劇伴の収録時間約47パーセント増、ボーナストラック3曲追加。『クリムゾン・タイド』拡張版サントラを買ってみた。

『バックドラフト』(91)、『ザ・ロック』(96)の拡張版サントラが出たのだから、『クリムゾン・タイド』(95)もそろそろ拡張版サントラが出ていい頃ではないのか? 今年で公開30周年なんだし…などとSNSに投稿していたら、本当にIntradaから発売になってしまいました。

1990年代にハンス・ジマーの音楽をリアルタイムで体験してきた身としては、これはもう買うしかないだろうということで速やかに購入いたしました。

Crimson Tide (Music from the Original Motion Picture: Intrada) – TOWER RECORDS

今回のIntrada盤はCD2枚にまたがってジマーさんの劇伴を13曲と、ボーナストラックとしてコンサート用組曲のデモ音源を1曲、劇伴の映画で使用されたバージョンを2曲収録しています。

劇伴の収録時間は88分21秒、ボーナストラックが16分37秒で、合計104分58秒でした。

当時Hollywood Recordsから発売になったサントラ盤が収録時間60分だったから、ボーナストラックを除いた劇伴だけで言えば約47パーセント増量という計算でしょうか。通常版サントラのリンクは下記の通り。

Crimson Tide (Music from the Original Motion Picture: Hollywood Records) – amazon music

なお通常盤の収録曲は以下のような構成でした。

  1. Mutiny (8:57)
  2. Alabama (23:49)
  3. Little Ducks (2:02)
  4. 1SQ (18:03)
  5. Roll Tide – Includes Hymn”Eternal Father Strong To Save” (7:33)

これは「映画で使われた劇伴をサントラ盤のために編集した構成」になっているので、Intrada盤では構成がガラッと変わっています。しかし今回も”1SQ – Crisis Averted”が18分52秒あったり、”Mutiny/2nd Attack – Bilge Bays”が16分7秒あったり、長尺曲は健在でした。
“Little Ducks”は今回も尺的にほぼ変わらずといった感じですが、”Alabama”という曲はなくなっている(劇伴として解体されている)し、”Mutiny”と”Roll Tide”も同じ曲名こそあれど構成が変わっているので、旧盤を聴き慣れた方はその違いを確かめながら聴くという楽しみがあります。

続きを読む

BANGER!!!で書いた『ジェイコブス・ラダー』紹介コラムの補足/モーリス・ジャールの音楽をさらに深く掘り下げてみる。

10月17日から『ジェイコブス・ラダー』(90)4Kレストア版のリバイバル上映が始まるということで、BANGER!!!で作品紹介コラムを書きました。

『チェンソーマン』作者を魅了した“悪魔&地獄”のビジュアルとは?悪夢的音楽も必聴『ジェイコブス・ラダー』4K上映 | https://www.banger.jp/movie/151729/

1990年代の作品なので既にネタバレ/考察サイトなども多数見受けられますが、それでも当方は自分のコラムの中でネタバレになるようなことを書くのは嫌だったので、見どころをピンポイントでご紹介しつつ、物語の核心に触れることは極力書かなかったつもりです。個人的には何よりもまずモーリス・ジャールの音楽についてたくさん書きたかったですし。

そんなわけで、当方のブログではジャールの劇伴についてもう少し掘り下げていきたいと思います。

Jacob’s Ladder (Original Motion Picture Soundtrack / 30th Anniversary Expanded Edition) – amazon music

『ジェイコブス・ラダー』の劇伴では”Electronic Ensemble”としてマイケル・ボディッカー、マイケル・フィッシャー、ラルフ・グリアソン、リック・マーヴィン、ジャッド・ミラー、ナイル・スタイナーの名前がクレジットされていますが、特に重要なのがボディッカーとスタイナーの二人。

Witness (Original Motion Picture Soundtrack) – amazon music

ボディッカーは『刑事ジョン・ブック 目撃者』(85)の劇伴でシンセサイザー演奏を担当して以来、1980年代~1990年代の”エレクトリック・ジャール”の作品に欠かせないシンセ奏者です。
そしてスタイナーもEVI(Electronic Valve Instrument=電子管楽器)の発明者として知られる管楽器奏者で、本作の前にもジャールの『刑事ジョン・ブック』や『モスキート・コースト』(86)、『追い詰められて』(87)のレコーディングに参加していました。

つまり『ジェイコブス・ラダー』の音楽は、ジャールが『刑事ジョン・ブック』や『追いつめられて』などでタッグを組んだ腕利きシンセ奏者たちと共に作り上げたものということになるわけです。

