今となってはレア盤の『スリー・キングス』オリジナル・サウンドトラック

three kings

ここしばらく新作映画のブログネタが滞り気味ですが、
それには理由がございます。

理由1:花粉症が酷くて2時間以上スクリーンを観ているのがキビしい。
理由2:観たい映画に限って郊外のシネコンでしか上映していない。
理由3:観たい映画に限って仙台で上映してくれない。

観たい映画はたくさんあるのに(あったのに)、
結局理由2と3のせいで『PARKER/パーカー』(13)や、
『ジャンゴ/繋がれざる者』(12)、『野蛮なやつら/SAVEGES』(12)も観られませんでした。
理由2と3は地方都市の映画事情において永遠の課題ですね…。

そんなわけで今回もちょっと前の映画のネタです。
かつてはキレやすい問題児、今やアカデミー賞ノミネート監督に成長(?)した、
デヴィッド・O・ラッセル監督作『スリー・キングス』(99)のサントラのお話。
映画の内容より、ジョージ・クルーニーがラッセル監督と殴り合いの大ゲンカをした事で有名になってしまった作品ですね。

この作品、劇場公開時にちゃんとサントラ盤が発売されました。
しかし一般のレーベルからは発売されておらず、
「CDNOWのプレス盤とiTunesの配信版のみのリリース」
という特殊な流通形式での発売でした。

続きを読む

人付き合いが苦手なら、急がずゆっくり向き合っていけばいいじゃない、という話。『ラースと、その彼女』

本日はシュールでハートウォーミングな映画『ラースと、その彼女』(07)について。

ビクターのTさんから
「(この映画の)ライナーノーツを書いてみませんか?」というお話を頂いた時、
『ラース』についてあった知識といえば、
「極度にシャイな青年がリアルドール(いわゆるダッ○ワイフ)にフォーリンラブする話」で、
「第80回アカデミー賞の脚本賞にノミネートされた」という事くらいでした。

「リアルドールに云々」という所で、
ジョン・ウォーターズとかトッド・ソロンズ監督の映画のようなノリだったらちょっとなぁ、と構えていたのですが意外や意外。
この映画はマジメなテーマに取り組んだ心温まる作品だったのでした。
アカデミー賞ノミネートはダテじゃありません。

映画の中身は先に述べた通りです。
極端にシャイだが心優しい青年ラース(ライアン・ゴズリング)が、
リアルドールの”ビアンカ”を「僕のガールフレンドなんだ」と真顔で兄夫婦(ポール・シュナイダーとエミリー・モーティマー)に紹介した事から始まる、
田舎町のシュールでほんわかした日常を描いているのですが、
この何気ない描写がいいのです。

一般的にこういう奇妙な行動を起こす主人公が出てくると、
「彼の過去に何があったのか?」みたいな話になるわけですが、
この映画はそういう展開にはならない。
(”幼少期のトラウマが原因”という説明が多少ある程度)
セラピー大国のアメリカにしては珍しい展開といえるでしょう。
愛とか優しさの定義はいろいろありますが、
この映画で言わんとしているのは、
「相手を理解し、全てを受け入れる事が真の愛情であり優しさなのではないか」
という事なのではないでしょうかねぇ。
人付き合いが何かと苦痛になりがちな今の世の中、
早急に結果を求めるのではなくて、
波長の合いそうな人をゆっくりまったり見つけていけばいいじゃない。
そして相手の求めているものに気づいてあげればいいじゃない。
そんな映画です。

さてその奇妙な主人公をもっさり演じるライアン・ゴズリングも、
ビミョーに気持ち悪くて絶妙に愛らしい主人公を好演。
『完全犯罪クラブ』(02)の頃は何だかあまりパッとしない印象でしたが、
『ステイ』(05)のあたりから、
「口数が少なくて何を考えているか分からない男」という、
独自のキャラを確立した感じです。

あまり中身について語ってしまうと映画を観た時の感動が薄れてしまうので、
感想はこのへんで。詳しくは本編をご覧頂ければと思います。

本作の音楽を手掛けたのは、
プロデューサー/ギタリスト/テクスチャリストなど様々な肩書きを持つデヴィッド・トーン。
デヴィッド・シルヴィアンやミック・カーン、
デヴィッド・ボウイらのアルバムにギタリストとして参加しているので、
洋楽ファンにもおなじみかと。

今回のサントラでは、アコースティック・ギターを中心に、
ストリングス、ピアノ、クラリネットなどを重ね合わせた、
オーガニックな癒し系アンビエント・スコアを聴かせてくれています。
ノリ的にはジョン・ブライオンの『パンチドランク・ラブ』(02)とか、
『エターナル・サンシャイン』(04)の音楽に近い感じでしょうか。

映画本編同様、「つつましい優しさ」に満ちたサウンドが実に心地よいです。
就寝前に聴きたい一枚に(勝手に)認定。

国内盤はビクターエンタテインメントより発売中。
ジャケットデザインが輸入盤よりオシャレな感じになっておりますので、
個人的にオススメです。

『ラースと、その彼女』オリジナル・サウンドトラック
音楽:デヴィッド・トーン
品番:VICP-64640
定価:2,520円