ベスト・サウンドトラック・30トラックス

ワタクシは「情緒」にこだわるタイプなので、音楽アルバムというものは音楽とジャケット、
歌詞カード(もしくはライナーノーツ)、ケースなどをひっくるめた「パッケージ」になって
初めてひとつの作品になるものと考えていたりするわけです。

なので、アーティストの作品をCDとして手元に置いておきたい(インテリアとして部屋に
飾ったりするので)ワタクシとしては、「曲をダウンロードして買う」という習慣がどうにも
馴染めなかったりするのですが、最近になって「ま、ベスト盤とかリミックス盤くらいは
配信でもいいかな」と思うようになりました。

やっぱりコンセプトとかアーティストの世界観/メッセージが確立されたオリジナル・
アルバムは真剣に聴きたいけれども、リミックス盤とか新規リスナー向けのベスト盤
なんかはもっと気楽に聴いてもよいのではないかと。

…などという事を考えていたら、いつもお世話になっているランブリング・レコーズさんから
『ベスト・サウンドトラック・30トラックス』なるiTunes限定のコンピ盤の情報を頂きました。

コチラのアルバム、いわゆる新旧有名映画のサントラ・ベスト的な内容なのですが、
既存の音源をコンパイルしたものではなく、プラハ交響楽団が新たにカヴァー演奏した
内容になってます。

主な収録作品は『スター・ウォーズ』、『ゴッドファーザー』、『ロッキー』といったクラシックの
定番作品から『ターミネーター』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、『ブレードランナー』などの
80年代作品、『ハリポタ』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』といった近作まで有名どころを網羅
している感じ。基本的にそれぞれの作品のテーマ曲やスコアの組曲が収録されてます。

プラハ・フィルは映画音楽のカヴァー録音にあたって、実際にその映画のレコーディングで
使われたオリジナルの譜面か、サントラと同じオーケストレーションの譜面を使って演奏
するので、カヴァー集でも「原曲と雰囲気が違ったらイヤだなー」という心配もほとんど
ありません。なかなかいい塩梅です。

で、アルバムのお値段なんですが、30曲・約2時間収録で1,200円。こういったベストをCDで
出すと大体2枚組で3,000円前後ですかね。それを考えるとヒジョーにお得です。

「とりあえず有名映画のテーマ曲だけざざーっと聴きたいんだけどな・・・」とお考えの方には、
お値段は安いわ置き場所はとらないわで、なかなか便利なアイテムではないかと思います。

今からこのテのベスト盤を買うなら、コレを押さえておけば不自由しないでしょう。
iTunesをご利用の方は、コチラから製品サイトに行けますぞ。

ま、パッケージ主義のワタクシではございますが、「ベスト盤はお安く配信で、オリジナル・
アルバムはパッケージで」というふうに買って頂くと、消費者のおサイフにも優しい上に、
音楽市場にも優しいのではないかと思った次第です。

・・・というわけで、3月4日にランブリングさんからリリースになる『パッセンジャーズ』の
サントラ盤は、ぜひぜひCDでお買い求め下さい。

ワタクシも一生懸命ライナーノーツを書きましたので、よろしくお願い致します。
(その話についてはまた今度)

   

アカデミー作曲賞を振り返ってみる

そうかー、作曲賞も歌曲賞も『スラムドッグ$ミリオネア』(08)の一人勝ちかぁ。

ワタクシが以前のブログで書いた予想は

本命:アレクサンドル・デプラ
対抗:A.R. ラフマーン
大穴:ダニー・エルフマン

だったわけですが、デプラさんは受賞しなかったか・・・。期待してたんだけどな。
いや、A.R.ラフマーンの音楽も面白いし、決して悪くはないんですけど。
これまでデプラさんのCDのライナーノーツを4回担当した事もあって、個人的に
思い入れがあったんですよね。

それに、何かこう・・・ひとつの映画が賞を独占したりすると興ざめしません?

さて以前のブログで「アカデミー賞は非西洋圏の音楽を高く評価する傾向がある」という事を
書かせて頂きましたが、この法則は今回の受賞結果にも当てはまったようです。

しかしアカデミー賞はハリウッド在住の(or アメリカ人の)作曲家に冷たいなぁと思いました。
ここ数年を振り返ると、ダリオ・マリアネッリはイタリア系、グスターボ・サンタオラヤはアルゼンチン、
ヤン・A・P・カチュマレクはポーランドですからねぇ。

アカデミー賞は(作曲賞に関して言えば)音楽が良くて受賞者を選んでいるというより、「映画が
よかったから、ついでに作曲賞もあげましょう」みたいな選び方をしているような気がしました。

・・・という事は、来年の作曲賞は「映画自体が高く評価されている作品」か「エスニックな音楽の
作品」か「非アメリカ人の作曲家の作品」を選べばいいわけか。

そんな予想の仕方はイヤだなぁ・・・。

  