続きを読む

『機動警察パトレイバー the Movie』『機動警察パトレイバー2 the Movie』リバイバル上映の機会にサントラ盤をより深く味わってみる。

今月は『機動警察パトレイバー the Movie』(89)と『機動警察パトレイバー2 the Movie』(93)のリバイバル上映があるそうです。

【劇パト1・2連続リバイバル!】<「劇場公開版」音声>&<4K版>での全国リバイバル上映決定!
https://patlabor.tokyo/news/1621

『パトレイバー』は我が青春時代の思い出の作品でして、確か「B-CLUB」を購読していた友人に「『パトレイバー』面白いよ!」と勧められたんだったかな。勧められるがままOVAシリーズ(いわゆる「アーリーデイズ」)を観たら一気にハマってしまったという。
『うる星やつら』の声優さん(古川登志夫さんや千葉繁さん、二又一成さん、池水通洋さんなど)が大勢出ていたから、あのアニメのノリで観られたことも大きかった。

当時の自分は小学校高学年か中学1年生ぐらいで、コンピューターの知識も大して持っていなかった。ファミリーベーシックすらロクに触ったことのないマイコン音痴でした。
だから劇場版第1作を観たときはコンピューター犯罪については仕組みがピンと来ない部分が多く、むしろ聖書の引用のほうが興味があった(通っている小学校がミッションスクールだったから)。
それでも「HOS」の謎解きドラマには見入ってしまったし、レイバーによるアクションも大いに楽しみましたが。

後年パソコンを使うようになってから、「なんて先見性のあるアニメだったんだ!」と作品の本質を理解しました。
自分がWindows UpdateやOSのアップデート、ソフトウェア(アプリ)の更新にすぐ飛びつかず、2週間くらい様子を見てから実施するようになったのは、ほかならぬ劇場版第1作の影響です。HOSに隠された恐ろしい仕様を目の当たりにして「詳細がよくわからない新しいソフトウェアはすぐインストールしないほうがいい」と思うようになったのでした。そういう意味ではパソコンを使うためのよい勉強になった作品でもありました。コンピューター用語とかの知識が身につきましたからね。

劇場版第1作はビデオ(VHS)を買って何度も観ましたし、サントラ盤も繰り返し聴きました。確か自分が初めて買った川井憲次氏のサントラがこれだったと思います。

機動警察パトレイバー メモリアル・コレクション・シリーズ PATLABOR ORIGINAL SOUNDTRACK ALBUM VOL.5“INQUEST” – amazon

続きを読む

10月に『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』 4Kリマスター版の復活上映があるのでサントラ盤の思い出話など。

10月31日から2週間限定で『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(95)の4Kリマスター版復活上映があるらしいです。

【公開30周年】「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」4Kリマスター版、10月31日からリバイバル上映 | 映画.com https://eiga.com/news/20250908/23/

映画版『攻殻機動隊』が公開になった頃といえば、当時の自分は某仙台私立高校に通う高校生で、仙台駅東口のいまは無き映画館、シネアートで上映がありました。
小さい映画館でスクリーンは2つしかなかったから、上映回数はそれほど多くなかったのかな。ちょうどいい時間の上映回がなくて、確か学習塾(某予備校)の授業が終わってから夕方の回にすっ飛んでいったのを憶えています。

コンピューターに関しては全くの無知で、高校の哲学の授業もあまり興味がなかった当時の自分にはテーマが難解すぎて、どれほど内容を理解できていたかは分かりません。

まあ自分が映画を見終わったあと、ほかのお客さんも呆然とした感じで退席していったのを憶えているので、たぶん「で、結局どういうことなの?」というような反応だったのだと思います。その後映画経験値が上がってからはテーマを理解できるようになりましたが。

そんな当時の自分でも、感覚的に「これはすごいぞ」と思ったものがありました。
川井憲次氏の劇伴です。

『GHOST IN THE SHELL-攻殻機動隊 2.0』ORIGINAL SOUNDTRACK – amazon
攻殻機動隊2.0 ORIGINAL SOUNDTRACK<通常盤> – TOWER RECORDS

続きを読む

『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』のサントラ盤を買ったので雑感。

先月の話になりますが、La-La Land Recordsから2,000枚限定でリリース発売になった『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』(25)のサントラ盤を買いました。CD2枚組、総収録時間は120分強。Disc 1もDisc 2も収録時間は60分前後でした。

【輸入盤国内品番】『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』オリジナル・サウンドトラック(amazon)
【輸入盤国内品番】『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』オリジナル・サウンドトラック(TOWER RECORDS)
Mission: Impossible – The Final Reckoning<限定盤/輸入盤> (TOWER RECORDS)

オリジナル・サウンドトラック ミッション・インポッシブルファイナル・レコニング<完全限定盤/カラー・ヴァイナル> (TOWER RECORDS)
Mission Impossible: The Final Reckoning (Analog) – TOWER RECORDS

曲を聴いたらすぐブログに何か書こうと思ったのですが、仙台フィルの『機動戦士ガンダム』シリーズ ~宇宙世紀コンサート~を聴きに行ったら、つい余韻を味わいたくなってガンダム関連のサントラを何枚も聴きまくってしまったのと、雑感とはいえ『ファイナル・レコニング』の劇伴もちゃんと聴かないと何も書けないので、2週間ぐらいアルバムを聴いていたら9月になってしまったというわけです。

…というわけで今回の劇伴を聴いて感じたことを書きます。

続きを読む