タイタンの戦い(音楽について)

clash of the titans

というわけで『タイタンの戦い』(10)の音楽について何ですが、これがまた作曲家が決まるまでいろいろあったそうで。あんまりこういう事はあってほしくないんですが。

当初はルイ・レテリエ監督と『インクレディブル・ハルク』(08)で組んだクレイグ・アームストロングが作曲を担当して、レテリエの『ダニー・ザ・
ドッグ』(05)で音楽を担当したマッシヴ・アタック(アームストロングとも2ndアルバム「Protection」でコラボ済み)に追加音楽を書かせるという顔ぶれで音楽製作がスタートしたんですが、プロデューサーが音楽を気に入らなかったのか、試写で不評だったのか、アームストロングが降板させられて、後任としてラミン・ジャワディが雇われたのでした。

追加音楽のマッシヴはそのまま残ったようですが、正確にはニール・ダヴィッジのみの参加。当初からダヴィッジのみだったのか、ロバート・デル・ナジャも参加していたけど、アームストロングが降板した時点で抜けたのかどうかは不明(ダディーGはスコアの作曲にあまり興味なさそうなので、多分最初から参加してなかったと思う)。

アームストロング、いい音楽を書く人なんで僕は好きなんだけどなぁ。やっぱりUK的な作風(どことなく繊細な曲調とか)がハリウッド受けしないんでしょうか。

で、こういう交番劇があると、だいたい音楽の出来もイマイチなものが多いのですが、ジャワディさんは違った。思った以上に完成度の高い音楽でビックリ。いや誇張でも何でもなく結構いいですぞ、このスコア。

「オーケストラ+打ち込み+コーラス隊」という構成なのですが、オケもギリシャ神話に相応しい壮大さがあるし、ドコドコ鳴らすリズムも躍動感があって◎。テーマ曲もキャッチーなメロディーで耳に残るし、『アイアンマン』(08)よりクオリティ高いかも。リモート・コントロール組の音楽が好きな人なら、このサントラは買って損なしでしょう。

そして気になるダヴィッジの追加音楽はというと、まんま『ダニー・ザ・ドッグ』でした。他の映画ならともかく、この映画には合わないような。”Be My Weapon”という10分近いスコアを提供しているのですが、映画本編では30秒くらいしか使われていなかったような気がする。製作サイドも「こりゃちょっと合わないなぁ」と思ったんだろうか。エンドクレジットあたりで流す予定だったと思しき歌モノ”The Storm That Brought Me to You”も映画で使われなかったし。

マッシヴはレテリエのお気に入りのミュージシャンらしいので、自分の好きなポップ・ミュージシャンに曲をつけてもらいたい、という気持ちもまぁ分からなくもないんですが、もっと映画音楽家の仕事をリスペクトしてもらいたいものです。「餅は餅屋」とも言いますし。

・・・というわけで、ダヴィッジの曲はともかく短期間で大健闘したジャワディさんの仕事っぷりは要チェックなので、サントラ盤は「買い」です。国内盤はソニー・ミュージックより発売中。

ちなみにエンドクレジットを見たところ、アームストロングが作曲したヒロインのテーマ(”Io’s Theme”)だけは本編で使われた模様。この曲だけ使われても、本人にとっては複雑な心境だろうな・・・。

『タイタンの戦い』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ラミン・ジャワディ
品番:SICP-2679
定価:2,520円