スリルと興奮が加速する! 『トレイン・ミッション』の音楽は反復サウンドで攻めまくるというお話。

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、
『トレイン・ミッション』(18)サントラ盤のライナーノーツを書かせて頂きました。

ワタクシ以前『アンノウン』(11)『フライト・ゲーム』(14)のライナーノーツも書かせて頂いたので、
またジャウマ・コレット=セラ×リーアム・ニーソンのタッグ作品のサントラの仕事が出来て嬉しかったです。
しかも音楽担当が『オールド・ボーイ』(13)のロケ・バニョスということで、
これまた以前ライナーノーツを書かせて頂いた作曲家で嬉しさ倍増でございました。

ところで「『アンノウン』も『フライト・ゲーム』もジョン・オットマンだったのに、何で今回はロケ・バニョスなの?」…と思われる方も多いのではないでしょうか。
その理由は二つほどありまして、
まず今回はプロデュースがジョエル・シルバーではないから。
(オットマンは『ゴシカ』(03)や『キスキス,バンバン』(05)、『インベージョン』(07)などシルバープロデュース作品の常連作曲家でもあります)
そして『トレイン・ミッション』は英国で撮影しているので、
ヨーロッパを拠点に活動している作曲家の方が、
製作にあたって何かと都合がいいという事情もあったのだと思います。
(バニョスはコレット=セラと同じスペイン系)

 

さてバニョスは今回どのような音楽を作曲したのかと申しますと、
同一音型の反復を多用した広義でのミニマル・スコアだったのでした。

“ミニマル”と聞くとフラットな音楽を連想してしまいがちですが、
『トレイン・ミッション』の場合は「アガるミニマル」とでも申しましょうか、
同一音型の反復と打ち込みのリズムがスリルとサスペンス、そしてアクションの興奮を加速させる、「予想以上に燃えるフルオケ・スコア」に仕上がっているのです。

「通勤電車が舞台のスリラーでなぜミニマル?」ということになるわけですが、
ワタクシ「電車」と「ミニマルミュージック」というのは親和性が高いと思うのですね。
というのも電車は「レールの上」という同じルートを走って、同じ駅で停車して、お客さんが乗り降りして、終点まで行ったらまた戻る…というように”同じ作業の繰り返し”という要素が強いため、反復サウンドと極めて相性がいいわけです。
(ほかにも本作の音楽がミニマルな理由はあるのですが、詳しくはサントラ盤のライナーノーツをご覧頂ければと思います)

 

バニョスも「通勤電車」という本作の舞台設定を意識しているのか、
ところどころに電車の効果音を連想させる”音”を挿入してきておりまして、
「プァァァーーーーン」というドップラー効果がかかった警笛系の音や、
「キィィーーーーン」というブレーキ風の音がスコアの中で時折聞こえてきます。
ブレーキ風の音は劇中で観客に注意を促すような重要な場面で鳴ったりして、これがなかなか面白い。凝ってます。

そしてこの映画の主人公マイケルは、
「電車が終点に着くまでに乗客の中から”プリン”なる人物を捜し出せ」と脅迫されているわけですが、
タイムリミットを課せられて焦燥に駆られる主人公の心理状態と反復サウンドが絶妙にリンクしているのです。
マイケルが焦れば焦るほど、
電車が加速していくかのように反復サウンドのテンポが速くなる。
で、破壊力抜群のリーアム拳が炸裂するアクションシーンになると、バニョスの音楽も「燃えるフルオケ・ミニマルスコア」に変化していくと。
アルバム8曲目の”A Beautiful Family”とか13曲目の”The Train Wreck”はなかなかの「燃えスコア」になってますよ。
こういう安直な表現はどうかとも思うのですが、この2曲はちょっとハンス・ジマー軍団っぽいサウンドに仕上がってます。

 

ちなみにワタクシのお気に入りは1曲目の”A Commuter’s Trip”。
ミニマルなピアノのフレーズの繰り返しの曲なのですが、
これがメロディアスかつ情緒を刺激する音楽に仕上がっていて素晴らしい。
曲単体で聴いてもいい音楽だなーと思いましたが、
試写で映画本編を観たら、
音と映像が完璧にシンクロしていて、
「これはよく出来てるなぁ」と感銘を受けた次第です。
オープニングのシークエンスを見たら、この映画の音楽が反復サウンドである理由が瞬時に理解できました。

アルバムは全16曲で収録時間72分くらい。
なかなかのボリュームです。
バニョスは個人的に『オールド・ボーイ』の音楽がすごく良かったと思っているので、
今回の『トレイン・ミッション』のサントラもかなり”推しの一枚”になっております。
ワタクシはランブリングさんに音源を頂いてから、
1日に5,6回の頻度で締切前日までサントラを聴きまくったので、
80回前後バニョスのスコアを聴いた計算になりますが、
全く飽きないどころか聴けば聴くほど味わいが増してきて、バニョスの反復サウンドが病みつきになりました。

ロケ・バニョスの”熱い”ミニマル・スコアを是非ご堪能下さい。

『トレイン・ミッション』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ロケ・バニョス
レーベル:Rambling RECORDS
品番:RBCP-3271
発売日:2018/03/14
定価:2,400円+税

 

 

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