最近買ったサントラ盤 『ブラッドシンプル』『ブルー・ベルベット』デラックス・エディション

「最近」という言葉を使うには少々日にちが経ってしまいましたが、Varese Sarabandeから数量限定で発売になった『ブラッドシンプル』(84)と『ブルー・ベルベット』(86)のデラックス・エディション版サントラを買いました。

『ブラッドシンプル』はVareseから『赤ちゃん泥棒』(87)とのカップリングで1987年にサントラ盤が出ていて、その時にはカーター・バーウェルのスコアを20分くらい収録していました。
で、今回のデラックス・エディションはオリジナルのマルチトラック・セッション・テープから新たにミックスを施した全13曲・約35分のスコアを収録しているとのこと。この微妙な収録時間が悩みどころでした。

「通常盤から15分増えた収録時間35分のコンパクトなサントラ盤に6,000円前後を出すのもなぁ…」と思い、昨年は購入を見送ってしまいました。
しかしザ・シネマで『ブラッドシンプル ザ・スリラー』の放送があり、放送期間中に何度も映画を観ているうちに「やっぱりバーウェルの音楽いいな」と思い、結局買うことにしたのでした。

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『π』のデジタルリマスター版が劇場公開になるので、音楽のことなどを振り返ってみる。

3月14日に映画『π』(98)のA24版デジタルリマスター版が劇場公開になるそうです。

自分がこの映画を観たのは、某理系私大の学生だった頃でした。
フェニル基を持った有機化合物のねじれ角ポテンシャルパラメータだか何だかを算出する作業に明け暮れていた時期で(卒業研究のテーマがそんな感じの内容だったのです)、毎日研究室でも自宅でもPCの画面で数字とにらめっこしていたので、『π』の主人公マックスの苦悩が他人事とは思えなかった。

この映画を観たあと「あまり根を詰めて実験したり測定したりすると病んでしまいそうだから、程々にしておこう…」と思った次第です。

この時期はテクノ系のアーティストのアルバムをよく聴いていたし、『ワイプアウトXL』なんかでもよく遊んでいたので、オービタルやマッシヴ・アタック、エイフェックス・ツインらが参加した『π』のサントラは大変魅力的で、映画を観る前に購入しました。
「踊れるテクノ」というよりも、実験音楽色の強いIDM(インテリジェント・ダンス・ミュージック)のコンピレーションという内容。ちなみにポップ・ウィル・イート・イットセルフ(以下PWEIと表記)のことをよく知らなかった自分が初めて買ったクリント・マンセルのサントラでもありました。

で、先にサントラを聴いて映画本編を観たら、劇中で使われていない曲がいくつもあったのでした。
「え? これインスパイア盤だったの?」と思ってサントラ盤をよく見てみると、「MUSIC FROM THE MOTION PICTURE」ではなく「MUSIC FOR THE MOTION PICTURE」と意味深長なことが書いてある。

この記述は一体…!? としばらく悩んだものの、答えが見つからず、その後すっかり忘れておりました。
しかしリマスター版が公開になるということで、ちょっと調べ直してみることにしました。

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BANGER!!!で書いた『テルマ&ルイーズ』音楽コラムの補足

2月16日から『テルマ&ルイーズ』(91)の4Kレストア版の上映が始まるということで、映画情報サイト「BANGER!!!」で音楽紹介コラムを書かせて頂きました。

実はブラピの出世作『テルマ&ルイーズ』が4Kリバイバル上映! アカデミー賞受賞の傑作ロードムービーを彩るハンス・ジマーの音楽 | https://www.banger.jp/movie/110781/ #BANGER

当初はハンス・ジマーのスコアをメインに紹介して、挿入歌は数曲ざっくりご紹介すればいいかな…と考えていたのですが、映画本編をじっくり観直したところ、挿入歌の使い方もかなり凝っていたので「これは出来る限りきちんと紹介しなきゃダメだな」と思い直し、結局挿入歌もかなりの字数を割いてご紹介することになりました。

