2022年に購入して個人的に満足度が高かったサントラ盤10選

今年もいろいろサントラ盤を購入したので、「これは買ってよかったなぁ」と思ったアルバムを挙げていきたいと思います。
新作のサントラよりも旧作のエクスパンデッド盤を買う機会のほうが多かったのかな。

その1;『スカーフェイス』(83) 2枚組エクスパンデッド盤

真っ先にあげるとするなら、やはりこの一枚でしょう。
学生時代に初めてこの映画を観た時から約30年、「ジョルジオ・モロダーの劇伴をフルで聴きたい」というワタクシのささやかな願いが叶ったアルバムでした。
このサントラが発売される前に、BANGER!!!でもこんなコラムを書いてました。

『スカーフェイス』 過激なバイオレンスにセクシーなディスコ音楽!
EDM界の巨匠ジョルジオ・モロダーの功績
https://www.banger.jp/movie/59235/

SCARFACE Expanded Motion Picture Soundtrack (TOWER RECORDS:輸入盤)
SCARFACE Expanded Motion Picture Soundtrack (TOWER RECORDS:輸入盤国内流通仕様)
SCARFACE Expanded Motion Picture Soundtrack (amazon:輸入盤国内流通仕様)

その2:『L.A.コンフィデンシャル』(97) エクスパンデッド・スコア盤

先日買ったばかりですが、これも25年近く発売を待ち続けたスコア盤でした。
拡張盤(完全盤)になっても収録曲が16分ほど増えた程度というのは意外でしたが、先日ブログに書いたとおり、この追加収録分は金額やプレイタイムに換算出来るものではないんですよね。

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『ザリガニの鳴くところ』のBANGER!!!コラムでマイケル・ダナさんにインタビューしました。

11月のBANGER!!!のコラムで、『マネーボール』(11)以来久々にマイケル・ダナさんにインタビューしました。

本屋大賞1位のミステリーを映画化!
『ザリガニの鳴くところ』“湿地帯の音楽”って?
劇伴作曲家マイケル・ダナに独占インタビュー
https://www.banger.jp/movie/87084/

こちらの作品、国内盤サントラが発売される運びになったようなのですが、音楽解説の仕事が当方に回ってこなくて、ここだけの話ものすごく落ち込んでおりました。

そんな折、マイケルさんから「最近どうしてる?」と連絡が来まして、9月に帯状疱疹を患ったり、コロナ禍が全く収束する気がしなかったり、北朝鮮から狂ったようにミサイルがバンバン発射されたり、ロシアのウクライナ侵攻も酷い状況だったりして、つい「正直言ってあんまり調子よくないです。仕事は普段通りなんですが」と本音を漏らしてしまいました…。

すると「そうだな、どこの国も政治がひどいし、2020年代は今のところ最悪の時代だよね。日本も頻繁にミサイルが飛んできて大変だろうけど、気をしっかり持つんだよ」と励ましてくれまして、何だか泣きそうになりました。
それで「今だったらちょっと時間があるけど、なにかインタビューしたいとかある?」とダナさんから聞いてきてくれたので、お言葉に甘えてBANGER!!!のコラム用に『ザリガニの鳴くところ』の音楽について語って頂いたというわけです。

だから今回のマイケルさんへのインタビューは、これまで以上に思い入れがある内容となりました。

Where the Crawdads Sing – Original Motion Picture Soundtrack (amazon)
Where the Crawdads Sing – Original Motion Picture Soundtrack (TOWER RECORDS)

『ザリガニの鳴くところ』(22)の音楽については本記事で全て語り尽くしてしまった感があるので、当方のブログでは補足というか自分の感想を書かせて頂きたいと思います。

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最近買ったサントラ(『Stillwater』『ミッドナイト・スカイ』『エイリアン』2枚組完全盤)

東京オリンピックの競技をテレビで見る気にもなれず、世の中の状況がひどすぎてプロ野球の試合(オールスター戦とか侍ジャパンの練習試合)すら見る気がなくなってきた今日この頃。心の支えはもっぱら映画、読書、音楽鑑賞、ときどきEテレということで、いろいろサントラ盤を買いました。

■その1:『Stillwater』(21)

『スポットライト 世紀のスクープ』(15)のトム・マッカーシー監督最新作、『Stillwater』のサントラ。音楽担当がマイケル・ダナさんということで即購入。ダウンロード版のみのリリース。

マイケルさんらしいミニマルなピアノのフレーズが印象的なスコアですが、今回はギター/撥弦楽器と打ち込みのリズム(低音)が結構前面に出ていて、サスペンススコアの要素も強め。ギターを多めに使ったのは、マット・デイモンが演じる主人公のキャラクターを反映した結果でょうか。

