PANDORUM

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「ポール・W・S・アンダーソン=『バイオハザード』シリーズの監督」として知られていますが、個人的には『イベント・ホライゾン』(97)こそアンダーソン監督のベスト作品ではないかと思っています。

そんなわけで、日本公開前から楽しみにしていたアンダーソン製作のSFホラー『パンドラム』(09)ですが、これが期待通りの面白さ。日本の劇場公開時は大した宣伝もされず、ひっそり公開してひっそり上映終了になってしまった印象があるのですが(確かパンフレットも作られなかったはず)、この映画、ヘタなSF大作よりよっぽど見応えがありました。

ジャンル的には限定空間型ホラーといったところでしょうか。宇宙船内のみで物語が進行するところも『イベント・ホライゾン』と同じ。宇宙船と呼ぶには異様な造形のエリジウム号のデザインも、鈍色の寺院といった趣だったイベント・ホライゾン号のデザインを踏襲していて嬉しい限り。このメタリックな世界観、好きな人にはたまらないはず。オススメです。

両者の違いとしては、「ブラックホールの向こうはXXだった(あえて伏せ字)」というオカルト調の世界観/アイデアが秀逸だった『イベント・ホライゾン』に対して、『パンドラム』はもっと直球勝負のクリーチャーが大暴れするタイプのホラー映画。『エイリアン』(79)と『ディセント』(05)と『イベント・ホライゾン』のおいしいところを抽出した、良質なB級SFホラーと言えばいいのかな。物語の序盤、ペイトン中尉(デニス・クエイド)のナビゲーションでバウワー伍長(ベン・フォスター)が真っ暗な船内を探索するシークエンスが、PCエンジンの名作ソフト『サイレント・デバッガーズ』を彷彿とさせてなかなかシビれた。科学者の割には妙に強いナディア役のアンチュ・トラウェもカッコよくてイカす。『処刑人』シリーズのノーマン・リーダスが、バケモノに呆気なく喰われる乗組員の役で顔を出してます。

冷凍睡眠から目覚めてしばらくの間は記憶が戻らないという設定や、映画のタイトルにもなっている「パンドラム」という宇宙病の使い方も効果的で、サイコロジカル・スリラーとしても秀逸な出来。この映画、監督がドイツ人のクリスチャン・アルバートで、製作がコンスタンティン・フィルムとインパクト・ピクチャーズの共同名義なのですが、基本的にドイツ系監督の撮ったスリラー映画は、ハリウッド製のものとは違う陰鬱さがあってなかなか怖い(『アナトミー』(00)とか『タトゥー』(01)とか『es [エス]』(01)とか)。

音楽担当はミヒル・ブリッチ。『ケース39』(09)に続くアルバート監督とのコラボ。CDのライナーノーツを読むと、『パンドラム』の音楽を作曲する前に、『エイリアン』のスコアを「もし自分だったらこういう音楽をつける」という感じで自分なりに作曲(”re-scored”)してみたらしい。いわゆるイメージトレーニングというやつでしょうか。

そして出来上がった音楽はと申しますと、オーケストラにエレキギター、ベース、打楽器(”Trashcan Lap Drums”と書いてあった)、音を歪ませたチェロやピアノを重ね合わせた前衛的なサウンド。音楽とサウンド・デザインの中間的なスコアでした。メロディーで聞かせるタイプの音楽ではありませんが、雰囲気は出ているし、歪んだ音がただならぬムードを醸し出していてインパクトがあります。映画が面白ければ、こういう音楽も嫌いじゃないです。エンドタイトルの曲とか結構気に入っているのですが。

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