追悼 リー・タマホリ監督 個人的に好きだった作品を振り返る(その1:『狼たちの街』『ザ・ワイルド』)

先日、ネットの記事でリー・タマホリ監督の訃報に接しました。
享年75。まだそんな歳でもないのに…と思ったら、パーキンソン病を患っていたらしい。

この方の作品は『狼たちの街』(96)を観てからずっと注目していて、『デビルズ・ダブル -ある影武者の物語-』(11)まで監督作を欠かさず観ていたのですが、やはり2006年に起こしたやらかし(=LAで女装して覆面警察官に性的サービスを提供したことで逮捕)が痛かった。「50代にもなって何やってんですかタマホリさん…」と当時の自分も頭を抱えたものです。

まあ暴行事件とかではないので刑は軽かったらしく、3年間の保護観察処分+ハリウッドの街路清掃を含む15日間の社会奉仕活動従事で済んだようで、翌年にはニコラス・ケイジ主演で『ネクスト』(07)を撮っていました。
しかし順風満帆だったハリウッドでのキャリアにケチがついたのは確かであり、この一件がなければ2010年代にもっと大作映画のオファーが来ていたのかも…と思うと、タマホリ監督には品行方正でいてほしかった(近年は母国ニュージーランドで映画を撮っていた模様)。

ちなみにタマホリ監督が上記の事件を起こしたとき、タマホリ監督の名前を茶化して下品なジョークを披露していた映画評論家がいて、自分はこの人が大嫌いになりました。アントン・イェルチンが亡くなったときに名前で下品なジョークを言っていた人もいましたが、同じ人だったかもしれません。

閑話休題。

そんなわけで、今回のブログではタマホリ監督を偲んで、当方の好きな作品を振り返っていきたいと思います。

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劇伴の収録時間約47パーセント増、ボーナストラック3曲追加。『クリムゾン・タイド』拡張版サントラを買ってみた。

『バックドラフト』(91)、『ザ・ロック』(96)の拡張版サントラが出たのだから、『クリムゾン・タイド』(95)もそろそろ拡張版サントラが出ていい頃ではないのか? 今年で公開30周年なんだし…などとSNSに投稿していたら、本当にIntradaから発売になってしまいました。

1990年代にハンス・ジマーの音楽をリアルタイムで体験してきた身としては、これはもう買うしかないだろうということで速やかに購入いたしました。

Crimson Tide (Music from the Original Motion Picture: Intrada) – TOWER RECORDS

今回のIntrada盤はCD2枚にまたがってジマーさんの劇伴を13曲と、ボーナストラックとしてコンサート用組曲のデモ音源を1曲、劇伴の映画で使用されたバージョンを2曲収録しています。

劇伴の収録時間は88分21秒、ボーナストラックが16分37秒で、合計104分58秒でした。

当時Hollywood Recordsから発売になったサントラ盤が収録時間60分だったから、ボーナストラックを除いた劇伴だけで言えば約47パーセント増量という計算でしょうか。通常版サントラのリンクは下記の通り。

Crimson Tide (Music from the Original Motion Picture: Hollywood Records) – amazon music

なお通常盤の収録曲は以下のような構成でした。

  1. Mutiny (8:57)
  2. Alabama (23:49)
  3. Little Ducks (2:02)
  4. 1SQ (18:03)
  5. Roll Tide – Includes Hymn”Eternal Father Strong To Save” (7:33)

これは「映画で使われた劇伴をサントラ盤のために編集した構成」になっているので、Intrada盤では構成がガラッと変わっています。しかし今回も”1SQ – Crisis Averted”が18分52秒あったり、”Mutiny/2nd Attack – Bilge Bays”が16分7秒あったり、長尺曲は健在でした。
“Little Ducks”は今回も尺的にほぼ変わらずといった感じですが、”Alabama”という曲はなくなっている(劇伴として解体されている)し、”Mutiny”と”Roll Tide”も同じ曲名こそあれど構成が変わっているので、旧盤を聴き慣れた方はその違いを確かめながら聴くという楽しみがあります。

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深夜テレ東放送記念(?) 『コンスタンティン』の音楽はなぜブライアン・タイラー&クラウス・バデルトになったのかを振り返ってみる。

11月アタマの3連休にテレビ東京「サタシネ」のスペシャル枠で『ディアボロス/悪魔の扉』(97)の翌日に『コンスタンティン』(05)の放送があったそうで、これらの映画を愛する当方としては「キアヌと悪魔」特集放送に嬉しくなりました。まあ地域的に「サタシネ」は視聴できない身ではあるのですが。

せっかくなので、以前低ビットレートでウォークマンに取り込んでいた『コンスタンティン』のサントラの音源データをビットレートの数値を上げてウォークマンに入れ直した、というのは先日Xに投稿したとおりです。