『スポットライト』はハワード・ショア、『靴職人と魔法のミシン』(14)はジョン・デブニー&ニック・ウラタ、『WIN WIN』(11)はライル・ワークマン、『扉を叩く人』(07)はヤン・A.P・カチュマレクということで、マッカーシー監督はまだ特定の作曲家を贔屓にしていないようですが、マイケルさんとも今回だけなのか、次作でも組むのか注目したいところです。

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最近買ったサントラ 『X-メン』2枚組エクスパンデッド盤/『アトランティスのこころ』スコアアルバム/『ブルータル・ジャスティス』

年齢的なこともあるのか、ワタクシは90年代~2000年代前半の映画に思い入れのある作品が多かったり、映画を観た時の記憶が鮮明な作品が多かったりします。
そんなわけで、この時期の完全版サントラが発売されるとつい買ってしまうのです。

最近買ったサントラはこんな感じ。

その1:『X-メン』(00) 2枚組エクスパンデッド盤

映画公開当時はDeccaからサントラが発売されましたが、21年の時を経てLa-La Land Recordsから2枚組完全盤が発売になりました
音楽は『ダイ・ハード』(88,90,95)、『リーサル・ウェポン』(87~98)シリーズのマイケル・ケイメン。
Deccaの通常盤が収録時間40分程度だったのに対して、今回のエクスパンデッド盤は収録時間2時間30分強の大ボリューム(映画で使われたスコア+別バージョンのスコア、通常盤に収録されたバージョンのスコアを収録)。待った甲斐がありました。

ケイメンは本作で「オーケストラ+シンセ」のスコアを作曲していますが、いわゆるハンス・ジマー一派とも違うシンセの使い方をしている印象。
ケイメンはあくまでフルオケスコアがメインで、シンセのサンプリング音や打ち込みのリズムを隠し味で使っている感じ。
「パーパーパーパッパッパパパパパッ!」というブラスの和音とか、「チャラリ~チャラリラリラッ!」というストリングスのサスペンスフルなフレーズなど、『ダイ・ハード』の音楽でおなじみの音が随所で使われていて、「あー、ケイメンの音楽だなぁ」と一発で分かるのが面白い。

アメコミヒーロー映画黎明期の作品らしい、近年主流になったスーパーヒーロー音楽とはちょっと趣の異なるスコアです。

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『秘密への招待状』のBANGER!!!コラムの補足的なお話(エンディングテーマ”Knew You for a Moment”の歌詞とか)

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、映画『秘密への招待状』(19)のサントラ盤に音楽解説を書かせて頂きました。
音楽担当は弊社リリース作品「ケルティック・ロマンス」でもおなじみのマイケル・ダナ。

今回もサントラ盤の差込解説書用に、マイケルさんから話を聞くことが出来ました。
昨年インタビューを申し込んだ時、アメリカはちょうど感謝祭シーズンだったのですが、なんとか締め切り期限に間に合わせて回答して下さいました。

そんなわけで『秘密への招待状』の音楽に関しては差込解説書で詳しく説明させて頂きましたし、先日BANGER!!!のコラムでもダイジェスト的にざっくりご紹介したので、正直ブログで書くネタがもう残っておりません。。

育ての親J・ムーア&生みの親M・ウィリアムズ競演!あのマッツ主演作をリメイク『秘密への招待状』の音楽が複雑な“親の心”を映し出す
https://www.banger.jp/movie/52124/

まあこちらのブログで私見を交えてもう少し突っ込んだ分析をさせて頂くならば、今後しばらく家族ドラマの音楽は、この映画のようにあまり規模の大きくないオーケストラがトレンドになっていくのではないかなと思います。
もともとマイケルさんはアトム・エゴヤン監督作品でこういうタイプのスコアを作曲していましたし、ジュリアン・ムーア出演作で言えば、イラン・エシュケリの『アリスのままで』(14)もピアノ四重奏のスコアだったし、ランディ・ニューマンの『マリッジ・ストーリー』(19)も本人が「室内楽規模のオーケストラ」とライナーノーツで説明していたし、同じニューマンの『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』(17)に至っては全編ピアノ曲だったことからも、その傾向が見えてくるのではないかと。

■以前のブログ
『マリッジ・ストーリー』音楽解説余話 ごく私的なランディ・ニューマン音楽遍歴
https://www.marigold-mu.net/blog/archives/10386

さて今回のブログでは、字数の都合で差込解説書やBANGER!!!コラムで書ききれなかったトピック――『秘密への招待状』のエンディングテーマ曲について少しばかりご紹介したいと思います。

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