Yukihiro Takahashi Live 2009 “OUT OF HERE”

・・・というわけで、幸宏さんのライヴを観て参りました。

前回のPUPAライヴは渋谷C.C.レモンホールだったのに、ナゼに今回はSHIBUYA-AX?
と思ったのですが、幸宏さん曰く「誰が言ったのか誕生日にライヴをやろうという事になり、
6月6日に取れる会場がココしかなかった」との事でした。

「窮屈な思いをさせてしまって申し訳ありません」というような事を言っていたので、
本当はもう少し大きいハコで演りたかったのかもしれません。個人的には2時間以上
立ち見するのはちょっとツラかったです・・・。

ま、それはさておき。今回のOUT OF HEREは『BLUE MOON BLUE』、『Floating Pupa』に
続く「高橋幸宏・エレクトロニカ3部作」の最新ライヴだったわけですが、予想以上に生音率の
高い内容で、「ドラマー・高橋幸宏」を思う存分堪能出来る素晴らしい内容でした。

当日は1曲目(初お披露目曲?)のインスト・ナンバーから、幸宏さんと千住宗臣さん
(元Boredoms)のツインドラムで聴かせる聴かせる。新旧痩身ドラマー2人が織りなす
タイトでグルーヴィーなリズムが最高に気持ちよかったです。

また、今回はLITTLE CREATURESの鈴木正人さんがベーシストを務めておりまして、
『BLUE MOON BLUE』やPUPAのライヴの時に足りなかった「生ベースのうねり」が
加わった事によって、リズムがとてもフィジカルなものになっていたのもポイントです。
(PUPAの時は細野さんがゲスト出演した回もありましたが)

その結果、オリジナル・アルバムに収録されている曲も、今回のライヴでは全く違う顔を
見せているんですね。テクノ/エレクトロニカ系のライヴというより、もはやロックバンドの
ライヴではないか、と思ったぐらいです。

中でも幸宏さん&千住さんのツイン・ドラムが炸裂した”Atomic Chicken Dog”のカッコ
よさは抜群。テクノとロックとファンクの要素が融合した、最高にイカすインスト・チューンに
生まれ変わってました。Yeah!(例のかけ声)

小山田さんのノイジーなギターが唸る”Emerger”もよかったです。この曲の背景の
ビジュアル(担当は伊瀬聖子女史)もなかなかオシャレでした。

既にあちこちで公開されてますが、当日のセットリストは下記の通り。

01: Unknown (Instrumental)
02: You’ve Got To Hide Your Love Away
03: The Muse
04: The Words
05: Lay My Love
06: I Like The Wright Brothers, But No Airplanes
07: Emerger (with 小山田圭吾)
08: Out of Here (with 小山田圭吾)
09: Atomic Chicken Dog (with 小山田圭吾)
10: Indefinable Point
11: Blue Moon Blue
12: Everybody Had A Hard Year
13: My Favorite Hat
14: Scary World Theory (with Valerie Trabeljahr)
15: Out There (with Valerie Trabeljahr)
16: Meteor Rain -Leonids on the morning of November 17th-
(with Valerie Trabeljahr)

— Encore (Part 1)–
17: Happy Birthday (誕生日祝いのひとコマ)
18: Still Walking To The Beat -GND Remix- (with 小山田圭吾)
19: Where Are You Heading To

— Encore (Part 2)–
20: What The World Needs Now Is Love

— Ending (End Credits)–
Valerie

うーん、セットリストを見るだけで当日のナイスな演奏が頭の中に蘇ってきます。

アンコールの”What the world needs now is love”も、『A Night in the Next Life』の時は
アンプラグドな感じのシブーいアレンジでしたが、今回は後半からツインドラムになる粋な
アレンジで、元気ハツラツという感じでした。

今回のライヴで改めて思ったのは、最近の幸宏さんは歳を重ねる毎に若々しくなって
いるなぁ、という事でした(日本語的にかなりヘンな表現ですが)。

音楽的なアプローチはもちろんの事、ドラムを叩く機会も増えているし、若い世代のアー
ティスト(堀江さん/権藤さん/高田さんのPUPA組とか)とも親交を深めているし、何だか
すごく活き活きしているような気がするのです。途中でコンタクトがズレても、そのまま
ライヴを続行した男気もグッと来ました(「単に直す時間がなかっただけ」説もありますが)。

