『Modi, Three Days on the Wing of Madness』のサントラ盤を購入したので雑感。

『ブレイブ』(97)以来実に27年ぶりとなるジョニー・デップ監督作『Modi Three Days on the Wing of Madness』(25)。
サントラがデジタル/アナログ盤だけでなくCDでも発売になるとのことで買ってみました。

Modi, Three Days on the Wing of Madness The Original Motion Picture Soundtrack – amazon music
Modigliani: Three Days On The Wing Of Madness (CD) – TOWER RECORDS
Modigliani: Three Days On The Wing Of Madness (Analog) – TOWER RECORDS

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もともとはアル・パチーノが同名の舞台劇を観て以来長年映画化を進めていた作品だそうで、『フェイク』(97)でデップと共演していた頃、パチーノがデップに「モディリアーニ役を演じてほしい」と言っていたそうな。
その後映画化の話は立ち消えとなり、20年以上経ってからデップの元に突然パチーノから電話がかかってきて、「あの話を憶えてるか? モディリアーニの映画は君が監督すべきだと思う」と言われたとのこと。

この唐突さが実にアル・パチーノらしくて素敵です。

パチーノおじさまは『フェイク』の撮影中もデップのことを気に入っていたようだし、こういった経緯を知ると本作にパチーノが出ていることにも納得がいきました。

で、サントラの話に進めさせて頂くと、デップは『ブレイブ』でイギー・ポップに音楽制作を依頼するという型破りな人選を見せてくれました(まあイギーと友達だったからなのですが。『デッドマン』(97)にも特別出演していたし)。
だから今回も普通のモディリアーニの伝記映画向け音楽にはならないだろうと思い、それが面白そうだからという理由で映画を観る前にサントラを購入したわけですが、確かにオーソドックスな内容ではなかったのでした。

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「光明を見出した瞬間」を捉えた『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』のイラン・エシュケリの音楽

ランブリング・レコーズ様のご依頼で、映画『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』(23)のサントラ盤に音楽解説を書かせて頂きました。スコア作曲はイラン・エシュケリ。

『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』オリジナル・サウンドトラック – amazon
オリジナル・サウンドトラック ハロルド・フライのまさかの旅立ち – TOWER RECORDS

ワタクシは『レイヤー・ケーキ』(04)から20年くらいエシュケリの音楽を聴いてきて、『47RONIN』(13)と『映画 ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム』(15)のサントラ盤にも音楽解説を書いた”エシュケラー”だったりもするのですが、10年くらい前まで「この人の代表作は何ですか?」と言われると少々返答に困っておりました。

『キック・アス』(10)はヘンリー・ジャックマンやジョン・マーフィーなど4,5人くらいでスコアを作曲していたから代表作とは言いがたいし、『ハンニバル・ライジング』(07)もインパクトが弱い。『47RONIN』に至っては「ああ、アレですか…(苦笑)」という作曲者に対して失礼な反応が返ってくる。その反応はいかがなものか。

でも今は「『ゴースト・オブ・ツシマ』(20)の音楽の人です」というと大体納得してくれるので、実によい感じです。

『ゴースト・オブ・ツシマ』オリジナル・サウンドトラック (amazon)
『ゴースト・オブ・ツシマ』オリジナル・サウンドトラック – TOWER RECORDS

『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』の映画の内容については、BANGER!!!のコラムでそこそこ詳しくご紹介致しましたので、こちらのブログではエシュケリの音楽についてもう少し深く掘り下げていこうかなと思います。

「タイパ」って何?800キロ“歩いて”会いたい人がいる!『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』は「ゴースト・オブ・ツシマ」作曲家による音楽も必聴 | https://www.banger.jp/movie/115755/

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『秘密への招待状』のBANGER!!!コラムの補足的なお話(エンディングテーマ”Knew You for a Moment”の歌詞とか)

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、映画『秘密への招待状』(19)のサントラ盤に音楽解説を書かせて頂きました。
音楽担当は弊社リリース作品「ケルティック・ロマンス」でもおなじみのマイケル・ダナ。

今回もサントラ盤の差込解説書用に、マイケルさんから話を聞くことが出来ました。
昨年インタビューを申し込んだ時、アメリカはちょうど感謝祭シーズンだったのですが、なんとか締め切り期限に間に合わせて回答して下さいました。

そんなわけで『秘密への招待状』の音楽に関しては差込解説書で詳しく説明させて頂きましたし、先日BANGER!!!のコラムでもダイジェスト的にざっくりご紹介したので、正直ブログで書くネタがもう残っておりません。。

育ての親J・ムーア&生みの親M・ウィリアムズ競演!あのマッツ主演作をリメイク『秘密への招待状』の音楽が複雑な“親の心”を映し出す
https://www.banger.jp/movie/52124/

まあこちらのブログで私見を交えてもう少し突っ込んだ分析をさせて頂くならば、今後しばらく家族ドラマの音楽は、この映画のようにあまり規模の大きくないオーケストラがトレンドになっていくのではないかなと思います。
もともとマイケルさんはアトム・エゴヤン監督作品でこういうタイプのスコアを作曲していましたし、ジュリアン・ムーア出演作で言えば、イラン・エシュケリの『アリスのままで』(14)もピアノ四重奏のスコアだったし、ランディ・ニューマンの『マリッジ・ストーリー』(19)も本人が「室内楽規模のオーケストラ」とライナーノーツで説明していたし、同じニューマンの『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』(17)に至っては全編ピアノ曲だったことからも、その傾向が見えてくるのではないかと。

■以前のブログ
『マリッジ・ストーリー』音楽解説余話 ごく私的なランディ・ニューマン音楽遍歴
https://www.marigold-mu.net/blog/archives/10386

さて今回のブログでは、字数の都合で差込解説書やBANGER!!!コラムで書ききれなかったトピック――『秘密への招待状』のエンディングテーマ曲について少しばかりご紹介したいと思います。

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ワタクシが選ぶ2015年のごく私的ベスト・フィルムスコア10選

shaun the sheep

ワタクシはレーベル業と並行して映画音楽解説も生業としておりますので、
先日のFilm Music Magazineのように、
今年のベスト・フィルムスコアを10タイトルと、
注目すべきニューカマーの作曲家を選出してみました。

なお「日本で今年劇場公開(もしくはDVD/ブルーレイリリース)になった作品」が対象なので、
中には製作年が2015年以前の映画もありますが、その点はご了承下さい。

 

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奥が深い音楽をリーズナブルなお値段で。 『アリスのままで』のサントラ盤

still alice

ワタクシ映画版『ひつじのショーン』(15)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きましたが、
原稿を書くにあたってアイラン・エシュケリの近作もちゃんと聴いておいた方がいいだろうと思い、
『アリスのままで』(14)のサントラ盤を購入したのでした。

ここ最近忙しかったのでブログに書く機会がなかったのですが、
『アリスのままで』のサントラがなかなかの良盤だったので、
遅ればせながらご紹介させて頂こうかなと思います。

 

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