A Night in the Next Life(完全盤)

先の幸宏さんのアルバム「Page by Page」+旧譜12タイトル再発+ベスト盤
2タイトルの一挙リリースで、先月すっかり散財してしまったワタクシですが
(さすがに全部は買えませんでした)、投資したからにはちょっと元を取らない
となぁ、という事でブログのネタにさせて頂きます。

今回ご紹介する「A Night in the Next Life -Perfect Premium Discs-」は、
1991年4月29日の渋谷ON AIRで行われたライヴ音源を全て収録したCD
2枚組アルバムです(オリジナルのリリースは1991年8月)。
オリジナル盤未収録の音源がこのアルバムの目玉なわけですが、その
ラインナップはと申しますと、

Only Love Can Break Your Heart
Left Bank [左岸]
X’Mas Day in the Next Life
空気吸うだけ
メンバー紹介

という感じ。改めて聴いてみると、「何で当時この曲をカットしたんだろ?」という
完成度の高い曲ばかりでした(メンバー紹介は、まぁ曲じゃないのでアレですが)。
「Only Love Can…」がまた切ない感じでいいんですよ。

オリジナル盤でカットされた曲は、コーラスワークで聴かせるものが比較的
多かったのですが、このライヴではサポートメンバーのオジサマたちの甘くも
シブイ歌声で再現されておりまして、これがまた素晴らしいんですな。

今回の一連の再発盤は、SHM-CD仕様というのがウリのひとつなわけですが、
このライヴでは吉川忠英さんと徳武弘文さんという二大腕利きギタリストが
参加しているので、両氏の神業的なギター・プレイがクリアな音質で聴ける
というのは、結構ポイント高いんじゃないかと思います。

オマケのようなメンバー紹介も、幸宏さんの口調が椎名誠ライクだったり、
スティーヴ・ジャンセンを「兄貴と仲が悪いヤツ」と紹介したり、時代を感じ
させて何だか微笑ましいものがあります(今のスティーヴはその兄貴と
Nine Horsesとかやってますからね・・・)。

余談ですが、このライヴのオリジナル盤が出た時、ワタクシは中学生でした。

住んでいたのが仙台某所の団地エリアって事もあったのでしょうけれども、
自分の周りで幸宏さんのアルバムを聴いている人(もしくは知っている人)は
一人もいませんでした(泣)。いやー、あれはサビしい中学時代だったな。

今ならネットで簡単に共通の趣味を持つ人を簡単に見つけられますが、
あの頃はまだそういう環境が整ってなかったので、洋楽ファンとかYMOファンの
早熟な子供は、それはもう肩身の狭い思いをしたもんです。

その点ネット環境の発達した今はいい時代になったよなぁ、と思うわけですが、
苦労に苦労を重ねて共通の趣味の人を見つけた時の達成感とか、ひょんな事
から実は身の回りにいた人が同じ趣味を持っていた、と分かった時のサプライズ
みたいな気持ちは、あの頃の方が感動が大きかったのかな、とも思います。

『A Night in the Next Life -Perfect Premium Discs-』
レーベル:EMIミュージック・ジャパン
品番:TOCT-95083・84(2枚組)
定価:3,990円

   

Live at the Troubadour

発売日当日に買ったものの、ダリルファンのウチの親が独占していて
なかなか見る機会がなかった『Live at the Troubadour』のDVDを先日鑑賞。

この公演の模様は去年の11月にライヴ盤が出ていたのですが、CDに同梱のDVDは
リージョンコードの関係でウチのプレーヤーでは見られなかったんですよねぇ。

そんなわけで、こうしてDVDを国内仕様にローカライズしてくれたビクターエンタ
テインメントさんには感謝・感謝でございます。

サポートメンバーはTボーン・ウォルク(g)、マイク・ブラウン(dr)、ゼヴ・カッツ(b)、
エリオット・ルイス(key)、エヴェレット・ブラッドレー(Per)、そして我らが「Mr.カジュ
アル」チャーリー・デシャント(sax)という面々。

アコースティック主体のアレンジとメンバーの顔ぶれ、それと会場の狭さのせいか、何となく
Live from Daryl’s House」の延長線上にあるようなノリですな。観客のかけ声に
応えたり、「Getaway Car」のラストで演奏をミスった時に

ダリル:「しくじったな?お前か?(ニヤニヤ)」
Tボーン:「僕だ。さっさと始めてくれ!(ニヤニヤ)」

とか言ったりするリラックスしたムードがまた「楽しそうでいいなぁ」と思ったり。
「みんなの前で演奏するのが楽しくてしょうがないんだ!」と言っているような
雰囲気がすごく伝わってくるんですよ。これが実にイイ。

