『スイス・アーミー・マン』の音楽を手掛けたアンディー・ハル&ロバート・マクダウェル(マンチェスター・オーケストラ)のアルバムを聴いてみよう。

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、
“最初のオナラで笑って最後のオナラで泣く”青春サバイバル映画
『スイス・アーミー・マン』(16)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。

以前のブログで映画のスコアについては大体ご紹介したので、
本日は音楽を手掛けたアンディー・ハルとロバート・マクダウェルについて…というか、
彼らのバンド「マンチェスター・オーケストラ」について書かせて頂こうと思います。

 

マンチェスター・オーケストラは2004年にアトランタで結成したインディー・ロックバンド。
“マンチェスター”だけどジョージア州アトランタ出身のバンドです。
たぶん、ハルやマクダウェルがマンチェスターのバンド(ザ・スミスとかニュー・オーダーとかストーン・ローゼズ)の音楽に影響を受けたのでしょう。
何度かのメンバーチェンジを経て、
現在のメンバーはサントラ盤のライナーノーツにも書かせて頂いたとおり、

アンディー・ハル(リードボーカル/リズムギター)
ロバート・マクダウェル(リードギター/ボーカル)
ティム・ベリー(ドラムス)
アンディ・プリンス(ベース)

…の4人。
バンドとしてのアルバムは、

I’m Like s Virgin Losing a Child (2006)
Mean Everything to Nothing (2009)
Simple Math (2011)
Cope (2014)
Hope (2014)
A Black Mile to the Surface (2017)

…の6枚がリリースされています(amazonの製品紹介ページにリンクを張ってあります)。ちなみに「Hope」は「Cope」のセルフ・アコースティック・カヴァーアルバムです。

 

『スイス・アーミー・マン』の監督コンビ・ダニエルズのダニエル・クワンは、
学生時代からマンチェスター・オーケストラのファンだったそうですが、
バンドと密接な繋がりを持つようになったのは、
“Simple Math”のミュージックビデオを撮った時からということになります。

このミュージックビデオの仕事で両者は意気投合したので、
ダニエルズが『スイス・アーミー・マン』を撮ることになった時も、
「音楽はマンチェスター・オーケストラのアンディーとロバートに!」ということになったらしい。

通常、ロックバンドが映画音楽を手掛けることになると、
普段バンドでやっている音楽のスタイルをスコアに反映させるものですが、
本作のハルとマクダウェルは、
(「楽器を使わず声だけで曲を作ってくれ」という監督のリクエストがあったとは言え)
バンドの時とは全く異なるアプローチで曲作りに挑んでいるのが面白いな、と思いました。
マンチェスター・オーケストラの時はギターサウンドを前面に出した音楽をやっているけど、
『スイス・アーミー・マン』の時はほぼ全編アカペラ・サウンドでしたからね~。

まあマンチェスター・オーケストラの曲をじっくり聴いてみると、
ボーカルのハーモニーとかコーラスの使い方がなかなか巧かったりして、
そういう部分は『スイス・アーミー・マン』の音楽にもしっかり活かされているのですが。
アンディー・ハルの声もニール・ヤング的な哀愁があってなかなか味わい深い。

 

で、マンチェスター・オーケストラは7/28にニューアルバム「A Black Mile to the Surface」をリリースしたわけですが、
その中のThe Sunshineという曲のMVをダニエルズが監督しています。

ダニエルズはThe Alienという曲でも”Creative Director”としてクレジットされている模様。
(このMVの監督は別な人)

もし『スイス・アーミー・マン』のサントラ盤を気に入って、
「それじゃあちょっとマンチェスター・オーケストラのアルバムも聴いてみようかな?」と思った場合、
果たしてどのアルバムを聴けばいいか。

ワタクシ的にはやはり現時点でのニューアルバム「A Black Mile to the Surface」をオススメしたいと思います。
『スイス・アーミー・マン』のスコアを作曲した後に製作したアルバムですから、
まあ多少なりともこの映画の曲作りをした時の経験が反映されているのではないかな、と。

あるいは映画のエンドクレジットで流れた”A Better Way”にグッと来た方は、
「Cope」の曲を全曲まるまるアコースティック・カヴァーした「Hope」なんかもいいかもしれないなーと思います(手に入りにくいかもしれませんが)。

アンディー・ハルが割ともっさりした風体なので、
初めはどんな音楽をやるのかイメージが湧かなかったのですが、
なかなか繊細かつ詩的な音楽世界を構築している印象を受けたので、
気になる方はマンチェスター・オーケストラのアルバムも是非。

 

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