『スリー・ビルボード』のカーター・バーウェルの音楽が最高傑作である3つの理由

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、
『スリー・ビルボード』(17)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。
オリジナル・スコアの作曲はカーター・バーウェル。

ワタクシは15年くらい映画音楽物書きの仕事をしてますが、
バーウェル作品のライナーノーツがなかなか回ってこなくて、
調べてみたら2004年の『アラモ』以来13年ぶり(去年頂いたお仕事なのでこの計算)のバーウェル作品のお仕事でした…。
バーウェルのサントラは『ファーゴ』(96)以来20年以上ずっと追いかけて聴いてきているので、
今回のお仕事のご依頼は嬉しかったですね~。

そんなカーター・バーウェル追っかけ歴21年の「バーウェリスト」「バーウェラー」のワタクシが声を大にしていわせて頂きたいのが、

『スリー・ビルボード』のカーター・バーウェルの音楽は現時点でのキャリア最高傑作だ!

…ということです(ごく私的な見解)。

 

自分で言っておいて何ですがものすごく主観が入りまくった意見ですし、
『キャロル』(15)こそ最高傑作という方もいれば、
『ファーゴ』派、『ミラーズ・クロッシング』派、『ブラッド・シンプル』派の方もいらっしゃるでしょう。
ではなぜワタクシが『スリー・ビルボード』の音楽こそ最高傑作と思ったのかと申しますと、それには下記の3つの理由があるのです。

■『スリー・ビルボード』の音楽が最高傑作である理由
その1:盟友監督との3度目のコラボレーション

カーター・バーウェルはコーエン兄弟との長きにわたるコラボレーションで知られていますが、
ビル・コンドンやトッド・ヘインズ、ジョン・リー・ハンコック、スパイク・ジョーンズ、
初期のジェームズ・フォーリーやマイケル・ケイトン・ジョーンズなど多くの個性派映像作家と複数回コラボしています。
本作のマーティン・マクドナー監督とも『ヒットマンズ・レクイエム』(08)、『セブン・サイコパス』(12)に続いて今回が3回目。
気心の知れた監督との仕事で良質な音楽が生まれないわけがない。

■『スリー・ビルボード』の音楽が最高傑作である理由
その2:バーウェルは”地域色”を漂わせた音楽が絶品という事実

バーウェルは『陰謀のセオリー』(97)や『ハムレット』(00)のような都会派(?)サウンドも得意ですが、
地方都市や田舎町、外国を舞台にした映画で数々の傑作スコアを残しています。
例えばスカンジナビア民謡の要素を取り入れた『ファーゴ』や、
ケルト/アイリッシュ音楽に接近した『ロブ・ロイ/ロマンに生きた男』(95)、
カントリー音楽とヨーデルを取り入れた『赤ちゃん泥棒』(84)、
アメリカーナの要素を取り入れた『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』(16)などがその代表でしょう。

今回もミズーリ州の架空の田舎町エビングが舞台ということで、
バーウェルお得意の田舎町系サウンドが全編で味わい深く響き渡るわけですよ。
ギターとマンドリンを使った枯れた味わいの音楽は、
ちょっと西部劇の荒野を感じさせるサウンドに聞こえますが、
バーウェル自身はインタビューなどで「ミズーリ州の風土をイメージしたアメリカーナ(調のスコア)」と語っている模様。

 

■『スリー・ビルボード』の音楽が最高傑作である理由
その3:哀愁のメロディーの中に宿る力強さ

コーエン兄弟の映画を何本か観たことのある方なら、
「カーター・バーウェルって何か物悲しいメロディーを書く人だよね」と思うはず。
『ファーゴ』などはその代表みたいな作品ですが、
『バーン・アフター・リーディング』(08)みたいなマヌケな内容の映画でも音楽は妙にシリアスだったし、
前半は割と軽快なサウンドだったのに、後半から音楽が重くなっていった『シモーヌ』(02)も忘れがたい。

マクドナー監督の『ヒットマンズ・レクイエム』と『セブン・サイコパス』も全編哀愁漂うスコアで統一されていたので、
あの独特なユーモアセンスも相まって、笑っていいのか、恐ろしいのか、悲しいのかよく分からない独特な世界観を構築していたように思います。

で、今回の『スリー・ビルボード』も「話がどっちに転がっていくか分からない」ストーリーで、
話としてはとても悲しい題材を扱っているのに、
エキセントリックな登場人物が突然過激な行動に走ったり、
とんでもないことを口走ったりするので、
悲しいのに、そして恐ろしいことが起こっているのに、
その状況が端で見ていると妙に可笑しかったりする独特なノリで物語が進行していきます。
そこにバーウェルの哀愁のメロディーが流れ出すと、
あのコーエン兄弟作品の世界観に近い「人生は悲しくて可笑しい」という一種のトラジコメディ感が加わって、
ドラマに深みが増していくわけです。これがいい。これが実に味わい深い。

『スリー・ビルボード』の場合、
「バーウェル節」とも呼びたくなるような哀愁のメロディーに”力強さ”を感じさせる曲があるのがポイント。
それがアルバム1曲目の”Mildred Goes to War”という曲なのですが、
これは「地元警察にケンカを売る女」ミルドレッドの”戦いのテーマ”でして、
結果として本作の音楽はバーウェルのキャリア史上屈指の「勇ましいメインテーマ曲」が聞ける作品となったのでした。
(ほかにもテーマ曲が2つほどあります)

「ハンス・ジマーの音楽が好き!」とか、
「ダニー・エルフマンの音楽最高!」という意見はよく見かけるけれども、
「カーター・バーウェルの音楽はイイね!」という書き込みはあまり見かけない(気がする)。
まだまだバーウェルの音楽は玄人受けするタイプというか、
サントラマニア向けなのかもしれませんが、
『スリー・ビルボード』の話題性に乗って是非カーター・バーウェルの音楽にも注目が集まってもらいたいなと思います。

 

長々と書きすぎて劇中の歌モノについて紹介し忘れたので、
それについては次回改めてということで。

『スリー・ビルボード』オリジナル・サウンドトラック
音楽:カーター・バーウェル
レーベル:Rambling RECORDS
品番:RBCP-3238
発売日:2018/01/24
定価:2,400円+税

 

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