仙台フィルの『機動戦士ガンダム』シリーズ ~宇宙世紀コンサート~を鑑賞

先週の土曜日、仙台フィルハーモニー管弦楽団の「エンターテインメント定期」第5回にあたる『機動戦士ガンダム』シリーズ ~宇宙世紀コンサート~を聴きに行ってきました。

以前『逆襲のシャア』(88)の演奏会があったとき「え? こんないいものを演奏してくれるの?」と思ったものの、仕事の都合で聴きに行けず大変落ち込んだものです。なので今回はスケジュールを調整して万全の体制で臨みました。

交響詩 ガンダムF91 – amazon
交響詩ガンダムF91 – TOWER RECORDS

今回の演奏会の目玉は『機動戦士ガンダムF91』(91)公開時に制作されたアルバム「交響詩ガンダムF91」の完全再現演奏でした。
『F91』のサントラ盤は劇場公開当時カセットテープで買ったものの、確か『交響詩』のほうは買っていなかった気がします。後年アニメイトかどこかで『F91』のサントラをCDで買い直したとき、「こんなアルバムも出ていたんだ」と思って一緒に買った記憶があります。

機動戦士ガンダムF91 ― オリジナル・サウンドトラック – amazon
「機動戦士ガンダムF91」オリジナル・サウンドトラック – TOWER RECORDS

1990年代当時の自分は門倉聡氏の音楽をよく聴いていて、おそらく最初は『魔神英雄伝ワタル』(88)だったと思いますが、その後の『F91』とファミコンソフトの『メタルマックス』(91)の音楽が大好きでした。
『メタルマックス』はフィールドマップ移動時のBGM(戦車に乗らず徒歩での移動の曲)を聞くと、電子音がオーケストラの編曲に脳内変換されるぐらいお気に入りでした。先に『F91』のサントラを聴いていたから、そういう聴き方ができたのでしょう。

…というわけで、当日のセットリストはこのような感じでした。
コンサートタイトルの通り、宇宙世紀0079年から0153年を俯瞰するようなラインナップです。

  1. 門倉聡:交響詩「機動戦士ガンダムF91」(『機動戦士ガンダムF91』より)
  • 第一楽章 Formula 91
  • 第二楽章 Sympathy
  • 第三楽章 Noble Obligation
  • 第四楽章 Fortune
  • 第五楽章 Crying
  • 第六楽章 Battle
  1. 西脇唯、緒里原洋子:ETENAL WIND~ほほえみは光る風の中~(『機動戦士ガンダムF91』より)
  2. 松山祐士:眠りより(『機動戦士ガンダム』より)
  3. 千住明:VICTORY-G(『機動戦士Vガンダム』より)
  4. 田中公平:VII [Recorded In PLAHA] より(『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』より)
  5. 三枝成彰:マシュマー・セロ(『機動戦士ガンダムΖΖ』より)
  6. 三枝成彰:逆襲のシャア(『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』より)
  7. 三枝成彰:Symphony Z(『機動戦士Ζガンダム』より)
  8. 三枝成彰:愛の協奏曲(『機動戦士Ζガンダム』より)

アンコール

  1. 松山祐士 戦場空域(『機動戦士ガンダム』より

門倉氏の自宅から当時「交響詩ガンダムF91」のレコーディングのために書いた楽譜が奇跡的に発見され、今回の演奏会にあたって浄書したとのこと。
今回の仙台フィルの演奏は楽曲の再現度が素晴らしく、生演奏を聴いていて胸が熱くなりました。
管楽器、弦楽器、打楽器の入るタイミングもCDの音源と全く同じ。アルバムと同様に第六楽章まで38分前後で演奏していたと思います。『F91』の劇伴の特徴とも言える、同一音型の反復を多用したオーケストラサウンドが迫力満点でした。

ファーストや『Z』は”偵察”目的でモビルスーツがコロニーに侵入してきましたが、『F91』の場合はいきなり”侵攻”してくるし、クロスボーン・バンガード側が優勢なので、戦闘シーンの音楽は「敵が攻め込んでくる」という雰囲気が濃厚に出ている。
一方、地球連邦軍は大本営がC・Vの侵攻に対して全く動こうとしないので、コロニー駐留軍などは援軍も期待できない中、独自の判断で対応しなければならない。組織としては堕落しきっているものの、一部の気骨のある部隊が活躍するシーンでは、前述の鬼気迫る反復サウンドが「連邦軍人の意地」を感じさせてくれる。こういったC・V側との対比が面白い。

「侵攻」と「抵抗」を連想させる勇壮な劇伴の中で、F91を象徴する高揚感に満ちたモティーフがとても際立っている。「ガンダムがこの状況を打破してくれる」という希望を感じさせる旋律とでも申しましょうか。今回の公演でもこのテーマが会場に響き渡ったとき胸が熱くなりました。

長年過小評価されてきた感のある『F91』ですが、門倉氏の劇伴を生演奏で聴けるという大変貴重な体験ができました。

あと、後半パートで『機動戦士ガンダムZZ』(86)からマシュマー様のテーマを演奏してくれたのがとても嬉しかった。当方、マシュマー様が大好きなんですよね…。堀内賢雄氏のファンになったきっかけもマシュマー様でした。

機動戦士ガンダムZZ SPECIAL – amazon
「機動戦士ガンダムZZ」SPECIAL – TOWER RECORDS

マシュマー様のテーマだけチェンバロを使ったバロック調の音楽なのですが、そこがいい。
物語前半ではこの厳かな劇伴でマシュマー様が「ハマーン様妄想コント」をやるのが笑いどころだったわけですが、物語終盤に冷酷な強化人間となったマシュマー様が壮絶な最期を遂げたとき、この曲がレクイエムのように流れたので、当時小学生だった自分は番組を観て泣いてしまったものです(一時期ラカン・ダカランとドーベン・ウルフが大嫌いでした)。
物語の序盤と終盤でこれほど曲から受ける印象が変わる劇伴も珍しい。
そんなわけで、マシュマー様のテーマは自分にとって大変思い入れのある、かつ思い出深い曲なのでありました。今回の公演ではチェンバロをキーボード(シンセ)のサンプリング音源で代用していたのかな。

ちなみに『機動戦士ガンダムZZ SPECIAL』のサントラ盤はDisc2に「交響組曲Zガンダム」が収録されているので、「Symphony Z」と「愛の協奏曲」が聴けます。

「機動戦士Vガンダム」より 交響組曲第二番 THOUSAND NESTS – amazon
千住 明:交響組曲第2番「サウザンドネスツ」- TOWER RECORDS

千住明氏は『機動戦士Vガンダム』(93)の劇伴を自身の交響組曲作品(「THOUSAND NESTS」)としてリリースしているから、いつかエンターテインメント定期で演奏して頂きたいものです。

ただ、Vガンという作品自体が冨野監督ご本人の

「このDVDは見られたものではないので買ってはいけません!!」
「何がダメなのか探してください。」

…という辛辣なコメントで有名な作品なので、オーケストラコンサートの演目としては使いにくいのかもしれません。でも千住氏の音楽には感銘を受けたという話だから、一縷の望みを託したいと思います。

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