ダリル・ホール&ジョン・オーツがヒット曲を連発して「史上最高のデュオ」と
称された80年代から30年近く経つわけですが、ちっとも老け込んだ感じが
なくて、演奏している姿が実に若々しいんですな。その一方で、歌唱に
円熟味が増していて、「When the Morning Comes」とか「Abandoned
Luncheonette」のような70年代の曲を歌った時に、より深みが加わって
いるのが実に素晴らしいです。

チャーリーさんも結構見せ場がありまして、「Maneater」の間奏パートをオーツの
ギターと一緒に共演してみたり、「I Can’t Go For That (No Can Do)」の中盤から
後半にかけて、お約束の即興演奏をノリノリで披露してみたり(この方がバンドの
主役になる時間ですな)、いや実にイカすおじさまです。

ワタクシぐらいの「デシャンティスト(=DeChantist。チャーリーさんのファン)」に
なると、この方がサックスを吹いていない時に何をやっているんだろう、と
つい注目してしまうのですが、よく見ていると結構面白いですぞ。

所在なげにぽけーっと立っていたり、リズムに合わせてのっそり踊っていたり、
「Private Eyes」でやけに楽しそうに手を叩いていたり、陰でいろいろやってます(笑)。
カメラアングル的に言うと、ダリルさんの右斜め後ろにいるので、結構映っている
シーンが多いんだな、これが。

手元にDVDがある人は、今すぐ「癒し系」チャーリーさんの行動をチェック!

『ライヴ・アット・ザ・トルバドール』

Artist:ダリル・ホール&ジョン・オーツ
品番:VIBP-103
定価:4,800円

DVD仕様:COLOR / NTSC/ 画面サイズ:16:9/
       リージョンコントロール:2日本 / ドルビーデジタル /
ステレオ / 5.1ch サラウンド / オリジナル(英語)

  

MILK BOSSA acoustic

先日、いつもお世話になっているフレイヴァー・オブ・サウンドのNさんと電話でお話し
した際、「最近、MILK BOSSAの新作を出したんですよー」という情報を聞きまして、
ありがたい事にサンプル盤を送って頂きました。

まずこの場を借りてNさんとSさんにお礼申し上げます。どうもありがとうございました。

・・・というわけで、「MILK BOSSA」シリーズについて簡単にご説明致しますと、
洋楽のヒット曲を毎回特定のテーマに基づいて、ボサ・ノヴァ・アレンジで心地よく
カヴァーしてしまおうじゃありませんか、という人気企画盤でございます。

1作目は特にテーマがなかったような気もしますが、2作目は「eighties」(ニュー・
オーダーとかシャーデーなど)、3作目は「Marcela(ロベルト・メネスカルの実娘)が
選ぶカヴァー集」、4作目は「AOR」(ボビー・コードウェルとかフィル・コリンズなど)
をテーマに誰もが知っているヒット曲をカヴァーしてきたわけですが、今回は
「acoustic」がテーマとなっておりました。

つまり、カヴァーする原曲もアンプラグドでアコースティックな感じの曲を選んで
みましたという事ですな。

ギルバート・オサリバンの「Alone Again」とか、スザンヌ・ヴェガの「Luka」、ロバータ・
フラックの「Killing Me Softly With His Song」(『アバウト・ア・ボーイ』(02)でネタに
されていた曲です)・・・といえば大体どんな感じがお分かりになるかと思います。

もともとアコースティックな曲なんで、ボサ・ノヴァとも相性抜群。ソフトなヴォーカルと
柔らかいギターの音色が何とも心地よいです。原曲を知っている人は「なるほど、
そういう解釈でカヴァーしたか」と思いながら聴いてみるのもまた一興。

個人的に一番ツボだったのは、ニール・ヤングの「Only Love Can Break Your Heart」
のカヴァーですかね。幸宏さんのカヴァー(「A Day in the Next Life」収録)で何度も
聴きましたし、つい先日もライブ盤「A Night in the Next Life」の完全版で聴いた
ばっかりだったもんでして。「なるほど今回はこういうカヴァーで来たか」と、言ってる
そばから先に述べたような聴き方をしてしまいました。これが音楽ライターの性って
やつなんでしょうか。

何はともあれ、ボサ・ノヴァ好きの方はシリーズごと押さえておきたい一品でしょう。

『MILK BOSSA acoustic』
レーベル:フレイヴァー・オブ・サウンド
品番:PUCY-1068
定価:2,000円

    

100 Greatest Hard Rock Songs

この前MTVで放送していた『100 Greatest Hard Rock Songs』をビデオで見ました。

以前のブログで書いた『100 Greatest Songs of the 80s』と同じ放送局が
製作した、視聴者投票形式のハードロック・ベスト100みたいな番組ですな。

ワタクシこんなスバラシイ番組(笑)がある事に気がつかなくて、TVをつけた
頃には既に80位まで進んでおりました。

その日は仕事があったので、タイマー録画にして出掛けてしまったのですが、
後になってビデオを見てみたら、何とも嬉しいサプライズが!

