『マリッジ・ストーリー』音楽解説余話 ごく私的なランディ・ニューマン音楽遍歴

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、『マリッジ・ストーリー』(19)のサントラ盤に音楽解説を書かせて頂きました。
音楽担当は大御所ランディ・ニューマン。

『マリッジ・ストーリー』の音楽については、
サントラ盤の差込解説書と、
先頃のBANGER!!!コラムで詳しくご紹介させて頂きました。

『マリッジ・ストーリー』『トイ・ストーリー4』でアカデミー賞Wノミネート! 作曲家ランディ・ニューマンとは | BANGER!!!
https://www.banger.jp/movie/27251/ #BANGER

『マリッジ・ストーリー』の音楽については、ほぼ書き尽くしてしまった感もございますので、このブログでは、ごく私的なランディ・ニューマンの音楽鑑賞遍歴なども交えつつ、彼の音楽世界を掘り下げてみようかなと思います。

さてそのBANGER!!!コラムの書き出しで、ランディ・ニューマンという人物から受ける印象は、

A: ディズニー/ピクサー映画で友情讃歌を歌っているオジサン
B: ノスタルジックなアメリカの風景を美しいオーケストラ音楽で彩るマエストロ
C: シニカルな歌詞で世の中を風刺する頑固オヤジ

…というように、どの作品から彼の音楽世界に入っていったかによって違ってくるのではないか、というようなことを書きました。

では自分の場合はどうだったかというと、
ワタクシが初めてランディ・ニューマンの音楽に触れたのは、確か『レナードの朝』(90)と『マーヴェリック』(94)だったと思います。
ちなみに『マーヴェリック』は当時スコア盤を探し回ったのですが全く店頭で見つからず、ガッカリした記憶があります(スコア盤自体は発売されていた)。

正確には『メジャーリーグ』(89)のオープニングで流れた”Burn On”が
人生で初めて聴いたランディの曲だったのですが、当時の自分は小学生で、これがランディの曲だと意識せずに聴いていたので、「初めて聴いたランディ・ニューマンの曲」とは言えないのかもしれません。

だからワタクシの場合、最初にランディ・ニューマンに対して持ったイメージは、上記Bの「ノスタルジックなアメリカの風景を美しいオーケストラ音楽で彩るマエストロ」だったわけです。さすが映画音楽一家のニューマン・ファミリーの一員だな、と。

ところが某英会話学校に通っていた頃、たまたま音楽好きの講師に当たった時に、話の流れでランディ・ニューマンの話題になって、
「ランディはねぇ、すごくシニカルなミュージシャンだよ」と聞かされて「え?そうなの?」と驚きまして。
そうしたところ、「それじゃあ「セイル・アウェイ」を聞いてごらん? 次のレッスンで感想を聞かせてくれよ(もちろん英語で)!」…という”宿題”を出されまして、CDレンタルで「セイル・アウェイ」を早速聴いてみたわけです。そこでワタクシは初めて上記Cの「シニカルな歌詞で世の中を風刺する頑固オヤジ」というランディの一面を知ったのでした。

ランディ・ニューマンの曲と言えば「ショート・ピープル」の”炎上”騒動がつとに有名ですが、
「セイル・アウェイ」も「ポリティカル・サイエンス」も、歌詞を読むと皮肉がキツい。ジョークがドギツいんじゃないかとも思ったり。
子どもの頃に『メジャーリーグ』で聴いた「バーン・オン」も、カヤホガ川火災(工場からの廃油などが原因の川火事)を歌った曲で、これもまたよく考えてみれば辛辣な歌詞の曲だった。
マッタリとした歌い方と美メロ、洗練された編曲とは対照的な毒舌ソングとでも申しましょうか。「こんな皮肉屋のオジサンが『トイ・ストーリー』(95)の音楽を担当していたのか…」と、当時意外に思ったものです。

その英会話学校の講師は「まぁ、彼は辛辣な歌詞でアメリカ社会を風刺してるんだよね」と言っていましたが。
ランディが辛辣な歌詞とは真逆の思想の持ち主であるからこそ、また誰もがそのことを知っているからこそ、”アメリカの良心”とも言えるディズニー/ピクサー映画の音楽を任されているのでしょう(たぶん)。ワタクシの場合、当時はまだ若かったので、そのことを納得するまで時間を要しましたが。

だからランディの音楽にディズニー/ピクサー映画から入った人と、
映画音楽から入った人、
ソロアルバムから入った人とでは、
アーティストイメージが全然異なるのも無理ないなと。

そんなランディの新作となる『マリッジ・ストーリー』も、流麗で温かみのあるメロディと、室内楽規模の慎ましやかなオーケストラ・サウンドが大変美しいスコアに仕上がっておりまして、シンガーソングライター作品の時のような「皮肉屋」的イメージは皆無。
今回のサウンドトラックでは、ランディのボーカル曲は一切ないのですが、
それでも流麗なスコアを聴いているだけで、「離婚は辛いものだけど、君らの間にはまだ愛情が残っているんじゃないのかい?」と言われているような気分になります。このビタースウィートな感覚がたまりません。

…何か、ランディ・ニューマンがいい人なのか気難しいのか皮肉屋なのか分からなくなってきました。

ちなみにワタクシが好きなランディ・ニューマンの映画音楽は、 『かけひきは、恋のはじまり』(08)です。


『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』(17)のピアノソロ音楽もよかったですね。。

『マリッジ・ストーリー』オリジナル・サウンドトラック(TOWER RECORDS)
音楽:ランディ・ニューマン
発売日:2020/02/26
品番:RBCP-3358
価格:2,400円(税抜)

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