最近疲れているので少し楽をさせて頂こうと思ったのですが、そんなにうまくは行かないのでありました。

BANGER!!!のコラムで重要なことはほとんど書いたので、当方のブログではもう少し補足したほうがいいかなというネタをいくつかご紹介いたします。

Thelma and Louise – Original Motion Picture Score (TOWER RECORDS)

1990年代当時のハンス・ジマーについて

BANGER!!!のコラム内で「90年代初頭のジマーは冷遇されていたこともあった」と書きましたが、『ドライビング Miss デイジー』(89)で一体何があったのか。このあたりのところをもう少し詳しくご説明したいと思います。

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BANGER!!!で書いた『ボーン』シリーズ音楽コラムの補足(『ジェイソン・ボーン』編)

年末年始にムービープラスやBS12、WOWOWなどで『ジェイソン・ボーン』シリーズ(あるいは『ボーン』シリーズ)の一挙放送があったので、それに合わせて映画情報サイト「BANGER!!!」でシリーズの音楽を紹介するコラムを書きました。

続編製作の噂も? 紆余曲折『ボーン』シリーズの音楽世界に迫る! ~『アイデンティティー』からスピンオフまで~ | https://www.banger.jp/movie/108228/

今回は『ジェイソン・ボーン』(16)について…なのですが、BANGER!!!のコラムで重要なことはほとんど書いてしまったし、それ以前にサントラ盤の差込解説書でもいろいろ書いていたので、ブログでは簡単に補足する程度にさせて頂きます。

JASON BOURNE Original Motion Picture Soundtrack – amazon

『ボーン・アルティメイタム』(07)で一応シリーズ完結ということになっていたし、スピンオフの『ボーン・レガシー』(12)もシリーズ継続にゴーサインを出すには微妙な興行成績だったので、もう続編はないかなと思っていました。

もしかしたら「やっぱりスピンオフじゃなくて本家の続編を作らなきゃダメだ」みたいな判断で続編を作るかもしれないけれども、アニメ映画の作曲中心にシフトしたジョン・パウエルが復帰するかどうかは微妙な線だろうなとも考えておりました。ポール・グリーングラス監督の『キャプテン・フィリップス』(13)の音楽もパウエルではなくヘンリー・ジャックマンでしたから。

それでもこうして本家の続編が作られて、「愛妻が亡くなる」という不幸を乗り越え、パウエルもシリーズの音楽担当に復帰したのでした。

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BANGER!!!で書いた『ボーン』シリーズ音楽コラムの補足(『ボーン・レガシー』編)

年末年始にムービープラスやBS12で『ジェイソン・ボーン』シリーズ(あるいは『ボーン』シリーズ)が一挙放送がありましたので、それに合わせて映画情報サイト「BANGER!!!」でシリーズの音楽を紹介するコラムを書きました。

続編製作の噂も? 紆余曲折『ボーン』シリーズの音楽世界に迫る! ~『アイデンティティー』からスピンオフまで~ | https://www.banger.jp/movie/108228/

今回はシリーズの番外編『ボーン・レガシー』(12)について補足したいことをいくつか。


正直に書かせて頂きますと、ワタクシ映画館で『ボーン・レガシー』を観た時、途中で寝落ちしました。前日仕事で夜更かししていたせいもあるのですが、何だか演出のテンポが悪いところがあって、アクション映画なのに鑑賞中に緊張感が緩んで睡魔に襲われてしまったんですね…。

マット・デイモンはトニー・ギルロイが書いた『ボーン・アルティメイタム』(07)の初稿の脚本にダメ出しをしたそうですが、そのギルロイが監督・脚本を手掛けた『ボーン・レガシー』がこういう内容となると、「ううむ…」と納得せざるを得ない。ギルロイの『フィクサー』(07)は評価が高かったのに、なぜこうなったのか…と当時は思ったりしたものでした。

だから数年前くらいまでは「ボーン・レガシー=微妙な映画」という認識だったのですが、コロナ禍に『ボーン・レガシー』を以前とは異なる視点から観直してみたら、「これはこれでアリなんじゃないか」と思うようになってきました。

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