『アーマード 武装地帯』を3倍面白く見る方法

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僕は『シングルス』(92)以来のマット・ディロンのファンなので(『ランブルフィッシュ』(83)は少し後になって観ました)、彼の出演作はほとんど観ているのですが、『アーマード 武装地帯』(09)がB級ながらなかなか面白くて、CSの映画チャンネルで放送していると、つい何度も観てしまう。

「現金輸送を請け負う警備員6人による偽装強盗+友情崩壊劇」という感じの内容で、なかなか見応えがある・・・と思うのですが、どうも巷の評価が芳しくない。「こんな穴だらけの強盗計画、成功するわけないじゃん」的な冷めた見方をされる方が多いのですが、この映画の場合、それは間違った見方ではないかなぁと思うのです。

つまり「強盗計画が成功するか否か」ではなく、「この穴だらけの計画がどこでどう狂って、6人がどのように破滅していくか」という感じで、違った視点から物語を追っていくと、結構濃密な密室サスペンス&人間ドラマが楽しめるのではないかと。

強盗計画に荷担する警備会社のメンバーは以下の通り。

■マイク(マット・ディロン):強盗計画を企画・立案した事実上のリーダー。
■タイ(コロンバス・ショート):マイクのダチの新人警備員。戦争のトラウマあり。
■ベインズ(ローレンス・フィッシュバーン):飲んだくれのトリガーハッピー。
■クイン(ジャン・レノ):無口で何を考えているか分からないベテラン警備員。
■ドブス(スキート・ウールリッチ):家族想いで気の弱い警備員。
■パーマー(アマウリー・ノラスコ):信心深い元囚人。

「カネが必要で計画に乗ったクセに、変なところで良心に目覚めてチームの和を乱す」
「短慮でガサツな行動が災いして、綿密な計画を破綻させる」
「お人好しな性格が災いして、肝心なところで非情に徹しきれない」
「信仰心と内なる暴力性の板挟みになって葛藤する」

・・・というような感じで、このテのクライム・サスペンスでトラブルを起こしがちなキャラが勢揃いしているわけです。彼らがいつ、どこで、どんな行動を取るか。そしてその結果、どういう事態を招く事になるか。その過程を追いながら本編を観ると、なかなかスリリングで面白い。強盗計画が成功するかどうかは二の次といっていいでしょう。個人的にはタイの煮え切らない偽善者っぷりに少々イラっと来ました。クライマックスで見せるマイク(=マット・ディロン)のうらめしそうな顔が全てを物語っているような気がしますが、この屈折した感情表現巧さが「さすがディロン」といった感じ。

音楽は映画版『マイアミ・バイス』(06)や『28週後…』(07)のジョン・マーフィー。シンセ率高めのオーケストラ+打ち込み系スコアです。ブリブリ・ウネウネとうねるベース音とか、ロック調のエレキギターのリフがなかなかカッコよくて、個人的には結構好きなサウンドです。スコア盤が出なかった映画版『マイアミ・バイス』のスコアに近いノリではないかな、とも思います。何だかんだで結構このサントラ聴いてるなー。打ち込み系のスコアが好きな方なら、聞いてみて損はないでしょう。ジャケットも男臭くていいですね。

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