ブライアン・タイラーのスコアが竜巻の如く吹き荒れる!『イントゥ・ザ・ストーム』の音楽

into the storm

本日より劇場公開が始まったPOVディザスター映画『イントゥ・ザ・ストーム』(13)。
今回はブライアン・タイラーの音楽についてのお話です。

監督が『ファイナル・デッドブリッジ』(11)のスティーブン・クォーレで、
竜巻が吹き荒れるパニックアクション映画となれば、
これはもう音楽担当が「鳴らし屋」の異名を取るタイラーでも何ら不思議はないのですが、
POVを謳い文句にしている映画にオリジナル・スコアがついたという点が、
個人的には大変興味深いなーと思った次第です。

…と申しますのも、
POV映画というのは基本的に「擬似ドキュメンタリー」という手法を用いているため、
「映画」であることを感じさせるオリジナル・スコアは一切つけずに、
効果音・生活環境音としての既製曲(主人公がiPodとかで聴いてる曲とか)を使うぐらいに留めているわけです。
『クロニクル』(12)とか『クローバーフィールド/HAKAISHA』(08)とかもそうだったように。

でも、『イントゥ・ザ・ストーム』にはタイラーの音楽が使われている。
これが何を意味しているかというと、

この映画はPOVを使ってるけど、
擬似ドキュメンタリーじゃなくてパニック・アクション大作だよ!

…という製作サイドからの意思表示ではないかと思うのです。
ワタクシ映画本編を観ながら、
「おお、遂にPOV映画にもスコアがつく時代が来たかー」としみじみ思ってしまいました。
まぁ映画が始まって20分くらいはなかなか目立った音楽が流れず、
「あれ?本当にこれでスコア盤が出るの?」と思いましたが、
巨大竜巻が1つ、また1つと画面に登場してくると、
そこはもうタイラー・サウンドの独壇場。
例によって例の如くフルオケで派手に鳴らしてくれておりました。

こう書いてしまうと、
「ああ、いつもの鳴らしまくりのタイラーの音楽なのね」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、
これがまた思った以上にメロディーのしっかりしたスコアでして。
映画本編の音楽をしばらく聴いていると、
何度か同じ旋律が繰り返されているのが割と容易に聞き取れて、
「そうか、これがメインテーマだったのか」と理解出来るスコアに仕上がってます。
「ただ派手に鳴らすだけであまり印象に残らない曲」とはひと味違います。
こういう映画にしてはメロディーが意外とキレイなのがいい。
個人的には同じタイラーの最近の作品の中でも、
『ニンジャ・タートルズ』(14)よりこっちの方が好きですね。

ワタクシ今回こちらの作品にライナーノーツを書かせて頂いたのですが、
本国でのサントラの発売日が予定より2週間ほど遅れたせいで、
諸々の資料が出揃ったのが原稿締切の3日前だったんですね…。
締切ギリギリになってやっと収録曲が分かったのですが、
映画本編で使われた印象的なスコアはほとんど収録されてると思います。
試写を観終わって何日か経った後に音源を聴き返した時、
「あー、あの場面のあの曲もちゃんと入ってるわ」と思ったので。

映画本編だと竜巻のSEが凄まじいので、
音楽がよく聞こえなかったり、
そもそも映像が凄まじくて音楽にまで気が回らなかったりもしますので、
タイラーの音楽は是非サントラ盤で改めてじっくり聴いて頂きたいところです。

聞くところによると、
クォーレ監督は部屋の電気を消して、
律儀に目まで閉じて、
音量を上げてタイラーの音楽を聴いたらえらく感動したそうなので、
そういう鑑賞方法もアリではないかと。

『ワイルド・スピード』シリーズのような「やりすぎハードロック・スコア」とも違う、
タイラーが『イントゥ・ザ・ストーム』で聴かせるオーケストラ・スコア。
ワタクシ個人的にかなり気に入っております。

 

『イントゥ・ザ・ストーム』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ブライアン・タイラー
レーベル:Rambling Records
品番:RBCP-2791
発売日:2014/08/20
価格:2,400円(税抜)

 

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