シンフォニックでグルーヴィー。ブライアン・タイラーが『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』で目指した曲作りとは?

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先日の『キング・オブ・エジプト』に続いて、
ランブリング・レコーズ様からのご依頼で『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』(16)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。
音楽は売れっ子&イケメン映画音楽家のブライアン・タイラー。

1作目の『グランド・イリュージョン』(13)は映画もヒットしたし音楽の評価も高かったのに、
サントラはダウンロード形式のみ、しかも日本のストアでは取り扱いなしという仕様だったので、
日本のタイラーファンは激しく落胆したわけですが(自分だけか?)、
今回は無事CDアルバム形式で発売されることになりました。

 

 

今回の続編の音楽もほぼ前作のノリを踏襲した感じで、
あのメインテーマのメロディーも健在。
このシリーズのサウンドを例えていうなら、
デヴィッド・アーノルドの007映画の音楽風というか、
あるいはデヴィッド・ホルムズの『オーシャンズ11』(01)風というか、
グルーヴ感のあるベースとドラムスのリズムに乗せてオーケストラがド派手に鳴り響く、
ゴージャスでスタイリッシュでグルーヴィーなスコアになってます。
これがノリノリで最高にカッコイイんですよ。
『ワイルド・スピード』の時のようなブン回し系の鳴らし屋サウンドともひと味違います。
(あれはあれで面白いから全然オッケーなのですが)

 

タイラーさんは『グランド・イリュージョン』の音楽を作曲するにあたって、
「『ハリー・ポッター』や『ロード・オブ・ザ・リングス』のようなファンタジー・スコアに、ヘンリー・マンシーニやラロ・シフリンのような60年代風のグルーヴを掛け合わせる」
…というコンセプトを打ち出しております。

何でタイラーさんはこんな消化不良を起こしそうな組み合わせの音楽を作ろうと思ったのか。

これはワタクシの推測ですが、
恐らく『グランド・イリュージョン』シリーズでフォー・ホースメンが見せる華麗なマジックは一種の”ファンタジー”で、
そのイリュージョンを駆使して義賊的な活躍をする彼らの姿を、60~70年代に製作された粋なケイパー映画(=プロフェッショナルな犯罪集団が活躍する強盗映画の俗称)に見立てたゆえの音楽演出ではないかと思います。
「ファンタジーとクライムアクションの華麗なる融合」を音楽的に再現したと。

その結果『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』の音楽は、
オーケストラにビッグバンド・ジャズ、
フュージョン、ロック、テクノなど、
あらゆるジャンルの音楽の”粋”な部分を凝縮した、
いいとこどりの贅沢なスコアに仕上がっております。

 

自分でもいろいろやらなきゃ気が済まないタイラーさんは、
今回の『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』でも、
ギター、ベース、ドラムス、キーボード、パーカッションを自分で演奏してます。
このことによって自分で納得のいくグルーヴ感が生み出せているように感じますね。
ミキシング作業にも携わっている模様。

 

 

サントラ盤は全24曲で収録時間70分超えというなかなかのボリューム。
どの曲も聴いていて面白いというか痛快なのですが、
ワタクシのイチ押しはアルバム5曲目のSleight of Handですね。
確かコレ、ホースメンがカードマジックの技を駆使してコンピューターチップを盗む場面の曲だったと思うのですが、
「ラロ・シフリンのブライアン・タイラー・リミックス」とでもいうような、
緩急をつけたノリノリでスピード感のある音楽が6分弱堪能出来ます。
この曲が楽しすぎて、
ワタクシ延々とリピートして聴いてしまったほどです。
(フルートとチャカポコ鳴るパーカッションの競演がシフリンっぽい感じ)

キレッキレのテクノサウンドが唸る10曲目のTrifectaも面白いし、
マーベル・シネマティック・ユニバースの音楽っぽい1曲目のファンファーレも熱いし、
2曲目のちょいとリニューアルされたメインテーマ曲もカッコイイ。
さっきも書きましたが、
デヴィッド・アーノルドの007音楽や、
デヴィッド・ホルムズの『オーシャンズ』シリーズの音楽が好きな方なら、
こちらのサントラ盤も気に入って頂けるのではないかなと思います。

『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』
音楽:ブライアン・タイラー
レーベル:Rambling Records
品番:RBCP-3155
発売日:2016/09/01
価格:2,400円(+税)

 

 

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