『アルゴ』のサウンドトラックを補完してみる

Argo

仕事場から遠くてちょっと不便なMOVIX利府まで出掛けて、
ベン・アフレック監督・主演作『アルゴ』(12)を観てきました。

結論から申しますと、実に見応えのある映画でした。
利府まで遠出して観に行った甲斐があったというものです。

「架空のSF映画『アルゴ』をデッチ上げて、イランの過激派に命を狙われているアメリカ大使館員6人を『アルゴ』の撮影クルーに偽装させて出国させた実在のCIAエージェントの物語」という、ある意味「既に結末が分かっている」ストーリーなわけですが、それをここまでスリリングかつ面白く作れるというのは大したもんです。
終盤のバザールや空港のシークエンスなどは観ていてハラハラさせられるし、それ以外にも結末に至るまでの”過程”を緻密かつ丁寧に描いていて、最後まで観客の興味を引きつけるストーリーテリングがなされています。

たぶんアフレック的には政治的メッセージとか愛国主義的な思想はそれほど重要じゃなくて、「ニセのB級SF映画作り」と「70年代の空気感の完全再現」という部分に本人のシネフィル魂が刺激されたんだろうなーと思います。良くも悪くもいい加減な感じのハリウッド業界を楽しそうに描いているのも好印象。ジョン・グッドマンとアラン・アーキンの貫禄たっぷりな演技がまたいいんだな。合言葉のように「アルゴ、クソ食らえ!」とお互い言い合うところなんか最高ですね。

映画本編については、既にいろんな人がブログとかでレビューを書いていると思うので、ここでは音楽について少々。というか、サントラ補完企画的なコーナーで扱う事にしたいと思います。

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聞き応えアリ。アレクサンドル・デスプラによる『ゴーストライター』の音楽

全国順次公開になっていたロマン・ポランスキー監督作『ゴーストライター』(10)。
先週やっと見て来られました。

前評判に違わぬ見応えのある映画でした。
「英国首相の秘密を知ってしまったゴーストライターの身に危険が迫る」というプロットもよくある話だし、
奇をてらった演出もしていないのだけれど、
最後までスリルと面白さが持続する見事な語り口に感服致しました。

緊迫した状況でもウィットに富んだセリフを交わす粋なキャラクターと脚本。
終始落ち着いた動きで見せるカメラワーク。
曇天が印象的な不吉で寒々とした映像。
小道具の使い方の巧さ(特にカーナビ)。
情報を小出しにしつつ、終盤で一気に真相を解き明かす”焦らし”のテクニック。

もう、全てが職人技。
今どきのサスペンス映画から失われつつある、
「基本に忠実な面白さ」が凝縮された作品と言えるでしょう。

こういう映画は予備知識ゼロで見に行った方が面白いと思うので、
本編については割愛。
ここからは音楽について書かせて頂きます。

 

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第68回ゴールデングローブ賞の作曲賞候補作品について

仕事が忙しかったり風邪引いたりしてすっかり忘れてましたが、ゴールデングローブ賞の授賞式は今月16日だった。

賞の部門はいろいろありますが、やっぱり仕事柄いちばん気になるのは作曲賞なわけで。

今年のノミネート作品は以下の通り。

・アレクサンドル・デプラ/『英国王のスピーチ』
・ダニー・エルフマン/『アリス・イン・ワンダーランド』
・A・R・ラフマーン/『127 HOURS』
・トレント・レズナー & アッティカス・ロス/『ソーシャル・ネットワーク』
・ハンス・ジマー/『インセプション』

アカデミー賞の作曲賞候補もほぼ同じ顔ぶれになるのかなー。

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第82回アカデミー賞 最優秀作曲賞ノミネート作品

第82回アカデミー賞ノミネート作品が発表になりました。まぁ今年は『アバター』(09)が
ほとんどの賞を獲ってしまうと思うので、イベントとしては面白味に欠けるような気もします。
が、しかし。仕事柄作曲賞の行方には興味があったりして。ノミネート作品は以下の通り。

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