『ザ・ファン』のサントラ盤にアルバム未収録曲を追加して拡張版サントラを自作した話

以前からやろうやろうと思っていながら、面倒くさくて先送りしていた『ザ・ファン』(96)の拡張版サントラ作りを実施しました。
最近ザ・シネマで放送していたし、サントラ盤を棚から取り出して久々にハンス・ジマーの19分のスコアメドレー”Sacrifice”を聴いたら、重厚で凝ったアレンジの力作スコアだったので、せっかくだからこの勢いでやってしまおうと思い立った次第です。

まずサントラ盤の収録曲はこんな感じ。


この時期TVT Soundtraxから発売されたサントラに顕著なのですが、劇中使用曲の中に未使用曲(インスパイアソング)を数曲忍ばせてます。そして権利関係の都合で入れられなかった歌曲がいろいろと。今回はそれを補完していきます。

その1:ギル・レナードの”幸せだった頃”を象徴するローリング・ストーンズの曲

劇中ではローリング・ストーンズの曲が効果的に使われていますが、ストーンズの曲は「仕事もプライベートもどん詰まりの窮地にいるギル(ロバート・デ・ニーロ)にとって数少ない心の拠り所」という重要な役割を果たしています。彼の幸せだった頃を象徴する曲なのかもしれません。
だから劇中でストーンズの曲が流れている時のギルはテンション高めでウッキウキ。ストーンズ世代ではない自分の息子や、誘拐したボビーの息子にストーンズの曲解説を一方的に聞かせるギルの姿が痛々しいです。

というわけで劇中で使われたストーンズの曲は以下の通り。

アルバム「Beggars Banquet」から”Sympathy for the Devil”

アルバム「Tattoo You」から”Start Me Up”

アルバム「Let It Bleed」から”Gimme Shelter”

アルバム「Some Girls」から”Shattered”

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高橋ユキヒロ LIVE 2018 “Saravah Saravah!”のBlu-rayを購入しました。

幸宏さんのデビューアルバム”Saravah!”完全再現ライブのブルーレイを買いました。

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買ったからには映像を見て画質について書くべきなのでしょうけれども、これが自分にとって最後に観た幸宏さんのライブになってしまったので、正直なところ今の時点ではまだ映像を観るのがつらいです。たぶんブルーレイでライブの映像を鑑賞するのはもうしばらく経ってからになると思います。後述のライブ盤に同梱のDVDでは何度も観ていたし、2019年9月の幸宏さんと林立夫氏のトークイベントにも行ったのですが。

観る気が起きないのになぜブルーレイを買ったんだと思われそうですが、いつか気持ちの整理がついた時、幸宏さんの音楽を聴いて幸せだった頃を振り返りながらライブの映像を観る日が来るだろうと思ったからです。
その頃になってブルーレイを買おうと思っても品切れになっている可能性が大なので、せめて製品だけでも手に入るうちに買っておこうと考えたのでした。
ちなみにブルーレイに同梱のブックレットに載っている幸宏さんとKYONさん、佐橋さんの鼎談はCD+DVD盤のものと同じでした。

“Saravah Saravah!”のライブ盤は2019年に購入済みで、幸宏さんが亡くなるまでは毎週のように聴いていました。こちらも亡くなってからは聴くと悲しくなるのでちゃんと聴けていません…。試しに”Elastic Dummy”を聴いたら、胸が締め付けられるような感覚になったので、たぶんまだアルバムをフルには聴けない気がします。

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YUKIHIRO TAKAHASHI LIVE 2018 SARAVAH SARAVAH! [CD+DVD]- TOWER RECORDS


このライブ盤が出た時も「なぜ同梱の映像ソフトはブルーレイじゃなくてDVDなのか」という声も多かったような記憶があります。いずれブルーレイでリリースする予定が当初からあったのか、幸宏さんが亡くなったので追悼の意味で急遽リリースすることになったのか、末端リスナーの自分には分かりませんが。

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最近買ったサントラ盤(『カンバセーション…盗聴…』リマスター盤, 『ゴッドファーザー』公開50周年記念リマスター盤)

先日ツイートしたとおり、Silva Screen Recordsからリリースになった『カンバセーション…盗聴…』(74)のリマスター盤サントラを買いました。
Intradaからサントラが発売になったのが2002年だから、もう20年以上経ったんですねぇ。確か自分が初めて買ったIntradaのサントラだったと思います。