ホルテンさんとKaadaさん

…というわけで、本日は前回の『ホルテンさんのはじめての冒険』の話の続き。
Kaadaさんの音楽についてもうちょっと詳しく書く、という事でございました。

ビクターのTさんからお仕事の依頼を頂いてから、Kaadaさんについていろいろ調べてみたわけですが、母国ノルウェーでCloroformという3人組のオルタナ系ガレージ・ロック・バンドを結成していたり、Faith No Moreのマイク・パットンと組んでアルバムをリリースしていたり…と、どう考えても鉄道員のオジサンの映画とイメージが結びつかなかったんですな。

で、Kaadaさんのアルバムも購入しました。『Thank You for Giving Me Your Valuable Time』(1st)と『Music for Moviebikers』(2nd)の2枚を鑑賞(ジャケット画像提供:ROMZ RECORD)。

『Thank You…』は古き良きアメリカン・ポップス(サーフロックとかフィフティーズ・ポップスとか)をブレイクビーツでバラバラに解体して再構築した感じの内容。David HolmesとかThe Free Associationのアルバムみたいな感じでしょうかね。やっぱりホルテンさんの音楽とはほど遠いトンがった感じ。Cloroformもこんな感じの音楽でしたが。

で、もう一方の『Music for…』を聴くと「あ、なるほどねぇ」と『ホルテンさん』への登板も思わず納得。こちらの音楽はインスト主体の室内楽的アルバムで、雪国の寂寥感や素朴さが感じられる作品。いわゆる「架空のサウンドトラック」系のアルバムですね。ガレージロックと室内楽という音楽のギャップがスゴイです。

で、まぁKaadaさんの音楽をリサーチした上で本人にインタビューを敢行したのですが、ワタクシと歳が近いせいか、Kaadaさんも「Hey, Mol、メール読んだぜ!何でも聞いてくれよ!」ってなノリで、二つ返事で取材に応じてくれました。いやー気さくな人でひと安心でした(英語が通じてよかった、という点が一番安心したわけですが…)。

インタビューの詳細はCD封入のライナーノーツを読んで頂くとして、要点をかいつまんでお話ししますと、Kaadaさんは母国でもあえてインディーズ系の異色な映画を選んで作曲しているそうな。確かに『Natural Born Star』のジャケットを見ると、中身も相当変わった映画なんだろうなと思ってしまいますが。Kaadaさん曰く「ありきたりなロマコメ映画は興味ないんだよね」だそうです。ドクトク路線まっしぐらという印象でした。

そんなKaadaさんの音楽があったからこそ、『ホルテンさん』もベタなお涙頂戴ドラマになる事もなく、切なくもシュールな異色の人情ドラマに仕上がったんだろうなぁ、と思いました。

『ホルテンさん』の音楽で出色なのは、ラップスティール・ギターが哀愁のメロディーを奏でるオープニング曲「ベルゲン急行が行く」と、ホルテンさんが空港をたらい回しにされるシーンのトボケた曲「空港をウロウロ」でしょうか。

前回も書きましたが、サントラ盤はビクターエンタテインメントより好評発売中。

ハリウッド映画では味わえない、スカンジナビアン・ミュージックの独特な世界をぜひぜひお楽しみ下さい。

『ホルテンさんのはじめての冒険』オリジナル・サウンドトラック
音楽:Kaada(コーダ)
品番:VICP-64652
定価:2,625円

    

ホルテンさんのはじめての冒険

本日は北国ノルウェー発の人情ドラマ、『ホルテンさんのはじめての冒険』についてのお話。

「ホルテンさん」ことオッド・ホルテンは、ノルウェー鉄道・ベルゲン急行のベテラン運転士。一人暮らしのアパートで規則正しい生活を送る無口で生真面目な67歳のオジサマです。

ところが定年退職を迎えた最後の勤務の日に寝坊して、自分が運転するはずの電車に乗り遅れた事からさぁ大変、ホルテンさんの規則正しい毎日は次から次へと”脱線”していくのでありました、というのが大まかなストーリー。

言ってみれば、この映画は無口で朴訥としたホルテンさんのロードムービーという感じ。で、ホルテンさんは道中いろいろな人と会うわけですが、これがまた皆さん味のあるキャラばかりでいい感じなんですな。ある意味「ゆるキャラ」というか。

人なつっこいノールダール少年や、レストラン「ヴァルキュリーエン」の飄々とした老ウェイター、「ワシゃー目隠しされても物が見えるんじゃよ」とのたまい、ホルテンさんを恐怖の「目隠しドライブ」に連れて行くシッセネール、マニアックな「鉄道音当てゲーム」に熱中するノルウェー鉄道の職員の皆さんなど、心の温かい、けれども何だか心の奥底に哀しみを抱えていそうな、それでいてシュールな登場人物がホルテンさんの前に現れては、ホルテンさんに何らかの影響を与えていくと。

