美しい音楽が悲痛さと残酷さを際立たせる、映画『追想』のオリジナルスコアとクラシック音楽

先日、映画『追想』(17)を観てきました。

ワタクシ以前『つぐない』(07)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂いたこともありまして、
イアン・マキューアンの映画化作品に興味があったし、
ダン・ジョーンズの音楽にも興味があったので、
せっかくだから劇場で映像と音楽を楽しもうと思ったわけです。

いやそれにしてもキツい映画でした…。

ドミニク・クック監督の舞台劇を思わせる演出も見事だし、
シアーシャ・ローナンとビリー・ハウルの演技にも見入ってしまう。
クラシック音楽とロックとダン・ジョーンズのスコアの使い方もお見事でした。

「夢にまで見た愛する人との初夜の瞬間を迎えたのに、思うようにコトが進まず焦るエドワード」というシチュエーションは悲喜劇にも似たテイストさえ感じさせたのですが、
『蚤取り侍』(18)で寺島しのぶさんが発した「このヘタクソが!」にも通じる強烈なひと言を新妻フローレンスから発せられた瞬間、一気にキッツイ物語になっていきました…。
男としての存在意義をを真っ向から否定された残酷な言葉でしたねアレは…。

悪い意味で人生が一変する瞬間とは、
こうも突然に、しかも呆気なく訪れるものなのか…などと、
映画を観終わって帰宅する途中で考え込んでしまったワタクシでありました。

さて肝心の音楽についてですが、
『追想(On Chesil Beach)』のサントラは輸入盤のみのリリース。
しかしパンフレットに作曲家とバイオリン奏者のエスター・ユーのインタビュー、
音楽についても言及しているドミニク・クック監督のインタビューが載っているので、
国内盤の差し込み解説書くらい充実した音楽の情報を読むことができます。

音楽コラムも充実のパンフレットでした。

 

劇中での音楽の使い方としては、
バイオリン奏者のフローレンスを象徴する音楽として、
シューベルトやハイドン、モーツァルトなどのクラシック音楽を、
ロック青年のエドワードにはチャック・ベリーなどのロックンロールを配置して、
ダン・ジョーンズのスコアは既成曲だけでは表現できないものを描く役割を果たしています。

 

とはいえ劇中ではクラシック音楽の印象が強いし、
アルバムにはジョーンズのスコアが22曲くらい収録されているのですが、
「映画の中でそんなに使われていたかな?」と思ったら、
パンフの音楽解説によると、
どうも作曲したスコアの大半は本編で使われなかったらしいので、
ジョーンズにとってはちょっと損な役回りの仕事だったと言えなくもない。
(サントラ盤もエスター・ユーのソロアルバムみたいになってるし)

ほぼエスター・ユーのソロアルバムのような裏ジャケのアートワーク。

しかしながら、2台のピアノによるラフマニノフの「交響的舞曲」を電気的に加工した音楽演出とか、
「周囲に音の空間を作るような、あまり饒舌でない音楽」を心がけたという曲作りからは、
ジョーンズの天才的な一面が垣間見えるような気がします。
この方の音楽は『シャドウ・オブ・バンパイア』(01)もなかなかよかったですからね。

『追想』のサントラはほかの一般的なサントラと比べると、
ちょっと音量が小さめな感じで録音されているような気がします。
気のせいかな…?
何はともあれクラシック系サントラの名盤と言えるクオリティなので、
クラシック音楽がお好きな方にはオススメしたい一枚です。

 

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