80年代・90年代の映画の拡張版サントラをいろいろ買いましたの巻。

去年は新旧サントラ盤が豊作だったなーという印象でしたが、今年も次から次にサントラの名盤がリリースされていて、片っ端からあれもこれもと買っていった結果、仕事場の棚の空きスペースがどんどんサントラ盤で埋まっていっている今日この頃です。

自分はどちらかというと新しい映画音楽家の方々の作品を好んで買う傾向があるのですが、過去作品の完全盤や拡張盤などもいろいろ買ってます。
映画を見始めたのが80年代半ばから90年代あたりなので、個人的に思い入れのある作品もその時期のものが多くて、80年代・90年代のサントラの拡張盤とか完全盤が出るとつい買ってしまうのです。

人によっては「え?この映画の完全盤を買うの?わざわざ高いお金を出して?」と思うような作品でも、好きな作曲家だったりするとコレクター根性を出してつい限定盤を買ってしまう。
ちなみに『キリング・ミー・ソフトリー』(02)のサントラ盤を買った時には「マジで買ったんですか?」と言われました(「パトリック・ドイルの音楽が好きなんだから別にいいでしょ」と思いましたが)。

…というわけで、今年の上半期に購入した拡張盤・完全盤は以下の通り。

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繰り返されるエレキギターのフレーズに男泣き必至。静かに熱い『オンリー・ザ・ブレイブ』の音楽

先日『オンリー・ザ・ブレイブ』(17)を観てきました。

今回は映画を観るより先にサントラを聴いておりまして、本作のジョセフ・トラパニーズの音楽は同じ消防士のドラマでも、ハンス・ジマーの『バックドラフト』(91)とはかなりタイプの異なるサウンドで、その音楽を聴いた印象から言っても「この映画、ハッピーエンドの英雄鐔ではなさそうだな」と思ったのですが、実際に本編を観てみたら当方の想像以上に悲しい結末でした。

さてそのジョセフ・トラパニーズという作曲家さん、ジョセフ・コシンスキー監督作品の常連作曲家でもあります。しかしながら『トロン:レガシー』(10)はダフト・パンクとの共同作曲とストリングス・アレンジ、『オブリビオン』(13)ではM83(アンソニー・ゴンザレス)との共同作曲とストリングス・アレンジという感じで、トラパニーズの仕事は(スコア製作への貢献度に比べると)二大エレクトロニカ・アーティストの名前の陰に隠れがちだった印象があります。

別な監督との仕事にしても、『ザ・レイド』(11)はリンキン・パークのマイク・シノダとの共同作曲だったし、『グレイテスト・ショーマン』(17)はミュージカル映画なので、どうしてもリスナーの関心は挿入歌に行ってしまってよほどのサントラマニアでなければスコアには関心を持たなかっただろうし、そのスコアもジョン・デブニーとの共同作曲だった。
『ストレイト・アウタ・コンプトン』(15)も映画の性質上ギャングスタ・ラップのほうが目立つので、やっぱりトラパニーズのスコアはサントラマニア以外にはあまり注目されなかった…と思います(ダウンロード版でスコアアルバムが出てます)。

 …とこのような状況が続いておりましたが、今回の『オンリー・ザ・ブレイブ』はトラパニーズ単独の仕事が存分に楽しめて、優れたアレンジャーでありメロディーメイカーでもある彼の才能を実感できるサントラ盤に仕上がっております。

Only The Brave (Original Motion Picture Soundtrack) – amazon music

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『アメリカン・アサシン』の音楽で重要と思われる2つのテーマ曲を読み解いてみる。

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、
『アメリカン・アサシン』(17)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。
音楽は『ゼロ・グラビティ』(13)のスティーブン・プライス。

ワタクシ、プライスのサントラ盤ライナーノーツは以前『ゼロ・グラビティ』(13)『フューリー』(14)も担当させて頂きまして、
日本盤未発売の『スーサイド・スクワッド』(16)も含めてこの方の音楽はかなり聴きこんでいるのですが、
今回もかなりの力作に仕上がっています。
登場キャラが多すぎた『スーサイド・スクワッド』よりも、
本作の方が引き締まったサウンドになっていて聴きやすいのではないか、というのが個人的な感想です。
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ジャン=ミシェル・ベルナール スペシャルコンサートに行ってきました。

先日2日ほどお休みを頂きまして、品川のスタインウェイ&サンズ東京で行われたジャン=ミシェル・ベルナールのスペシャルコンサートに行ってきました。

イベントの主催がランブリング・レコーズさんということで、アルバム「ジャン=ミシェル・ベルナール・プレイズ・ラロ・シフリン」の販促も兼ねたライブだろうなーと思ったので、当日の演奏プログラムもアルバムからの曲が多めかな、でもジャズバンド編成のアレンジの曲をピアノソロでどう演奏するのかな……などと前日まであれこれ考えていたのですが、見所満載、聴きどころ満載、それはもう素晴らしいピアノコンサートでございました。

 

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『リミット・オブ・アサシン』サントラ盤でタイラー・ベイツが奏でるユニークな音の正体はコレです、という話。

ランブリング・レコーズ様からのご依頼で、
『リミット・オブ・アサシン』(17)のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂きました。

音楽担当は『デッドプール2』(18)も好評な売れっ子タイラー・ベイツ。
そしてエンディングテーマ”God’s Gonna Cut You Down”を歌うのはあのマリリン・マンソン。
前回のブログではマンソンの曲についてあれこれ書かせて頂きました。

その前回のブログの中でも申し上げた通り、
『リミット・オブ・アサシン』の音楽についてはライナーノーツでほとんど書き尽くしてしまったため、
ブログ用のボツネタもほとんど残っていません。。
しかしサントラ盤のPRのためにももう少し何か書かなきゃイカンだろうということで、
何とかネタを絞り出してサントラ盤の聴きどころをご紹介致します。

前述のデップー2を筆頭に、
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズなど、
大作映画のフルオケ音楽を作曲する機会が多いベイツさんですが、
今回の『リミット・オブ・アサシン』は低予算アクション映画ということで、
シンセサイザーのサンプリング音源がメイン。
そこにエキゾチックな歌唱を聞かせるソロ・ボーカリストとパーカッショニスト、ベイツ自らもギターヴァイオルで参加という感じの構成になってます。

で、そのベイツさんが弾いているギターヴァイオルが本盤の聴きどころとなっているのです。

 

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