イマドキの日本映画だったら、さしずめもう20年近く顔を合わせていない息子(もしくは娘)とか、昔の恋人とか、余命幾ばくもない親友というような「分かり易い」キャラを登場させて、観客を全力で泣かせにかかるのかもしれませんが(エンドクレジットではきっとコテコテのバラード曲なんか流れたりするのでしょう)、この映画にはそういう意図はないようです。

人間描写は割とあっさりしていて、ホルテンさんが何を感じ、何を思っているかは映画を観た人が好きなように解釈していいような作りになってます。これが押しつけがましくなくて大変よい感じなんですな。ホルテンさんの珍道中を見ながら、「いろいろあるけど、人生って悪くないなぁ」と独りごちる。それがこの映画の楽しみ方なのかもしれません。

その他にも「世界の車窓から」に出て来そうなベルゲン急行の勇姿や、レトロでお洒落なノルウェーの町並みとか雪景色も美しく、一見の価値があります。そういや久しぶりにケータイやパソコンが話に絡んでこない映画を観ましたが、こういう素朴な作りの映画もいいもんですね。

映画はBunkamura ル・シネマ他で今週21日から公開。地方都市でも順次公開していくそうなので、詳しくは公式サイト(www.horten-san.jp)でご確認下さい。

…というわけで、当ブログ恒例のサントラ盤のご紹介。以前のブログでちょこっとお話したKaada(コーダ)というノルウェーのミュージシャンが音楽を担当しております。室内楽を思わせるストリングスにギター、ヴィブラフォン、木管、パーカッションなどを導入した哀愁のアコースティック・スコアを聴かせてくれます。

これがまたラウンジ系というかイージーリスニング系というか、マッタリとした味わいで、聴けば聴くほど味が出てくる音楽なのですが、ワタクシがインタビューを敢行したKaadaさんの紹介も含めて、詳しくは次回お話ししたいと思います。

サントラ盤はビクターエンタテインメントより好評発売中。

『ホルテンさんのはじめての冒険』オリジナル・サウンドトラック
音楽:Kaada(コーダ)
品番:VICP-64652
定価:2,625円

   

N-04Aを買ってみた

先週末、携帯電話を買い換えました。

思い切ってdocomo SMART seriesのN-04Aを購入。いわゆる「amadanaケータイ」です。
さすがSMARTシリーズというだけあって、厚さは旧ケータイ(F900iT)のほぼ半分になりました。

ボタンの間隔が若干狭くなったので、ボタン押す時の感触がまだ馴染めませんが、
まぁ使っていればそのうち慣れるでしょう。

難点を挙げるなら、外部接続端子部のカバーがヒジョーに取れやすいという事でしょうか。
これはハンパなく取れやすいです。旅行先などでケータイにアダプタやPCを接続する時は要注意です。

しかし、こんな問題はワタクシにとっては些細なこと(でもないんだけど)。
N-04Aを選んだ一番の理由は、「HASYMOによる音楽コンテンツ」だったのです。

気になるコンテンツはと申しますと、着うたフルの「Good Morning, Good Night」が1曲と、
着信メロディー(ジングル)が14曲。

「Good Morning…」はテレビCMのバックで流れている曲と同じです。

その他のメロディーは以下の通り。カッコ内はワタクシの個人的な感想です。
いーかげんなのであまり参考にはならないと思いますが、まあ一応という事で。

HOPE (この中で一番メロディアス)
SESAMI (短いベル音)
BLUE HEAVEN (「Good Morning…」のイントロ部分)
A HINT (優しいベル音)
ATTENTION (ブザー系。細野さんの「フィルハーモニー」に出てきそうな音かも)
GOOD NEWS (スーパーマリオでパワーアップキノコを取った時のような音)
ALARMING (テクノな感じ)
RING RING (エレクトロニカな感じ)
MERCURY (アンビエントな感じ)
AERO (アンビエントな感じ)
OPEN SESAMI #1
CLOSE SESAMI #1
OPEN SESAMI #2
CLOSE SESAMI #2

「HOPE」と「A HINT」の作曲が幸宏さんで、他は全て細野さんが作曲しています。
教授は1曲も作ってません。HASYMO名義の「Good Morning…」だけですね。

ワタクシの場合、メールの着信音に「A HINT」、目覚ましアラームに「HOPE」、
i コンシェルの着信音に「SESAMI」、ケータイをスライドさせる際の音は
「OPEN / CLOSE SESAMI #2」にしてみました。

…というわけで、着信音のほとんどを細野さんが作っているという点で、YMOファンでも
特に細野さんファンは押さえておきたい一品ではないかと思ったりします。