今回、仕事の都合などでライヴに行けなかった方は、7月のFUJI ROCK FESTIVAL ’09や
8月のWORLD HAPPINESS 2009をご覧になる事をオススメします。

きっと見に行って損はしないハズ。

  

6月6日は幸宏さんのライヴ

The Words

週末は高橋幸宏さんのライヴ”OUT OF HERE”(at SHIBUYA-AX)に行って参りますので、
誠に勝手ではございますが、6日・7日のレーベル業務はお休みさせて頂きます。

月曜には業務再開しますので、しばしお待ち下さい。

というわけで、本日は幸宏さんのニューアルバム『Page by Page』から名曲「The Words」の
PVをお送りします。当日もどんなステージになるのか楽しみです。

それにしても、日本でも(というかJ SPORTSで)早いとこ『WWE Superstars』を放送して
くれないもんでしょうか。

スーパースター同士の抗争がまるまる一回ぶんカットされるので、ストーリーは消化不良に
なるわ、何だか損した気分になるわでロクな事がないのですが。

ダメモトでJ SPORTSにリクエストしてみようかな。ま、相手にされないと思いますが。

   

Man on Wire / フィリップ・プティの人生観

・・・というわけで、前回の続きです。今回は映画本編について。

先日のブログでも少し触れさせて頂きましたが、この映画はフィリップ・プティという
フランスの大道芸人/綱渡り師のドキュメンタリー作品です。

このプティさんという方は1974年に今は無きワールド・トレード・センターのツインタワーに
ワイヤーを張り、地上からの高さ約400mの場所で長時間の綱渡り(45分間で8往復)を
敢行したというとんでもない人です。あれは「芸」というより命を懸けた「アート」です。
劇中でもWTCで綱渡りを敢行した時の写真が登場するのですが、この世のものとは思えない
美しさと、死と隣り合わせの緊張感に圧倒されてしまいます。この映像だけでも必見かと。

映画本編を見てみると、プティとその仲間たちは「WTCで綱渡りプロジェクト」を実行するため、
それはもういろんな事をやったもんだと当時を振り返っています(彼らが見せる友情もこの映画の
見所のひとつ。今は疎遠になってるっぽいけど)。

身分を偽ってWTCの情報を集めたり、内通者/協力者と連絡を取ったり、立ち入り禁止の場所に
忍び込んだり・・・と、彼らのやった事はほとんどスパイです。あるいはオーシャンズ11ならぬ
プティ’s 9とでも申しましょうか。プロの強盗集団と変わらないんじゃないかという感じです。

「そこまでして、何でこんな事をやったんですか?」と誰しも思うでしょうが、プティは
「その質問、聞き飽きた。理由なんてないんだ」と毎回答えているそうなので、本当の理由は
この先ずっと分からないままだと思います。

多分、理由なんかどうでもいいんだろうなと思います。人間、他人から見れば意味のない事とか
無謀な事にアツくなる瞬間というのが誰でもありますが、そういうものに熱中した時の自分を
振り返ってみると、そもそもの動機とか目的なんていうのは大した事じゃなかったりするわけで。

この映画で最も胸を打つメッセージは、どんな突飛な事(あるいは無謀な事)でも本気で
取り組めば、それは素晴らしいものになり得るのだという事でしょう。

たとえ誰かにとって意味のない事でも、別の誰かにとってはすごく意味のあるものだったりも
するわけで、言い換えればこの世に「意味のないもの」などないんですよ、と。だからどんな
事であれ、物事に挑戦する気持ちを忘れてはいけない、とプティさんは教えてくれているのでは
ないかなぁ、と思うのです。

こういう言葉は文化人気取りのタレントとかコメンテーターとかに言われても、イマイチ説得力に
欠けますが、プティさんに「人生は何でも挑戦する事に価値がある」と言われたら、そりゃもう
「はい、全くその通りです!」と納得してしまうしかないでしょう。やっぱり事を成し遂げた人の
言葉は含蓄と説得力があります。

