「ネオン・ノワール調のシンセサウンド+ほのかな和テイスト」で聴かせる『TOKYO VICE』Season 1のサントラ盤(作曲家さんインタビューも実施しました)

ランブリング・レコーズ様のご依頼で、ドラマシリーズ『TOKYO VICE』(22~)の国内盤サントラに音楽解説を書かせて頂きました。スコア作曲はダニー・ベンジ&ソーンダー・ジュリアンズのコンビ。

『TOKYO VICE』オリジナル・サウンドトラック(amazon)
『TOKYO VICE』オリジナル・サウンドトラック(TOWER RECORDS)

ドラマシリーズに興味がある方には、『オザークへようこそ』(17~22)の作曲家ですと説明すると「ああ、あのドラマの!」となるかもしれません。

Ozark Seasons 1 & 2 (Original Soundtrack) – amazon music

Ozark Seasons 3 & 4 (Original Soundtrack) – amazon music

個人的には『複製された男』(13)のスコア作曲を手掛けた人たちという印象が強いです。ドゥニ・ヴィルヌーヴとのコラボレーションがこれ1作で終わってしまったのが残念でした。ヴィルヌーヴは大作路線にシフトしてヨハン・ヨハンソンやハンス・ジマーと仕事するようになりましたからね…。

Enemy (Original Soundtrack Album) – amazon music

いずれにしても、ベンジ&ジュリアーンズは日本ではまだあまり名前を知られていない作曲家コンビなので、差込解説書できちんと彼らの経歴と『TOKYO VICE』の音楽をご紹介しようと思い、今回は作曲家さんへの独占インタビューを実施しました。

先方は目下『TOKYO VICE』シーズン2のスコア作曲の真っ只中ということで、かなり忙しい状況だったにもかかわらず、ジュリアーンズさんが手の空いたときに快くインタビューに答えてくれました。
当方の質問に丁寧に回答してくれたので、『TOKYO VICE』の音楽のコンセプトがよく分かる内容になっていると思います。ぜひ製品を手に取って頂いて音楽解説にも目を通して頂ければ幸いです。

そんなわけでインタビュー内容については差込解説書でじっくり読んで頂きたいので、当方のブログでは『TOKYO VICE』の音楽の特徴を簡単にご紹介したいと思います。

…と、その前に。

念のため書かせて頂きますが、このサントラ盤はベンジ&ジュリアーンズの劇伴集なので、ドラマの中で使われた歌曲は収録しておりません。「歌モノが入ってると思ってサントラ買ったけど(歌が)入ってなかった」とならないようご注意ください。

これは歌曲集ではなく劇伴集です(大事なことなので2回書きました)。

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BANGER!!!で書いた『ボーン』シリーズ音楽コラムの補足(『ジェイソン・ボーン』編)

年末年始にムービープラスやBS12、WOWOWなどで『ジェイソン・ボーン』シリーズ(あるいは『ボーン』シリーズ)の一挙放送があったので、それに合わせて映画情報サイト「BANGER!!!」でシリーズの音楽を紹介するコラムを書きました。

続編製作の噂も? 紆余曲折『ボーン』シリーズの音楽世界に迫る! ~『アイデンティティー』からスピンオフまで~ | https://www.banger.jp/movie/108228/

今回は『ジェイソン・ボーン』(16)について…なのですが、BANGER!!!のコラムで重要なことはほとんど書いてしまったし、それ以前にサントラ盤の差込解説書でもいろいろ書いていたので、ブログでは簡単に補足する程度にさせて頂きます。

JASON BOURNE Original Motion Picture Soundtrack – amazon

『ボーン・アルティメイタム』(07)で一応シリーズ完結ということになっていたし、スピンオフの『ボーン・レガシー』(12)もシリーズ継続にゴーサインを出すには微妙な興行成績だったので、もう続編はないかなと思っていました。

もしかしたら「やっぱりスピンオフじゃなくて本家の続編を作らなきゃダメだ」みたいな判断で続編を作るかもしれないけれども、アニメ映画の作曲中心にシフトしたジョン・パウエルが復帰するかどうかは微妙な線だろうなとも考えておりました。ポール・グリーングラス監督の『キャプテン・フィリップス』(13)の音楽もパウエルではなくヘンリー・ジャックマンでしたから。

それでもこうして本家の続編が作られて、「愛妻が亡くなる」という不幸を乗り越え、パウエルもシリーズの音楽担当に復帰したのでした。

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BANGER!!!で書いた『ボーン』シリーズ音楽コラムの補足(『ボーン・スプレマシー』『ボーン・アルティメイタム』編)

年末年始にムービープラスやBS12で『ジェイソン・ボーン』シリーズ(あるいは『ボーン』シリーズ)が一挙放送されるので、それに合わせて映画情報サイト「BANGER!!!」でシリーズの音楽を紹介するコラムを書きました。

続編製作の噂も? 紆余曲折『ボーン』シリーズの音楽世界に迫る! ~『アイデンティティー』からスピンオフまで~ | https://www.banger.jp/movie/108228/

