BANGER!!!で書いた『バック・トゥ・ザ・フューチャー』音楽紹介コラムの補足的なお話

以前『バック・トゥ・ザ・フューチャー』3部作(85/89/90)の地上波放送があった頃に当方のブログで書きましたが、ワタクシはIntradaとVareseからリリースになった『BTTF』のスコア完全盤サントラを所有しております。

ただスコア盤を3作揃えて悦に入るだけではなくて、仕事に還元するのが映画音楽ライターとしての矜恃ではないかと思いまして、5月のムービープラスでのシリーズ一挙放送を機に、BANGER!!!で音楽コラムを書かせて頂きました。

映画音楽ウラ話『バック・トゥ・ザ・フューチャー』 ゼメキスが信頼した音楽家とは?「魅惑の深海パーティー」トリビア解説も | https://www.banger.jp/movie/95883/

主題歌/挿入歌のトリビアは有名なので、個人的にはアラン・シルヴェストリの略歴と彼の音楽に絞ってディープにご紹介したいと考えておりました。
しかしこういう映画コラムというのは、「皆さんが既に知ってることもあえて書かないといけない」という側面もあるので、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースやZZトップの主題歌や”Johnny B. Goode”の小ネタもあれこれ書かせて頂きました。

その結果、シルヴェストリの音楽について文字数の都合で書けなくなってしまったネタも出て参りましたので、当方のブログで補完させて頂きます。

その1:スピルバーグが『BTTF』の音楽にシルヴェストリが適任か半信半疑だった件の詳細

今でこそ映画音楽の巨匠となったシルヴェストリですが、1985年当時はまだ無名の存在でした。
スピルバーグは一応『ファンダンゴ』(85)でシルヴェストリの仕事を知ってはいたものの、自身の監督作で巨匠ジョン・ウィリアムズとタッグを組んでいる身としては、「本当に『BTTF』の音楽は無名のシルヴェストリでいいのか?」という思いがあったようです。

Intradaのサントラ盤ブックレットのライナーノーツによると、スピルバーグはテンプトラックがつけられた1回目の試写の時も、ロバート・ゼメキスに音楽への不安(決して”不満”ではなかった模様)を訴えていたらしい。
そこでゼメキスは2回目の試写の時に、テンプトラックをシルヴェストリが作曲したスコアと差し替えて、そのことをスピルバーグには知らせずに試写を観てもらったのだとか。
するとスピルバーグが「これだよ! この映画にはこういう音楽が必要なんだよ!」と言ったので、ゼメキスは「それがシルヴェストリの作曲したスコアだよ、スティーヴン!」と答えたのだそうです。それ以来、スピルバーグはシルヴェストリの才能を信じて疑わなくなったそうな。

その2:Intrada盤のDisc 2 “THE CREATION OF A CLASSIC… ALTERNATE EARLY SESSIONS”について

2008年にIntradaから発売になった『BTTF』第1作の拡張盤スコアアルバム。
Disc 2には“THE CREATION OF A CLASSIC… ALTERNATE EARLY SESSIONS”と銘打たれた音源が収録されていますが、この中にはまだエリック・ストルツがマーティ役を演じていた頃にシルヴェストリが作曲したスコアも含まれているらしいです。
ストルツはこの物語のシリアスな側面(「歴史改変」という行為の重大さ)を捉えて演技していたというから、シルヴェストリの音楽もマイケル・J・フォックス主演版の時よりもちょっと”重い”印象です。アクションコメディの劇伴としては”音の跳ね方”が気持ち足りない感じ。このあたりは聞き比べてみると面白いと思います。

ちなみに5週間演じたマーティ役を降ろされるという憂き目に遭ったストルツがこの後どうなったかというと、大作映画を避けてインディペンデント映画中心の作品選びをするようになりました。『ウォーターダンス』(92)、『恋愛の法則』(93)、『キリング・ゾーイ』(93)、『パルプ・フィクション』(94)、『ゴッド・アーミー 悪の天使』(95)、『ロブ・ロイ ロマンに生きた男』(95)など、自分も1990年代にストルツの出演作をいろいろ観たものです。

その3:シルヴェストリの西部劇音楽

『BTTF』の第3作で、いや正確には『BTTF』第2作のラストの予告編でシルヴェストリ流の西部劇音楽を披露したせいか、彼は1990年代に『ヤングガン2』(90)と『クイック&デッド』(95)という二つの変わり種西部劇の音楽を担当することになったのが興味深い
ひとくちに西部劇と言っても、シルヴェストリがそれぞれの作品でタイプの異なる音楽を作曲しているところが素晴らしい。


『BTTF』第3作はエルマー・バーンスタインやジェローム・モロスのようなハリウッド西部劇の音楽、『ヤングガン2』は「ロック西部劇」とも呼べるポップミュージック寄りのモダンな西部劇音楽、『クイック&デッド』はマカロニウェスタンへのオマージュ全開な音楽といった具合。こちらも機会があったら全作シルヴェストリの音楽を再鑑賞して頂きたいところです。

おまけ:”Johnny B. Goode”のギター奏者とボーカリストの件

「魅惑の深海パーティー」のシーンでマーティが披露した”Johnny B. Goode”は、マイケル・J・フォックスではない人がギターとボーカルを担当しているというのはつとに有名です。
そのボーカルを担当したマーク・キャンベルのインタビュー動画を先日見たのですが、当時いわゆる”ゴーストシンガー”の仕事の依頼を引き受けた時、キャンベルは製作スタッフから「このことは絶対に他言無用ですよ」と念を押されたらしいです。
BANGER!!!のコラムにも書きましたが、製作陣は「あのシーンはフォックスが自分で演奏している」と観客に思い込んでもらいたかった。だからエンドクレジットでも演奏者が”Marty McFly with The Starlighters”と役名で紹介される徹底ぶり。

自分が歌ったことを口外しない代わりに、キャンベルと”ゴーストギタリスト”のティム・メイはエンドクレジットの「スペシャルサンクス」に名前を載せてもらい、サントラの売上の数パーセントを謝礼金として支払われたそうです。数パーセントとはいえ、サントラは大ヒットしたからそれなりの金額になったのではないかと思います。

あの頃はインターネットなんてなかったから、当事者が口をつぐんでいれば秘密は保てたわけです。ある意味、そのほうが映画に夢を見られて幸せだったのではないかと思います。
あまり製作秘話とか裏話を知らないほうが、現実を忘れて映画の世界にどっぷり没入出来ますから。映画製作の裏話を知りすぎるのも善し悪しですね。

だから今回の”Johnny B. Goode”の件もコラムに書いていいものかどうか入稿直前まで悩みました。でもこの件に関してはもう当事者(前述のキャンベルやフォックス自身)がインタビューで明らかにしているので、「だったらまぁいいか」と自分なりに折り合いをつけてご紹介しました。
2016年のコールドプレイのライブにフォックスがゲスト出演した件も書けたので、「フォックスはあの曲のギターがちゃんと弾けるのですよ」ということもご紹介出来ましたし。

4月から花粉症ですこぶる体調が悪いので、今回の『BTTF』のコラムはサクッと書いて済ませようと思っていたのですが、このようにあれこれ悩んで原稿を書き綴っていたら、結局普段以上に手間と時間がかかる内容になってしまったのでした。

我ながら損な性格をしているなと思いました。

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