感動作?いやいや『キャプテン・フィリップス』は限定空間型サスペンスとしても優れた映画です

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『キャプテン・フィリップス』(13)の内覧試写を見たのは9月の最終週。
その後アメリカで劇場公開され絶賛の嵐、
そして東京国際映画祭のオープニング上映があり、
一般試写があり、今月29日からいよいよ全国ロードショー。
そろそろ何か書いた方がいいんじゃないかと思ったので、書きます。

この映画は2009年にソマリア海域で起きた、
海賊によるアメリカ貨物船襲撃及び船長の人質事件を描いた作品なのですが、
実話を元にした物語でサスペンスを作るとなると、これがなかなか難しい。

なぜなら、結末が既に分かっているから。

この映画も、トム・ハンクス演じるリチャード・フィリップス船長が、
「乗組員の代わりに自分が人質になって、奇跡の生還を果たした」
…という”事実”が既にあるわけで、
劇中でフィリップス船長が絶体絶命の危機に陥っても、
本来ならば安心して観ていられるはずなのです。

が、しかし。

この映画、結末が分かっているはずなのに、ものすごくスリリングです。
観ている最中、手のひらに嫌な汗が浮かぶぐらいの緊張感を強いられます。
海賊の船内捜索のシーンなんて、観ていて息苦しくなるほど。

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『エリジウム』で熱演を見せている俳優たちを総チェック!

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9/20公開のSFアクション映画『エリジウム』(13)。
映画を観る前に、あるいは映画を観終わった後、
忘れがたい演技を見せてくれた俳優たちをチェックして頂きたいと思い、
主要なキャスト/キャラクターをまとめてみました。

まず主人公のマックスを演じるのはマット・デイモン。
「昔不良少年、今は真面目な工場労働者」というブルーワーカーを熱演。
キレのある殺陣は『ジェイソン・ボーン』シリーズで披露済みですが、
今回はあれとは違った「生々しくて痛々しい格闘戦」がなかなか新鮮です。
似合っているのか似合っていないのかよく分からないスキンヘッドも迫力満点。

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私立女子校の校長先生っぽいエリジウム防衛省長官デラコート役はジョディ・フォスター。
鼻持ちならない政府官僚のトップを演じております。
キャラ的には『インサイド・マン』(05)の辣腕弁護士役の系統かな。
もともとの脚本ではデラコートは男の設定だったそうですが、
まぁそういう意味(どういう意味?)でもフォスターは適役ではないかと。
ちなみに常時着ているスーツはジョルジオ・アルマーニがデザインした特注品。

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要注目! 新進気鋭の作曲家ライアン・アモンによる『エリジウム』の音楽

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前回のつづき。
何で自分が『エリジウム』(13)の日本最速試写を観られたかというと、
この映画のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂く事になったからです。
仕事のお声がけを頂くまでは、
「『エリジウム』の音楽は『第9地区』(09)のクリントン・ショーターじゃないんだぁ」
「ライアン・アモンってどういう人なのかなー」などと呑気にしていたのですが、
嬉しい事に自分がライナーを書くという事態になり、
慌てて資料をかき集める事になった次第です。

何しろ今回が映画音楽初挑戦のコンポーザーなので、資料が少ない。
試写も日本最速試写だったのでまだプレス資料が出来上がってなかったし。
キリアン・マーフィーの『Watching the Detectives』(07)という日本未公開映画の追加音楽を担当したらしいのですが、
マネージメント事務所の公式資料にはその事が掲載されていなかったりして、
情報の扱いがいろいろ難しい。
ハッキリ分かっているのは、City of the Fallen名義で映画の予告編音楽を作曲しているという事。
基本的にユニット名だと思うのですが、一応社名として登録されているらしいです。
最近は予告編音楽がアツいですね。Two Steps From Hellとか。

 

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クソ上司とエリート防衛長官に倍返し!! 下克上SFアクション『エリジウム』

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『第9地区』(09)のニール・ブロムカンプ監督最新作『エリジウム』(13)。
僕がこの試写を観たのは7月下旬。
たぶん日本最速の試写だったと思います。
しかも『ホワイトハウス・ダウン』(13)と二本立ての試写だったものですから、
まぁー映画を観終わった後の充実感・満足感・高揚感がハンパなかった。
『ホワイトハウス・ダウン』もよく出来た映画だったし、
『エリジウム』も作り手の気迫が伝わってくる強烈なSFアクション映画だったのでもう最高。
大変充実した内覧試写デーとなりました。

現代の地球(南アフリカ)が舞台の『第9地区』と違って、
今回の『エリジウム』の舞台は2154年のやや遠い未来。
富裕層は荒廃した地球を捨てて小綺麗なスペースコロニー(トーラス型)に移住していて、
貧困層は地球で役人ロボット(ドロイド)に管理されながら生活しているという設定。
ガンオタ的には
「地球に住むのはエリート層、その他の人間は宇宙棄民政策でコロニー行き」
…という世界観が頭に染みついているので、
『エリジウム』がその真逆の設定になっているのが大変興味深いものに感じました。

 

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『スマーフ2』のスコア盤でヘイター・ペレイラの職人技を楽しむ

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本日は前回のつづき。
『スマーフ2 アイドル救出大作戦!』(13)の音楽について。
作曲は前作に引き続きヘイター・ペレイラの担当。
この方、シンプリー・レッドの元ギタリストでもあります。
1988年から1996年までバンドメンバーでした。

ペレイラの名前はハンス・ジマーの音楽が好きな人なら既にご存じでしょう。
ジマーの『グラディエーター』(00)とか『M:I-2』(00)、
ハリー・グレッグソン=ウィリアムズの『アンストッパブル』(10)とか、
『サブウェイ123 激突』(09)、『ドミノ』(05)などのスコアでもギターを弾いてます。

 

ギタリストとしてはアクションからシリアスドラマ、ロマコメまで、
幅広いジャンルに起用されているのですが、
「映画音楽家」としては圧倒的にロマコメとアニメ映画が多いのがこの人の特徴です。
『怪盗グルーの月泥棒』(10)とその続編、
『ビバリー・ヒルズ・チワワ』(08)に『おさるのジョージ』(06)、
バンドメンバー役でカメオ出演もしている『恋するベーカリー』(09:ジマーと共作)、
そして『スマーフ』シリーズというラインナップをモノにしています。
シリアスドラマは『ヘイヴン 墜ちた楽園』(04)と、
『Ask The Dust』(06:ラミン・ジャワディと共作)くらいではないかと。

で、今回サントラ盤のライナーノーツを書かせて頂く事になったわけですが、
共通の知人がいたのでペレイラさんにインタビューさせて貰う事が出来ました。
先に結論から申し上げますと、すごくいい人でした。

リモート・コントロール所属アーティストから引っ張りだこの多忙な人なので、
当初の予定より質問の回答が遅れたのですが、
後になって「この前は返事遅れてゴメンな。〆切りには間に合ったかい?」
なーんてわざわざペレイラさんの方から連絡を寄越してくれたりして、
それが嬉しかった…というか、誇張でも何でもなくちょっと感動しました。
『ホワイトハウス・ダウン』(13)のトーマス・ヴァンカーさんもいい人だったけど。

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