映画は6/13から新宿テアトルタイムズスクエアにて公開。全国順次ロードショーで、仙台でも
8月頃に上映予定との事(詳しくは公式サイトをご覧下さい)。

それにしてもこの映画、マイケル・ナイマンの音楽と映像が絶妙にマッチしてますな。
『ピアノ・レッスン』(93)や『英国式庭園殺人事件』(82)など、極めて個性の強い映画のために
書き下ろした音楽が、綱渡り師のドキュメンタリー映像とここまで見事な融合を果たすとは、
正直驚きでした。これも選曲の妙というやつでしょうか。

  

Man on Wire / マイケル・ナイマンの音楽

manonwire

先日、綱渡り師フィリップ・プティの実像に迫る『マン・オン・ワイヤー』というドキュメンタリー映画のサントラ盤のお仕事をやらせて頂きました。

ユニバーサルミュージックからこの作品のサントラ盤がリリースになりましたが、
音楽をあのマイケル・ナイマンが担当しております。

担当、というのはちょっと適切な表現じゃないかもしれません。
と申しますのも、この映画の音楽はナイマン本人の了承を得た上で、
彼の過去音源を”再利用”する形で構成されているからなんです。

 

続きを読む

要注目の俳優、マーク・ストロング

先日『ワールド・オブ・ライズ』(08)をDVDで観たのですが、いやーヨルダン情報局の局長ハニ・サラームはクールでカッコいいですな。

砂漠のど真ん中でもダークカラーのスーツを着用。洗練された物腰と、「決して(私に)嘘をつくな」と凄みを利かせる時の不敵な存在感。CIAのエド(ラッセル・クロウ)がメタボ体型の食えないオッサンなので、ハニのカッコよさがさらに引き立ってます。

ま、結局この人がレオ様を囮にしてアル・サリームを逮捕したわけですが(看護婦さんのアイシャ誘拐を偽装したのも実はこの人)、拷問で指を潰されたレオ様を間一髪の所で救出。しまいには満身創痍のレオ様に「彼女の愛は自分で勝ち取れ」と余裕たっぷりにアドバイス。ハニ・パシャ、マジで格好良すぎます。

そのハニ・サラームを演じているのは、イギリス人俳優のマーク・ストロング(1963年生まれ)。『アンタッチャブル』(87)の頃のアンディ・ガルシアを彷彿とさせる、「端正」で「濃い」タイプの役者ですな。『シリアナ』(05)にも出ていたので、てっきり中東系の血が入っているのかと思いましたが、どうも父親がイタリア人らしいので、そっち系の「濃さ」みたいです(ちなみに本名はMarco Giuseppe Salussoliaというそうで、母親はオーストラリア系との事)。

そういえば、『リボルバー』(05)で演じた神経症のヒットマン・ソーター役も、過度な拷問に嫌気がさして仲間のチンピラを射殺するという人情味溢れる行動(?)にグッと来たし、『ロックンローラ』(08)で演じたヤクザの親分の腹心アーチー役(ナレーションも担当)もオイシイ役どころでしたなぁ。「切れ者」って点でハニ役に通じるものがあります。

『バビロン A.D.』(08)は何となく登場してあっさり消されるチョイ役でしたが、トータルで見るとよい作品/役柄に恵まれているのがこの方のポイントでしょう。

特にリドリー・スコットとガイ・リッチーにはかなり気に入られたらしく、リッチーの新作『Sherlock Holmes』(09)ではホームズの宿敵Lord Blackwood役、リドリーの次回作『Robin Hood』(10)ではSir Godfrey役を演じる予定だそうで、これはもうブレイク必至かと。こういう味のある演技巧者が脇を固めると、映画も3割増しで面白くなるなぁ、と思った次第。

他にも『サンシャイン2057』(07)とか『トリスタンとイゾルデ』(06)とか『オリバー・ツイスト』(05)にも出演しているので、気になる方はチェックしてみてはいかがでしょうか。