
11月アタマの3連休にテレビ東京「サタシネ」のスペシャル枠で『ディアボロス/悪魔の扉』(97)の翌日に『コンスタンティン』(05)の放送があったそうで、これらの映画を愛する当方としては「キアヌと悪魔」特集放送に嬉しくなりました。まあ地域的に「サタシネ」は視聴できない身ではあるのですが。
せっかくなので、以前低ビットレートでウォークマンに取り込んでいた『コンスタンティン』のサントラの音源データをビットレートの数値を上げてウォークマンに入れ直した、というのは先日Xに投稿したとおりです。
この際だから、映画公開当時に自分で調べていた「なぜこの映画の音楽はブライアン・タイラーとクラウス・バデルトの共同作曲名義になったのか?」という件についてブログでまとめてみようと思います。
CONSTANTINE (Original Motion Picture Score Soundtrack) – amazon music
『コンスタンティン』は当初ブライアン・タイラーが単独で劇伴の作曲を手掛けることになっていました。これは当時タイラーの公式サイトでもそういう情報が出ていたし、IMDbでもそのように記載されていたから間違いありません。で、しばらく経ったら(1,2ヶ月くらいだったかな)バデルトの名前が併記されていたと。
その間に何があったかと申しますと、簡単に言ってしまえば「スタジオの幹部から”音楽がダークすぎる”とダメ出しをされた」のだそうです。タイラー自身がどこかのインタビューでそう語っていました。その記事はまだネット上に残ってるかな…?
タイラーは『コンスタンティン』の音楽で古代の宗教的な美しさとフィルムノワール的な雰囲気を出した劇伴を作曲したけれども、その音楽を聴いたスタジオ幹部は「全体的に音楽が暗い。もう少しユーモアが必要だ」と意見したらしい。で、この手の作曲トラブルでよくあるパターンなのですが、タイラーだけでボツになった曲を作り直す時間がなかったので、新たにバデルトを起用して、一部の”ダークすぎる”劇伴を作り直すことになったと。
先述のインタビュー記事によると、タイラーは「新しく作った音楽を指揮し、他のスコアとミックスする時間を持つことができた」そうなので、音楽をボツにされて新しく雇われた作曲家に取って代わられるよりは待遇が良かったと言えるでしょう。バデルトが作り直した曲にも「音楽に統一感を持たせたい」という自分の意見が反映されたわけですから。

そんなわけでサントラに収録された劇伴の作曲者は、当方調べだとこんな感じになるらしいです。
- Destiny – Klaus Badelt
 - The Cross Over – Brian Tyler
 - Meet John Constantine – Klaus Badelt
 - Confession – Brian Tyler and Klaus Badelt
 - Deo Et Patri – Brian Tyler
 - Counterweight – Brian Tyler and Klaus Badelt
 - Into the Light – Brian Tyler
 - I Left Her Alone – Klaus Badelt
 - Resurrection – Brian Tyler
 - Circle of Hell – Klaus Badelt with Ian Honeyman
 - Last Rites – Klaus Badelt
 - Encountering A Twin – Brian Tyler and Klaus Badelt
 - Flight to Ravenscar – Klaus Badelt
 - Humanity – Brian Tyler
 - John – Klaus Badelt
 - Someone Was Here – Klaus Badelt with Ian Honeyman
 - Hell Freeway – Brian Tyler and Klaus Badelt
 - Ether Surfing – Klaus Badelt
 - The Balance – Brian Tyler
 - Abentee Landlords – Brian Tyler
 - John’s Solitude – Klaus Badelt
 - Lucifer – Brian Tyler
 - Rooftop – Klaus Badelt
 - Constantine End Titles – Klaus Badelt
 
サントラをじっくり聴けば何となく分かるように、バデルトが担当した劇伴はエレクトロニックな要素があります。これがスタジオ幹部の言っていた「ユーモア」ということになるのでしょう。一方タイラーの劇伴は重厚なオーケストラの演奏がメイン。
スタジオ幹部は別に「滑稽な音楽を書け」と言っていたのではなく、「ユーモア」というのはダークなフルオケ劇伴に「ポップミュージック的でキャッチーな要素を持たせてくれ」という意味だったのではないかと思います。その意向が反映されていると思しき劇伴は、例えばこちらかと↓。
ちなみにタイラー自身のお気に入り劇伴はこれ↓だそうです。
そしてこの『コンスタンティン』での経験は、タイラーのその後の創作スタイルにも大きな影響を与えたのではないかと思うのです。
というのも、『コンスタンティン』以前のタイラーは『フレイルティー 妄執』(01)や『ハンテッド』(03)、『タイムライン』(03)、『アダム -神の使い 悪魔の子-』(04)などシリアスなフルオケ劇伴を作曲していました。
しかし『コンスタンティン』以降は『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』(06)、『ローグ アサシン』(07)など、キャッチーな要素(スタジオ幹部が言うところの”ユーモア”)を積極的に取り入れた劇伴を作曲するようになり、一気に売れっ子映画音楽家となりました。たぶん、「いま映画界で求められている劇伴がどういうものなのか」がハッキリ分かったのだと思います。
こうしてタイラーが売れっ子になっていく一方で、バデルトはこの時期『マイアミ・バイス』(06)の追加音楽の作曲とか”便利屋”的な仕事が続いたのが切ない。ある時期からはハリウッドを離れてヨーロッパで創作活動をするようになったし(もともとドイツ系の人ではありますが)。
ハンス・ジマーの門下生だからといって、ずっと仕事が安泰とは限らないということでしょうかね…。
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