ハリソン・フォードの家族ヒーローっぷりに拍手!『ファイヤーウォール』

今度の「日曜洋画劇場」で『ファイヤーウォール』(06)を放送するという事で、
本日はそのお話。

ランブリング・レコーズのMさんからライナーノーツの執筆依頼を頂いたのは、
2006年1月下旬の事でした。
原稿の〆切りが2/17で、
映画の内覧試写が2/10という結構ギリギリなスケジュールだったのですが、
いざ本編を観たら〆切りの事など忘れて、
二人で「いやーなかなか面白かったですねぇ」と言いながら、
しばし映画談義で盛り上がってしまったのを覚えています。

Mさん:「何か、とってもハリソン・フォードらしい映画でしたよね」

私:「そうですねぇ。やっぱりこの人は”殴る男”じゃないとダメですよね。
    何て言うか、銃を使わずに悪党を倒すキャラでないと」

Mさん:「ああ、そうですよねぇ。最後のアクションとかすごかったですもんね」

私:「あれはスゴかった。還暦過ぎた人のやるスタントじゃないですよ」

Mさん:「あと、ハリソン・フォードって家族のために闘う役がハマってますよねー。
    『パトリオット・ゲーム』(92)とか『エアフォース・ワン』(97)とか」

私:「そうそう。今回も途中から闘うオトーサンになりましたからね。痛快でしたねぇ」

・・・という感じのやり取りをした記憶があります。

 

とまぁそんなわけで、
この映画では「家族のために闘う男」フォードの姿が存分に楽しめます。
大統領を演じようが医者を演じようが、
結局最後はインディ・ジョーンズ(もしくはハン・ソロ)的なキャラになってしまうフォードですが、
今回演じるのはランドロック・パシフィック銀行のコンピュータ・セキュリティの専門家。
この映画でも、物語の途中から「これ、絶対IT系の人じゃないでしょ?」というぐらい
身体を張った活躍を見せてくれます。

本作最大の見所は、
やはり映画の終盤のポール・ベタニー対ハリソン・フォードのノーDQ戦でしょうか。
取っ組み合いやドツキ合いはもちろん、
テーブル葬、階段落ち、窓ガラス突き破りなど身体を張ったスタントで見せる見せる。
ハリソン・フォード64歳(当時)、まだまだイケてます。

一部の批評で「フォードのスタントがドタドタしていてカッコ悪い」という意見がありましたが、
どうやらこの「カッコ悪さ」も計算のうちのようです。

フォード扮するジャックは単なる中年IT系銀行マンなので、
格闘はズブの素人なわけです。
で、そんなフツーのオジサンが、
愛する家族を取り戻すため、
プロの犯罪者相手にガムシャラになって激しい殴り合いを繰り広げる、
「リアルさ」「必死さ」を出したかったとスタント・コーディネーターが語っていました。
この「カッコ悪さ」が最高に「カッコイイ」んですね。この人の場合。

ところでベタニー率いる銀行強盗一味の中に、
一部の女性映画ファンから「イケメン銀行強盗」のアダ名を頂いたリアム(フォードにミキサー/ジューサーで撲殺される人)というキャラがいるのですが、
演じているのはNikolaj Coster-Waldau(ニコライ・コスター=ワルドー)という俳優さんです。
『エニグマ』(01)とか『ウィンブルドン』(04)に出てますね。
ちょっとショーン・ビーンに雰囲気が似てるかな、と。

本作の音楽は『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(08)のアレクサンドル・デスプラが担当してます。
『ハーフ・ア・チャンス』(98)とか『スズメバチ』(02)のような前例はあったにしても、
ここまで正面切ってアクション・スコアを書ける人だとは思わなかったので、
ちょっと意外な人選でした。

音楽も「唸るストリングス!吠えるブラス!そして荒れ狂うパーカッション!」とでも言いたくなるような燃えるサウンドで、
比較的低予算で作った本作に、
予算以上のダイナミズムを持たせる事に成功しています。
物語中盤で流れる「Firewall」とか、
終盤のファイト・シーンで流れる「The Fight」あたりがベスト・スコアではないかと思います。

ちなみに映画のオープニング・タイトルで使われているのはMassive Attackの
名曲「Angel」のインスト・バージョンです。
この曲も映画によく使われますね。

サントラ盤はランブリング・レコーズより発売中。
アクション・スコア・ファンは必聴です。

 

『ファイヤーウォール』オリジナル・サウンドトラック
音楽:アレクサンドル・デスプラ
品番:GNCE3049
定価:2,625円