この際だから、映画公開当時に自分で調べていた「なぜこの映画の音楽はブライアン・タイラーとクラウス・バデルトの共同作曲名義になったのか?」という件についてブログでまとめてみようと思います。

CONSTANTINE (Original Motion Picture Score Soundtrack) – amazon music

『コンスタンティン』は当初ブライアン・タイラーが単独で劇伴の作曲を手掛けることになっていました。これは当時タイラーの公式サイトでもそういう情報が出ていたし、IMDbでもそのように記載されていたから間違いありません。で、しばらく経ったら(1,2ヶ月くらいだったかな)バデルトの名前が併記されていたと。

その間に何があったかと申しますと、簡単に言ってしまえば「スタジオの幹部から”音楽がダークすぎる”とダメ出しをされた」のだそうです。タイラー自身がどこかのインタビューでそう語っていました。その記事はまだネット上に残ってるかな…?

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『アイランド』の20周年リマスター拡張盤サントラを購入したので雑感。

先日、La-La Land Recordsから3,000枚限定でリリースになった『アイランド』(05)の公開20周年記念盤サウンドトラックアルバムを買いました。
「気が向いたときにブログで雑感を書けばいいや」と思っていたら、10月20日(月)にNHK BS「プレミアムシネマ」で放送があるということだったので、せっかくだからこのタイミングに合わせてブログを書こうと思い、急いで書きました。

【輸入盤国内品番】アイランド <リマスター拡張盤>(サウンドトラック)- amazon
オリジナル・サウンドトラック アイランド リマスター拡張盤(輸入盤国内品番)- TOWER RECORDS
The Island (20th Anniversary Remastered and Expanded Edition)<限定盤> – TOWER RECORDS

The Island (Original Motion Picture Soundtrack) – amazon music(旧Milan Records版)

映画公開当時Milan Recordsから出ていた通常盤のサントラは全15曲で収録時間が約56分。
劇伴集のサントラは40分前後のものが多かったので、スティーヴ・ジャブロンスキーの劇伴が14曲/50分近く聴けるこのアルバムは割と満足度が高かった(The Prom Kingの”Blow”をアルバム15曲目に収録)。なのでこの20年間結構よく聴いたサントラでした。

そして今回のCD2枚組La-La Land盤はというと、Disc 1とDisc 2にまたがって”Score Presentation”(映画で使われたバージョンの劇伴)を40曲収録し、さらにDisc 2には劇伴の別バージョンや別ミックスを”Additional Music”として収録。
映画の中で使われていた劇伴は100分くらいという計算になるのかな。本編が2時間16分だから分量的にそんな感じか。

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BANGER!!!で書いた『ジェイコブス・ラダー』紹介コラムの補足/モーリス・ジャールの音楽をさらに深く掘り下げてみる。

10月17日から『ジェイコブス・ラダー』(90)4Kレストア版のリバイバル上映が始まるということで、BANGER!!!で作品紹介コラムを書きました。

『チェンソーマン』作者を魅了した“悪魔&地獄”のビジュアルとは?悪夢的音楽も必聴『ジェイコブス・ラダー』4K上映 | https://www.banger.jp/movie/151729/

1990年代の作品なので既にネタバレ/考察サイトなども多数見受けられますが、それでも当方は自分のコラムの中でネタバレになるようなことを書くのは嫌だったので、見どころをピンポイントでご紹介しつつ、物語の核心に触れることは極力書かなかったつもりです。個人的には何よりもまずモーリス・ジャールの音楽についてたくさん書きたかったですし。

そんなわけで、当方のブログではジャールの劇伴についてもう少し掘り下げていきたいと思います。

Jacob’s Ladder (Original Motion Picture Soundtrack / 30th Anniversary Expanded Edition) – amazon music

『ジェイコブス・ラダー』の劇伴では”Electronic Ensemble”としてマイケル・ボディッカー、マイケル・フィッシャー、ラルフ・グリアソン、リック・マーヴィン、ジャッド・ミラー、ナイル・スタイナーの名前がクレジットされていますが、特に重要なのがボディッカーとスタイナーの二人。

Witness (Original Motion Picture Soundtrack) – amazon music

ボディッカーは『刑事ジョン・ブック 目撃者』(85)の劇伴でシンセサイザー演奏を担当して以来、1980年代~1990年代の”エレクトリック・ジャール”の作品に欠かせないシンセ奏者です。
そしてスタイナーもEVI(Electronic Valve Instrument=電子管楽器)の発明者として知られる管楽器奏者で、本作の前にもジャールの『刑事ジョン・ブック』や『モスキート・コースト』(86)、『追い詰められて』(87)のレコーディングに参加していました。

つまり『ジェイコブス・ラダー』の音楽は、ジャールが『刑事ジョン・ブック』や『追いつめられて』などでタッグを組んだ腕利きシンセ奏者たちと共に作り上げたものということになるわけです。

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