン-征服-』でもオーケストラ・スコアを書いていたし、
ハイアムのようなミュージック・エディター畑の作曲家は才人が多かったりするので、
(例えば『ゼロ・グラビティ』のスティーヴン・プライスもミュージック・エディター出身)
彼らもなかなか立派なオーケストラ・スコアを作ってます。
劇中「オーガスタ号」という巨大な沈没船が出てくるシーンがあるのですが、
その一連のシーンの音楽がドラマティックでなかなかいい感じ。
アルバムで言うと8曲目の”The Augusta”とか、
14曲目の”Raising The Augusta”の2曲ですね。

メインテーマも2、3度聴いたら覚えてしまうような耳馴染みのいいフレーズを聴かせてくれるし、
ここぞという場面で流れるサブテーマのメロディーもドラマティックでイイ。
(サントラ21曲目の”Go To Her”でそのメロディーがロングバージョンで聴けます)

 

エルフマンの音楽に比べると若干”遊び”の要素が少ないけれども、
非常に几帳面な音作りになっているのではないかと思います。

…と言いつつ実はちょっとばかり”遊び”の要素もありまして、
終盤の遊園地の場面では、
アゲアゲなクラブミュージックがガンガン流れる中、
「奇妙なこどもたち」と『アルゴ探検隊の大冒険』チックなガイコツ軍団がホローガストとバトルを繰り広げるという異色のアクションシーンがあります。
(しかもティム・バートン監督が一瞬だけカメオ出演するオマケつき)

その曲はサントラにも収録されておりまして、
トラック17の”Handy Candy”という曲なのですが、
恐らくこれは「スコア」というより「遊園地で流れている曲=ソース・ミュージック」という位置づけのものなのでしょう。
バートン映画でああいう曲が流れるのは珍しいので、
そういう意味でもなかなか面白い音楽演出でしたねー。

 

ブックレットにはバートン監督とマージソン&ハイアムのライナーノーツが載っていたので、
差し込み解説書に和訳を載せておきました。
(翻訳は大学時代の恩師にお願いしました)
拙稿でマージソン&ハイアムの略歴をご紹介して、
音楽の聴きどころをざざっと書かせて頂いたので、
それとバートン&作曲家のライナーノーツの対訳で、
まあ読み物として結構充実した内容になっているのではないかと。

マシュー・マージソンは『キングスマン』続編でもヘンリー・ジャックマンとタッグを組むだろうし、
担当作品次第でこれからグーンと伸びてくると思うので、
彼の才能を確認する意味でも、『ミス・ペレグリン』は要チェックのアルバムではないかなと思います。

『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』オリジナル・サウンドトラック
音楽:マイク・ハイアム&マシュー・マージェソン
レーベル:Rambling RECORDS
品番:RBCP-3173
発売日:2017/01/18
定価:2,400円+税

 

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