BANGER!!!のコラムで書けなかったネタをブログで補足させて頂きます…という話でしたが、『ボーン・スプレマシー』(04)は書き足すネタも少なめなので、『ボーン・アルティメイタム』(07)とまとめさせて頂きました。ちなみに後者の国内盤サントラには、封入冊子に音楽解説を書かせて頂きました。お仕事の機会を頂いたときは嬉しかったなぁ。。

THE BOURNE SUPREMACY Original Motion Picture Soundtrack – amazon music
THE BOURNE ULTIMATUM Original Motion Picture Soundtrack – amazon music

高速カッティングの映像とパーカッションのリズムを同期させる音楽的発明

監督がダグ・リーマンからポール・グリーングラスに交代してからの『ジェイソン・ボーン』シリーズは、カメラを激しく揺らす映像と、「そこまでやる?」という細かいカット割りが最大の特徴でしょう。あの高速カッティングの映像にアップテンポなリズムを同期させてスピード感を生み出すというのは、ある種の音楽的発明(発見)と言っても差し支えないのではないかと思います。

ちなみにパーカッション奏者の参加人数だけならば、第3作の『ボーン・アルティメイタム』よりも『ボーン・スプレマシー』のほうが多いです。

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本編未見だけど『イコライザー THE FINAL』のサントラ(スコアアルバム)を購入しました

『イコライザー THE FINAL』(23)のスコアアルバムがデジタル版で発売になっていたので買ってみました。アルバムは全24曲で収録時間58分。

THE EQUALIZER 3 Original Motion Picture Soundtrack – amazon music

スコア作曲は前2作のハリー・グレッグソン=ウィリアムズからマーセロ・ザーヴォスに交代。

「何で今回はHGWじゃないの? シリーズ最終作なのに…」というお声もあるかと思いますが(自分もそう思った)、ザーヴォスのインタビュー記事などに目を通してみると、「アントワーン・フークア(監督)が”物語の舞台がアメリカ国内からイタリアに移ったので音楽もガラッと変えてみよう”と思ったからではないか」というようなことを言っていました。別にHGWの音楽が不満とか不仲になったというわけではないようです。

BROOKLYN’S FINEST Original Motion Picture Soundtrack – amazon music

ザーヴォスとフークアも秀作刑事ドラマ『クロッシング』(09)でタッグを組んで以来、『ギルティ』(21)、『The Day Sports Stood Still』(21)、『自由への道』(22)などの音楽を担当していて、デンゼル・ワシントン監督作『フェンス』(16)の音楽も担当しているので、フークア、デンゼルの二人とも納得の人選ではあったと思います。フークア的には濃密な人間描写が必要な作品ではザーヴォスを起用するという感じなのかな。『クロッシング』は以前サントラ盤に音楽解説を書かせて頂きましたし、その時ザーヴォスさんにインタビューしたこともありましたが、重厚かつ悲愴な音楽で大変よい感じでした。

EMANCIPATION Original Motion Picture Soundtrack – amazon music

FENCES Music from the Motion Picture – amazon music

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『ジョン・ウィック:コンセクエンス』劇中使用曲・サントラ未収録曲は大体こんな感じだと思う。

前回のブログでお知らせしたとおり、ランブリング・レコーズ様のご依頼で『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(23)の国内盤サントラに音楽解説を書かせて頂きました。音楽担当は過去3作と同様にタイラー・ベイツさんとジョエル・J・リチャードの二人。

ジョン・ウィック:コンセクエンス サウンドトラック【世界先行発売】(amazon)
オリジナル・サウンドトラック『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(TOWER RECORDS)

サントラ盤の発売に先駆けて、映画情報サイト「BANGER!!!」でワタクシが実施したベイツさんへのインタビュー記事が公開されています。

『ジョン・ウィック』作曲秘話!「“ロックの美学”がコンセプト」「クロサワ映画から着想」タイラー・ベイツ独占インタビュー
https://www.banger.jp/movie/102066/

このブログのテキストを書いている時点(2023年9月30日)では、amazonやタワレコで『コンセクエンス』国内盤サントラの初回出荷分は完売したようで、「おお、今回はこれまで以上にサントラの売れ行きがいいなぁ」と思ってしまいました。まあ再販期間中であれば数日待てば製品がまた補充されるでしょう。
とはいえ、このシリーズは第1作『ジョン・ウィック』(14)も『ジョン・ウィック:チャプター2』(17)も『ジョン・ウィック:パラベラム』(19)も比較的早くサントラ盤が売り切れてしまったので、早めに購入しておいたほうがよいことに変わりはありません。

さてこれだけ多くの人たちのところにサントラ盤が行き渡ったとなりますと、そろそろ「あの曲が入ってない」というお声が上がってくる頃ではないかなという気がしました。

そんなわけで、今回は『ジョン・ウィック:コンセクエンス』の劇中使用曲でサントラ盤に未収録のものをリストアップしてみました。自前で曲を補完する時の参考になれば幸いです。

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