
先月の話になりますが、La-La Land Recordsから2,000枚限定でリリース発売になった『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』(25)のサントラ盤を買いました。CD2枚組、総収録時間は120分強。Disc 1もDisc 2も収録時間は60分前後でした。
【輸入盤国内品番】『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』オリジナル・サウンドトラック(amazon)
【輸入盤国内品番】『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』オリジナル・サウンドトラック(TOWER RECORDS)
Mission: Impossible – The Final Reckoning<限定盤/輸入盤> (TOWER RECORDS)
オリジナル・サウンドトラック ミッション・インポッシブルファイナル・レコニング<完全限定盤/カラー・ヴァイナル> (TOWER RECORDS)
Mission Impossible: The Final Reckoning (Analog) – TOWER RECORDS
曲を聴いたらすぐブログに何か書こうと思ったのですが、仙台フィルの『機動戦士ガンダム』シリーズ ~宇宙世紀コンサート~を聴きに行ったら、つい余韻を味わいたくなってガンダム関連のサントラを何枚も聴きまくってしまったのと、雑感とはいえ『ファイナル・レコニング』の劇伴もちゃんと聴かないと何も書けないので、2週間ぐらいアルバムを聴いていたら9月になってしまったというわけです。
…というわけで今回の劇伴を聴いて感じたことを書きます。

音楽担当は前作、前々作のローン・バルフからマックス・アルジ&アルフィー・ゴッドフリーの二人にバトンタッチ。
どちらもバルフの弟子にあたる作曲家なので、ジェフ・ザネリがジマーさんから『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』(17)の音楽を直々に任されたのと同じパターンと言えるでしょう。
バルフのプロデュースのもと、アルジと共に『クロール -凶暴領域-』(19)の音楽を担当していたシュテフェン・トゥームはどうしたのかと思ったら、ちゃんと本作に”Additional Arrangements”として参加していました。
バルフがシリーズ最新作から離れたのは、てっきり前作『デッドレコニング』(23)でやり尽くしたからなのかなと思いましたが、どちらかというと「バルフが忙しすぎて『ミッション:インポッシブル』だけに専念して仕事をする(させる)ことができなくなったから」というのが最大の理由らしい。
確かに、最近のバルフは一時のジマーさんよりも片っ端から仕事を請けまくり、お弟子さんを使いながら劇伴の量産体制に入っている印象がある気がします。
リモート・コントロール・プロダクションズ出身の作曲家で誰が「ポスト・ハンス・ジマー」になるのだろうかと思っていましたが、近年の傾向を見ていると、どうやらバルフがその座に収まりそうな印象を受けました。映画音楽業界がこの方の寡占状態になるのも、それはそれでちょっとつまらない気がしますが。
そんなわけで「バルフのお墨付き」をもらって本作に登板したアルジとゴッドフリーの音楽ですが、基本的には『フォールアウト』『デッドレコニング』のバルフの音楽を踏襲したサウンドになっているかなと。
つまりラロ・シフリンのメインテーマだけでなく”The Plot”も多めに使い、スケール感のあるオーケストラに多層的なパーカッションを使った厚みのある劇伴という感じ。
前作では総勢500人近くの演奏者がレコーディングに参加したことが(一部で)話題になりましたが、
あれは500人が一斉に演奏したわけではないので、1回あたりのオーケストラの演奏者の人数は、前回も今回も大きな差はないのではないかと思います。したがって前作と比べて音の迫力が劣るという印象はありません(あくまで個人的見解ですが)。
アルジ&ゴッドフリーは、シリーズの音楽に欠かせなかったラテン・パーカッション(ボンゴ)を使っていないことが特徴かな。その代わりアフリカン・パーカッションを多めに使っている模様。
あとはコンスタンス・デンビーの”Chakra #1″と”Chakra #3″、”Chakra #5″という曲を引用(サンプリング?)しているらしい、というのがシリーズの劇伴としては新機軸かも。
コンスタンス・デンビーというアーティストのことはよく知らなかったのですが、アンビエント/ニューエイジ・ミュージックの草分け的な存在だったようです(2021年死去)。この方のサウンドの特徴である「Space Bass」という低音の持続音が、水中シークエンスで効果を発揮するとクリストファー・マッカリー監督が考えたそうで、劇伴の中に組み込むことになったらしい。
そんなわけで、『ファイナル・レコニング』も創意に富んだ劇伴を作曲していると思います。
ただ作曲家の個性/特徴という点では、第1作のダニー・エルフマンや第2作のジマーさん、第3作と第4作のマイケル・ジアッキーノ、第5作のジョー・クレイマーほどではないかなと。
第1作のダニーさんや『ゴースト・プロトコル』(11)のジアッキーノの音楽は、ちょっと聴いただけでも「あ、これはエルフマンっぽいな」とか「これはどう聴いてもジアッキーノだな」と分かる雰囲気がありましたが、アルジ&ゴッドフリーの劇伴にはまだそこまで明確な”個性”がない。
もっとも、これは作曲家の個性を打ち出した劇伴よりも「ドラマに過不足なくマッチして、なおかつ万人受けするような劇伴」が欲しいという製作サイドの意向なのかもしれません。
『ローグ・ネイション』(15)の音楽を担当したクレイマーが『フォールアウト』(18)への参加が叶わなくなったとき、「(プロデューサーから)”君の芸術性なんて誰も気にしちゃいないよ”と言われた」「アイツはZimlingするために自分を捨てた」とSNSで不平不満をぶちまけていた事実を考えると、「手堅い作りの音楽を期日までに早く仕上げてくれる作曲家が理想的」という方向になってきているのかな…と思ったりもします(ちなみにクレイマーの上記投稿は現在削除されております)。
まあ30年近くシリーズを続けていれば、どこかで音楽の方向性が変わることもあるでしょう。『ミッション:インポッシブル』シリーズの場合、音楽の転換期となったのは明らかに『フォールアウト』だったと思います。

このシリーズはまだ新作を作る気があるのか現時点では分かりませんが、監督がマッカリーのままだったら、アルジ&ゴッドフリーも若い作曲家なので続投ということになりそう。バルフは忙しいので復帰の可能性は薄いと見ましたが、まあどうなるか分かりません。
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