今回のリマスター盤はデジパック仕様。
盤面が録音テープのリールのデザインになっているのがよい感じです。
リマスター盤というだけあって、音質もなかなかよくなっているという印象。
Intrada盤よりピアノの音が気持ちクリアになっているような気がします。

それにしてもデヴィッド・シャイアの物憂げなピアノ劇伴はいつ聴いても素晴らしい。スリラー映画でこういう劇伴を聴かせる作品は近年めっきり少なくなっていて、「ピアノだけのスコア」となると『ザ・ファーム/法律事務所』(93)ぐらいなんじゃないかと思います。

もっとも、低予算のテレビ映画の作曲を続けていたシャイアは、「コッポラが監督するメジャースタジオの映画だから、潤沢な予算でオーケストラ音楽が書けるぞ」とワクワクしていたのに、コッポラから「この映画ではオーケストラよりピアノソロがふさわしいと思う」と言われて当初かなりガッカリしたそうですが。

そしてドキュメンタリー映画『ようこそ映画音響の世界へ』(19)を観たあとだと、音響編集者のウォルター・マーチがテープ操作した曲や、シンセ奏者のクラーク・スパングラーがピアノの音をひずませた曲のようなサウンドデザイン系の劇伴がとても面白く聞こえてくる。音がよくなったアルバムで聴く音響系スコアも実に味わい深い。

ではリマスター盤を買ったらもうIntrada盤には用がないかというと、決してそうではありません。
デヴィッド・シャイアとウォルター・マーチ、フランシス・フォード・コッポラのセルフライナーノーツが読めるのはIntrada盤だけだからです(今回のリマスター盤のライナーは別なライターが書いてます)。自分にとってはどちらも大切なサントラです。

The Conversation OST (2023 Remaster) – amazon
The Conversation OST (2023 Remaster) TOWER RECORDS

で、コッポラ繋がりと言うことで、昨年の大晦日に届いた『ゴッドファーザー』(72)の公開50周年記念リマスター盤もご紹介します。

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BANGER!!!コラムの補足/『フリードキン・アンカット』を見て分かってきたフリードキン監督の為人(ひととなり)

フリードキン・アンカット(Amazonプライムビデオ)

先日、BANGER!!!でウィリアム・フリードキン監督作品の音楽についてコラムを書きました。

鬼才、それとも奇人? 孤高の映画監督ウィリアム・フリードキンの音楽世界を『恐怖の報酬』ほか代表作から振り返る
https://www.banger.jp/movie/65959/

今月のBANGER!!!でなにを書こうかなと思っていたのですが、ムービープラスで『恐怖の報酬 【オリジナル完全版】』(77)とドキュメンタリー『フリードキン・アンカット』(18)の放送があるし、自分もフリードキン監督作のサントラを8種類くらい持っていたので、せっかくだからこの機会に音楽についてなにか書くかと思った次第です。

大体のことはBANGER!!!で書いたのですが、字数の都合や話の趣旨から逸れるので書けなかったネタがいくつかあったので、当方のブログで少し補足させて頂きます。

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最近買ったサントラ(『Stillwater』『ミッドナイト・スカイ』『エイリアン』2枚組完全盤)

東京オリンピックの競技をテレビで見る気にもなれず、世の中の状況がひどすぎてプロ野球の試合(オールスター戦とか侍ジャパンの練習試合)すら見る気がなくなってきた今日この頃。心の支えはもっぱら映画、読書、音楽鑑賞、ときどきEテレということで、いろいろサントラ盤を買いました。

■その1:『Stillwater』(21)

『スポットライト 世紀のスクープ』(15)のトム・マッカーシー監督最新作、『Stillwater』のサントラ。音楽担当がマイケル・ダナさんということで即購入。ダウンロード版のみのリリース。

マイケルさんらしいミニマルなピアノのフレーズが印象的なスコアですが、今回はギター/撥弦楽器と打ち込みのリズム(低音)が結構前面に出ていて、サスペンススコアの要素も強め。ギターを多めに使ったのは、マット・デイモンが演じる主人公のキャラクターを反映した結果でょうか。

『スポットライト』はハワード・ショア、『靴職人と魔法のミシン』(14)はジョン・デブニー&ニック・ウラタ、『WIN WIN』(11)はライル・ワークマン、『扉を叩く人』(07)はヤン・A.P・カチュマレクということで、マッカーシー監督はまだ特定の作曲家を贔屓にしていないようですが、マイケルさんとも今回だけなのか、次作でも組むのか注目したいところです。

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