CORIOLANUS -英雄の証明-

coriolanus

シェイクスピア悲劇『コリオレイナス』の舞台を現代の政情不安な小国(たぶん東欧のイメージ)に置き換えた、レイフ・ファインズ製作・監督・主演作…なんですが、それにしてもまぁ何でこんな邦題になったんだろう。

サミュエル・L・ジャクソンとトミー・リー・ジョーンズが共演した『英雄の条件』(00)という映画がありましたが、あれの二番煎じみたいな邦題になってしまいました。映画本編を観た感じでは「無愛想で愚直な”英雄”(=ファインズ)が、腹に一物抱えた政治家の策略で国を追われ、やがて敵国に寝返って祖国への復讐を企む」というストーリーなので、”英雄の証明”とはちょっとテーマが違うんじゃないかという気がする。まぁ『英雄の条件』ってのもピントのズレた邦題だなーと思いましたが。

というわけで、ここでは『コリオレイナス』と表記させて頂きます。

シェイクスピア劇で上映時間が123分と聞いた時は、もっと冗長な内容なんじゃないかという印象でしたが、予想に反して一気に観られました。脚色がうまいのかな。まさかシェイクスピア劇でコンバット・シューティングが見られるとは思いませんでした。撮影監督が『ハート・ロッカー』(08)のバリー・アクロイドという事もあって、市街戦もなかなかの迫力。ファインズの演出力もさることながら、スタッフの人選もなかなかの目利きです。

イアン・マッケランが主演した『リチャード三世』(95)とか、イーサン・ホーク主演の『ハムレット』(00)とか、舞台を現代に移し替えたシェイクスピア映画は意外とよく出来た作品が多いのですが、『コリオレイナス』もよく出来た作品ではないかと。

確か『ことの終わり』(99)が日本で公開された頃あたりにレイフ・ファインズの来日舞台公演があって、その時の演目も『リチャード二世』と『コリオレイナス』だった気がする。「コリオレイナスを知り尽くした男」による映画化作品という事で、つまらないわけがないって事ですね。

音楽担当はアイラン・エシュケリ。『レイヤー・ケーキ』(04)とか『スターダスト』(07)など、マシュー・ヴォーン監督作品で頭角を現した人ですね。ハンス・ジマーの『ブラック・ホーク・ダウン』(01)のレコーディングにも参加してたりしますが、リモート・コントロール所属というわけではなさそう。

シェイクスピア映画とはいっても、格調高い管弦楽という感じではなく、ティンパニやメタル・パーカッションを打ち鳴らす男臭くて猛々しい音楽。「ドドンドンドドン!」「カンカンドン!」と終始打楽器が鳴り響くスコア(これが事実上のメインテーマ)はかなり印象に残ります。エシュケリ自身もスティール・パン、シンセベース、グラス・パッド、ヴァイオリン、チェロを演奏。スコアにメロディーを重視する人は物足りないかもしれませんが、リズムの組み立てに興味があるリスナーや打楽器の心得がある人には面白いサウンドと言えるでしょう。

ちなみにサントラは2枚組で、Disc 2には出演者のダイアログ入りのスコアが収録されてます。スコア自体はDisc 1収録のものと同じなので、まぁオマケみたいなもんでしょう。

それにしてもこのジャケットデザインはいかがなものか。これじゃホラー映画でしょ…。海外版のサントラはこういうドギツイ表1デザインがあったりするから困ります(『ザ・タウン』(10)のジャケ写もイマイチだったなぁ…)。

Mychael Danna & Jeff Danna『A Celtic Romance』好評発売中!

AMAZON
レーベルショップ
iTunes A Celtic Romance: The Legend of Liadain and Curithir - Mychael   Danna & Jeff Danna