BANGER!!!で書いた『ストレイ・ドッグ』音楽コラムの補足 / セオドア・シャピロはシリアス映画の音楽も素晴らしいという話。

先日、BANGER!!!で『ストレイ・ドッグ』(2018)の音楽紹介コラムを書きました。

ニコール・キッドマンが“心身ズタボロ”の刑事に!『ストレイ・ドッグ』の“重くて不吉な劇伴”に脂汗!! | BANGER !!!
https://www.banger.jp/movie/78197/

ワタクシは20年近くセオドア・シャピロの音楽を聴いているので、彼の野心作『ストレイ・ドッグ』の音楽について是非あれこれ書きたい!と思っていました。
しかしサントラもCDプレス盤では発売されなかったし、国内盤も発売されなかったので、何か書くならBANGER!!!さんしかないだろうということになり、『シンプル・フェイバー』(18)に続いてシャピロの音楽をご紹介することになりました。今更ながら、『シンプル・フェイバー』と同じ年に全く異なるサウンドの『ストレイ・ドッグ』の音楽を作曲していたというのは凄いことですね…。

まぁ書くべきことはほとんどコラムの中で書いてしまったので、当方のブログでは細かいネタの補足と、ワタクシのシャピリストとしての歴史を書かせて頂こうかなと思います。

…というわけで、まずはコラムの補足から。

『ストレイ・ドッグ』のスコア作曲にあたって、シャピロは脚本を読んだ段階で、そこから受けたインスピレーションをもとに、弦楽器奏者2名、シンセ奏者1名、ギター奏者1名とセッションを行って、撮影が始まる前に1時間分のスコアを作曲していたらしい。

で、この映画の脚本を執筆したフィル・ヘイはカリン・クサマ監督の夫なのですが、彼が脚本執筆中にゴッドスピード・ユー!ブラック・エンペラーの曲をずっと聴いていたので、シャピロの劇伴にもそういう感じの音を求めたと。
露骨にポストロック系の音にしてほしいというより、あのバンドのような「音の波」を感じさせる曲にしてほしかったらしい。その結果、弦のピッツィカートやトレモロ、グリッサンド、トリルを多用した、アヴァンギャルドなスコアになったというわけです。

銀行強盗シーンの音楽がリズムの反復で聴かせるメロディレスなサウンドなのは、『ヒート』(95)の”Force Marker”と同じ方法論ですね。

ちなみにゴッドスピード・ユー!ブラック・エンペラーの曲は、『ストレイ・ドッグ』の予告編で”09-15-00″という曲が部分的に使われています(1分を過ぎたあたりから)。

シャピロはコメディ映画が得意な作曲家というイメージですが、こういうシリアスで実験的な音楽もイケるんです。

ワタクシがシャピロの音楽に注目した最初の作品は、確かジーン・ハックマンやダニー・デヴィートが出演したケイパー映画『ザ・プロフェッショナル』(01)だったと思います。映画を観たあと、サントラが出ていないかあちこち探し回った記憶がありますので。

で、そのあとベン・スティラーの監督/プロデュース作品でシャピロの名前をちょくちょく見かけるようになり、「ああ、シャピロはコメディ映画の作曲家になったんだな」と思いました。コメディ映画のサントラはソングコンピ盤になることが多く、シャピロのスコアは未収録、あるいはテーマ曲を1曲だけ収録みたいなケースが多かったのですが、『ディック&ジェーン 復讐は最高!』(05)はスコア盤が発売になったので即買いしました。


この映画のスコアで、シャピロはマニー・マークをゲストミュージシャンに迎えているんですよね。いいセンスしてます(『LIFE!』(13)でもホセ・ゴンザレスが参加してたし)。

『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』(08)もコメディ映画ですが、シャピロの(事実上の)戦争アクションスコアが聴ける貴重な作品と言えるでしょう。
ちなみにアカデミー賞受賞作曲家のルドウィグ・ゴランソンが、かつてシャピロのアシスタントとして働いていたのも(一部では)有名なお話。

BANGER!!!コラムの筆者私物写真でチラッと載せて頂きましたが、ワタクシがサントラ盤に音楽解説を書かせて頂いた『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(15)と『シンプル・フェイバー』も実によい音楽でした。特に『トランボ』は「ジャズ+プリペアド・ピアノ」という組み合わせが素晴らしかった

『ストレイ・ドッグ』のスコアアルバムはデジタルダウンロードで配信中なので、是非聴いてみて頂きたい所存です。

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