サウスボストン発、荒くれ野郎どもの人情ドラマ『クロッシング・デイ -What Doesn’t Kill You-』

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名バイプレイヤー、ブライアン・グッドマンの初監督作品。
ブライアン・グッドマンの出演作で最も有名なものといえば、
『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』(06)のルーカス・ブラックの父親役でしょうか。

イーサン・ホークが出演しているという事で、
『クロッシング』(09)と『トレーニング デイ』(01)に便乗したような邦題になってますが、
原題は『What Doesn’t Kill You』(08)といいまして、
監督・脚本を手掛けたブライアン・グッドマンの半自伝的な物語なのだそうです。
マーク・ラファロの役名がブライアンなので、ラファロのキャラがグッドマン本人という事なのでしょう。

予告編やDVDのジャケットを見ると、
「サウスボストンを舞台にしたクライム・アクション」みたいな印象を受けますが、
どちらかというとヒューマンドラマ作品です。

物心ついた時から犯罪行為に手を染めていて、
大人になってもヤクザな稼業から抜け出せない男たちの物語。
2人の主人公のうち、監督の分身である妻子持ちのチンピラがマーク・ラファロで、
ワルだけど情に厚い友人のチンピラがイーサン・ホーク。
そしてグッドマン自身も彼らの親分役で出演。
ラファロの妻役に『隣のヒットマン』(00)のアマンダ・ピート、
ラファロとホークを監視するデカ役でドニー・ウォールバーグが共演という割と豪華な顔ぶれ。

『クロッシング』、『その土曜日、7時58分』(07)に続いて、
下層階級の白人キャラを熱演するイーサン・ホークの芝居が素晴らしい。
熱演でありながら、極めて自然体に近い佇まいを醸し出しているのが凄い。
若い頃は典型的な文系青年という感じだったのに、
今やその真逆を行くようなキャラクターを完璧に自分のものにしています。

半ば開き直り気味のワルを熱演するホークに対して、
若干”引き”の演技で対峙するマーク・ラファロもこれまた巧い。
こちらはホークと違って、
意志の弱さゆえに言動が感情的になる過程を緻密に表現しております。

前述の通りドニー・ウォールバーグがデカの役を演じているわけですが、
弟のマークも『ディパーテッド』(06)でボストン警察のデカを演じてるので、
兄弟揃ってボストンのデカを演じているという楽屋オチ的な配役が楽しめます。
ドニーは本作の共同脚本も担当していますが、
何しろ若い頃の弟マークはド不良でしたから、
本作のような世界観の脚本はお手の物でしょう。

いやしかし、ブライアン・グッドマンという役者はなかなかコワモテだなーと以前から思っておりましたが、
(そういえば『ラスト・キャッスル』(01)でラファロと共演済みでした)
少なからずこういう人生を送ってきた人だったんだと分かると、
彼の持つ「スゴ味」に納得してしまいます。

原題が何だか抽象的な感じですが、
映画が中盤から後半ぐらいになってくると、
「What Doesn’t Kill You」というタイトルの意味が、
「ああ、そういう事だったんだな」と分かるのではないかと思います。
アクション映画と思って観ると違和感を覚えるかもしれませんが、
脇役も含めて出演者が全員実にいい演技をしているので、
低予算映画でもなかなか見応えがあると思います。
丁寧に作られた作品ですね。
イーサン・ホーク好きなら観る価値はあると思います。
(『イリュージョン』(11)より断然イイ出来なので)

音楽は『コンフェッション』(02:ジョージ・クルーニー監督作の方)、
『ハリウッド的殺人事件』(03)のアレックス・ウルマン(ワーマン?)。
サウスボストンが舞台という事で、
アイリッシュ・テイストを漂わせた哀愁のメロディーのスコアを書いています。
メインテーマは割と耳に残る感じで、堅実な仕事をしているように思います。

 

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