ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、映画『秘密への招待状』(19)のサントラ盤に音楽解説を書かせて頂きました。
音楽担当は弊社リリース作品「ケルティック・ロマンス」でもおなじみのマイケル・ダナ。
今回もサントラ盤の差込解説書用に、マイケルさんから話を聞くことが出来ました。
昨年インタビューを申し込んだ時、アメリカはちょうど感謝祭シーズンだったのですが、なんとか締め切り期限に間に合わせて回答して下さいました。
そんなわけで『秘密への招待状』の音楽に関しては差込解説書で詳しく説明させて頂きましたし、先日BANGER!!!のコラムでもダイジェスト的にざっくりご紹介したので、正直ブログで書くネタがもう残っておりません。。
育ての親J・ムーア&生みの親M・ウィリアムズ競演!あのマッツ主演作をリメイク『秘密への招待状』の音楽が複雑な“親の心”を映し出す
https://www.banger.jp/movie/52124/
まあこちらのブログで私見を交えてもう少し突っ込んだ分析をさせて頂くならば、今後しばらく家族ドラマの音楽は、この映画のようにあまり規模の大きくないオーケストラがトレンドになっていくのではないかなと思います。
もともとマイケルさんはアトム・エゴヤン監督作品でこういうタイプのスコアを作曲していましたし、ジュリアン・ムーア出演作で言えば、イラン・エシュケリの『アリスのままで』(14)もピアノ四重奏のスコアだったし、ランディ・ニューマンの『マリッジ・ストーリー』(19)も本人が「室内楽規模のオーケストラ」とライナーノーツで説明していたし、同じニューマンの『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』(17)に至っては全編ピアノ曲だったことからも、その傾向が見えてくるのではないかと。
■以前のブログ
『マリッジ・ストーリー』音楽解説余話 ごく私的なランディ・ニューマン音楽遍歴
https://www.marigold-mu.net/blog/archives/10386
さて今回のブログでは、字数の都合で差込解説書やBANGER!!!コラムで書ききれなかったトピック――『秘密への招待状』のエンディングテーマ曲について少しばかりご紹介したいと思います。
エンディングテーマ”Knew You for a Moment”を歌っているのは、本編でグレイスを演じたアビー・クインであることはBANGER!!!コラムでお話ししましたが、「歌詞は本当にグレイスではなくイザベルの視点で書かれたものなのか?」という点について補足させて頂きます。
…というわけで、まずは”Knew You for a Moment”の歌詞をご覧下さい。
What did you look like
I’d never really got the chance to see you
Come to think I’d never really knew you
What did you saw, my
Got hurt and scream the second that I left you
You know I never really meant to hurt you
I missed you on the plane right over
I saw you in the middle of the ocean
I knew you for a moment
I knew you for a moment
You were my home
Home inside that big city
Got shoved around and I come up singing
I missed you on the plane right over
I saw you in the middle of the ocean
I knew you for a moment
I knew you for a moment
I missed you on the plane right over
I swear I saw you dancing in the ocean
I knew you for a moment
I now that I’m leaving
No sense in thinking
It only hurts when you’re dreaming
ワタクシは歌詞の翻訳のセンスは皆無に等しいのですが、ものすごく大雑把に訳すと(意訳も含む)こんな感じの内容でしょうか。
あなたはどんな子だったのだろう
私はあなたと会う機会がなかった
あなたを知ることもなかったと思う
あなたは何を見ただろう
置き去りされたあなたは傷つき、そして叫んだ
私はあなたを傷つけるつもりはなかった
飛行機の中であなたがいなくて寂しかった
海の真ん中であなたを見た
私はあなたを少しだけ知っていた
私はあなたを少しだけ知っていた
あなたは私の家だった
大都市の中にある家
私は周囲を押しのけて歌いに行く
飛行機の中であなたがいなくて寂しかった
海の真ん中であなたを見た
私はあなたを少しだけ知っていた
私はあなたを少し知っていた
飛行機の中であなたがいなくて寂しかった
誓ってもいい、私はあなたが海で踊っているのを見た
私はあなたを少しだけ知っていた
私は今、立ち去ろうとしている
考えても意味がない
あなたが夢を見ている時、心が痛むだけ
当方の翻訳の精度はさておき、これはどう見ても「やむにやまれぬ事情で生まれてきた娘を手放さざるを得なかったイザベルの悔恨の情」を歌った曲ではないかと解釈出来るわけです。
本国メディアのインタビュー記事を読んでみると、作詞・作曲&ボーカルを担当したアビー・クインも、最初はイザベルの視点で曲を書く予定はなかったので、自然とそういう流れで曲を書き進めていくことになったのは面白かったと言ってました。映画のあの結末で、この曲が流れると泣けてきますね。。
サントラにはマイケルさんのスコアとアビー・クインのエンディングテーマのほかに、インディーバンド「ザ・カウンターフィッツ」の”Tattered And Torn”、コモドアーズの”Brick House”を収録しています。
ハッキリ言ってコモドアーズの曲はファンキーすぎてアルバムから少し浮いた印象を受けますが、終盤の割と大事なシーンで使われた曲なので、これは外せなかったのでしょう。
ヨハン・セーデルクヴィストの『アフター・ウェディング』(06)とも少し違った音楽世界を楽しんで頂ければと思います。
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