最近買ったサントラ盤 『ブラッドシンプル』『ブルー・ベルベット』デラックス・エディション

「最近」という言葉を使うには少々日にちが経ってしまいましたが、Varese Sarabandeから数量限定で発売になった『ブラッドシンプル』(84)と『ブルー・ベルベット』(86)のデラックス・エディション版サントラを買いました。

『ブラッドシンプル』はVareseから『赤ちゃん泥棒』(87)とのカップリングで1987年にサントラ盤が出ていて、その時にはカーター・バーウェルのスコアを20分くらい収録していました。
で、今回のデラックス・エディションはオリジナルのマルチトラック・セッション・テープから新たにミックスを施した全13曲・約35分のスコアを収録しているとのこと。この微妙な収録時間が悩みどころでした。

「通常盤から15分増えた収録時間35分のコンパクトなサントラ盤に6,000円前後を出すのもなぁ…」と思い、昨年は購入を見送ってしまいました。
しかしザ・シネマで『ブラッドシンプル ザ・スリラー』の放送があり、放送期間中に何度も映画を観ているうちに「やっぱりバーウェルの音楽いいな」と思い、結局買うことにしたのでした。

BLOOD SIMPLE (The Delux Edition Original Motion Picture Soundtrack) – TOWER RECORDS
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ざっと聴いただけでも旧盤より音が良くなっている気がします。そしてメインテーマの憂鬱なピアノのメロディが実にバーウェルらしい。この時点で「コーエン兄弟監督作の音楽を担当するときのバーウェルの音」が確立していたと言えるでしょう。
自宅のピアノとニューヨーク工科大学にあったシンクラヴィア、知人から借りたYAMAHA DX-7やサンプラーを使って曲を作る予定だったものの、最終的にほとんどの音をそぎ落として、テキサスの風景を映し出すようなシンプルなアレンジにしたのだとか。
ちなみにスコアの中で異彩を放つ”Monkey Chant”はバリ島の民俗音楽を録音したもののようです(ガムランも鳴ってる)。

一方、『ブルー・ベルベット』デラックス・エディションのサントラ盤はCD2枚組。
Disc 1は通常盤の内容を収録しているのですが、新たにボビー・ヴィントンが歌う”Blue Velvet”が追加されて全15曲。
そしてDisc 2に「Lumberton Firewood」と名づけられた映画で使われたバージョンのスコア、別バージョンのスコア、未使用曲などを34曲収録。
デイヴィッド・リンチ(とアンジェロ・バダラメンティ)の愛好家にとって資料的価値が高いのはDisc 2ということになるのでしょう。

なぜ”Firewood”? と思いましたが、サントラ盤の英文ライナーノーツを読むと、どうもリンチとバダラメンティは生のオーケストラの響きを編集し、リンチがサウンド・デザインに組み込むことも想定して曲を作っていたらしい。つまり生のオーケストラの音を”薪”にして、サウンド・デザインという”炎”を生み出すための材料(燃料)にするつもりだったいうことでしょうか。

そんなわけで久々に『ブルー・ベルベット』の音楽を聴きましたが、ダークで妖しいサウンドに聴き惚れた次第です。流麗なオーケストラスコアに気怠いジャズ風味を加えたアレンジが秀逸。本当にバダラメンティは素晴らしい作曲家でした。『マルホランド・ドライブ』(01)でアカデミー賞の作曲賞にノミネートされなかったのが未だに納得いかない。

ちなみに『ブルー・ベルベット』のデラックス版サントラは発売当初から買おうと思っていたのですが、国内の某ショップで一向に入荷の気配がなく、「このデラックス盤は取り扱わないのかな」と諦めてしまったのでした。
その後ひっそりと入荷していた模様ですが、自分が気づいた頃には事実上の”在庫切れ”表示となる”お取り寄せ”の商品ステータスになってました。

で、例によって「あのとき買っておけばよかった…」と後悔していたところ、ダメ元で別なショップでオーダーしたら意外とすんなり買えてしまったのでした。あるところにはあるんですね…。

紆余曲折を経て手に入れたサントラなので、大事に聴かせて頂きます。

Blue Velvet (Deluxe Edition Original Motion Picture Soundtrack) – TOWER RECORDS

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