アクション映画の音楽に新風を吹き込む、クリフ・マルティネスによる『ザ・アウトロー』のアンビエント・スコア

先日まる一日お休みを頂きまして、
109シネマズ富谷まで『ザ・アウトロー』(18)を観に行って参りました。

富谷は車で片道40分くらい、
公共交通機関利用だと、
地下鉄で泉中央まで10分、
そこから宮城交通のバスで30分くらいで、
まあ結構遠いわけです。
しかもこの映画は140分と聞いていたので、
どうしようかなぁ、
DVDリリースまで待とうかなぁ、とも思ったのですが、
「いや、これは是非映画館の大画面・大音響で楽しみたい!」と思った要素があったのでした。それは何かと尋ねたら~

音楽が『ドライヴ』(11)のクリフ・マルティネス。

もうこれに尽きるなと。ワタクシ的には。

 

マイケル・マン監督の『ヒート』(95)が映画界にセンセーションを巻き起こしてから、
雨後のタケノコのように量産されてきた「『ヒート』インスパイア系」のアクション映画ですが、凡庸な作品か、キラリと光る傑作かを分けたのは、

「細部までどれだけ緻密に作り込んだか」
「作り手がどれだけ自分の”『ヒート』愛”を作品に注ぎ込んだか」
「音楽にもきちんとこだわりを見せたか」

…という3つの要素によるところが大きいのではないかとワタクシ思っておりまして。

この映画の場合、監督のクリスチャン・グーデガストが脚本と製作総指揮も兼任しているから、
完全に映画を自分の作品としてコントロールできているわけです。
「渋滞した道路でリアルな銃撃戦を見せてやるぜ!」という監督の意気込みはバッチリ伝わってきたし、
やけに凝った現金強奪計画の見せ方にもこだわりを感じたし、
「犯罪集団は冷静沈着」「警察はイカれた荒くれ者」という『ヒート』のキャラ設定もきちんと踏襲。

そして音楽はというと、ここが(個人的には)最大のポイントでした。

 

こういうクライマックスに派手な銃撃戦が待っているタイプのアクション映画だと、
「オケ+シンセ」の音楽でエレキギターや打ち込みのリズム、弦のオスティナートを多用して盛り上げていこうとする傾向がありますが、
『ザ・アウトロー』はまさかのアンビエント・スコアの第一人者、クリフ・マルティネスが音楽を担当。

やさぐれ保安官ビッグ・ニック(ジェラルド・バトラー)の家庭崩壊劇を、
メリーメン(パブロ・シュレイバー)一行のプロフェッショナルな”仕事”のプロセスを、
LASD対メリーメン軍団の一触即発の危険な状況を、
あの『ドライヴ』の時のようなチルアウト系シンセ・スコアで彩っているわけですが、これがやたらめったらカッコイイ。
グーデガスト監督、『ヒート』だけじゃなくて『ドライヴ』も絶対好きでしょ!と思いました。

 

渋滞道路での銃撃戦のシーンで音楽が一切鳴らないあたりも、「よく分かってらっしゃるな」という感じ。
(『ヒート』の銃撃戦も音楽が鳴ってなかったし)
もし本作が「オケ+シンセ」の典型的なアクション・スコアだったら、
「『ヒート』の二番煎じのB級アクション映画」という印象だったかもしれません。
しかしマルティネスのひんやりとした質感のアンビエント・スコアが全編で流れることによって、
「この映画、何か違うぞ」という意外性や、ある意味では格調の高さすら作品にもたらしているのではないかと。

そういう意味では、アクション映画/ケイパー・ムービーにネオン・ノワールのエッセンスをプラスした『ザ・アウトロー』のクリフ・マルティネスの音楽は、
アクション映画の音楽に新風を吹き込む革新的なスコアではないかと思います。
メジャースタジオ製作のアクション大作でもこういう音楽が使われるようになったら面白いなぁ、と。

クリフ・マルティネスといえばスティーブン・ソダーバーグやニコラス・ウィンディング・レフンの諸作品や、
『リンカーン弁護士』(11)『ランナウェイ 逃亡者』(13)など、
心理ドラマやサスペンスのジャンルが多い作曲家というイメージでしたが、
ここ数年はジャッキー・チェンの『The Foreigner』(17)やジョディ・フォスターの『Hotel Artemis』(18)など、
ちょっと個性的なアクション映画への登板が続いているんですよね。
ただこれらの作品は面白そうなのにまだ日本公開が決まってなくて、
『ザ・アウトロー』がいち早く日本で劇場公開されたと。
残りの2つも早く日本公開が決まってほしいですねー。

ちなみに『ザ・アウトロー』のサントラはデジタル・ダウンロード形式でリリースされています。
マルティネスの諸作品やブライアン・イーノの音楽が好きな方なら満足できる内容かと思いますので、気になる方は是非。

 

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