・・・クリス・ジェリコがコメンテーターとして出演しているじゃありませんか!!

いやー、あんなに陽気で気さくなジェリコさんを見たのは久しぶりだったんで
嬉しかったです(最近のRAWじゃダークなヒール街道まっしぐらだし・・・)。
コメントもロック好きの悪ガキっぽくてナイス。

しかもジェリコさんの肩書きが「WWE Superstar / Author」ってのが笑える。
Authorって・・・自伝を1作出版しただけでしょうにと(笑)。多分、「オレの
肩書きはこうしてくれよ!」って自分で言ったんだろうなぁ。
どうせなら「WWE Superstar / Fozzy」にすればよかったのに、と思ったり。

さて肝心の内容はと言いますと、Steppen Wolf、KISS、Aerosmith、Bon Jovi、
Guns N’ Rosesといった大御所から、Faith No MoreやStone Temple Pilots、
Soundgarden、Foo Fightersなどなど、ここ30年のハード・ロックの歴史がひと目で
分かる豪華ラインナップ。Deep Purpleのあの曲ももちろん上位にランクイン。

『グランド・セフト・オート バイスシティ』のV-Rock、あるいは同『サンアンドレアス』の
Radio-XやK-DSTといったラジオ局をヘビーローテーションしている人にはたまらん
番組ではないかと。

実際、Living Colorの「Cult of Personality」とかMegadethの「Peace Sells」、
Anthraxの「Madhouse」、Twisted Sisterの「I Wanna Rock」、Foghatの
「Slow Ride」なんてGTAのサントラでも使われてたもんなぁ。つくづく選曲
センスのいいゲームだわ、このシリーズ。

で、まぁお約束として当時活躍したロックンローラーたちがコメンテーターとして
登場したんですが、なんつーか、不良中年の見本市というかクロマティ高校の
同窓会というか、いかにも「ワル」といった雰囲気を漂わせた枯れたオッサンが
一堂に会する姿は一種の凄みを感じさせると共に、マンガのような笑いを誘い
ました。Iggy PopとかDavid Coverdaleとか、ルックスがステキすぎ(笑)。

来月再放送とかやってくんないかなぁ・・・。

   

Page by Page

世間はポカポカ陽気で、いよいよ春本番だなーという時期になって参りましたが、
いよいよ花粉症がヒドくなってきたワタクシは毎日ユーウツで仕方がありません。
だいたい外に2時間くらいいると症状が悪化して、具合が悪くなってくるんですな。

正直「もうやってらんねー」ってな感じなのですが、幸宏さんのニューアルバム
『Page by Page』を聴いている間は、嫌な事を全部忘れてシアワセな気分に
浸れるのです。

『Blue Moon Blue』、『Floating PUPA』に続く「高橋幸宏・エレクトロニカ三部作」の
第3弾という事で、「amiina、Lali Puna、ATOM、Steve Jansen、Corneliusら世界
各国のアーティストが参加を快諾!」と聞いた時は、期待が高まる一方で少々
不安でもありました。ゲストが大挙参加する事で、幸宏さん「らしさ」が薄まって
しまわないかな・・・と思ったんですね。

しかしそれは杞憂に終わりました。実際にCDを聴いてみると、そこにはいつもの
幸宏さんの世界観が広がっていたんですな、これが。

全体的な印象としては、『Blue Moon Blue』よりもグリッチ・ノイズが控えめで
音がマイルドな感じでしょうか。それが物足りないという方もいらっしゃるかも
しれませんが、ワタクシはこれぐらいの方が心地よいです。

詞の世界も(いつもの)私小説的な感じのものもあり、「ここではないどこか」を
歌った幻想的なものもあり、歌っている事は割と抽象的なんですが、心に
じわーっと来るものがあります。

何か、今回のアルバムから伝わってくる優しさとか切なさは、コンシピオ時代の
アルバム(『A Sigh of Ghost』とか『A Ray of Hope』)に通じるものがあるかなぁ、
とも思ったり。

幸宏さんのドラムと小山田圭吾のソリッドなギターが冴え渡る「Emerger」、
幸宏さんご本人が「Something New」(『Blue Moon Blue』収録曲)の続編と
語る切ないラヴソング「The Words」、Nine HorsesやJBKを連想させる
「Perfect Wound」、「Indefinable Point」など、音のヴァリエーションも結構
幅広いです。

でも、楽曲の根底にあるのは「いつもの幸宏さんのサウンド」というのが素晴らしい。
この「変わらないポップス観」がいいんだよなぁ、と、教授の『Out of Noise』を
聴いた後は余計にそう思いました(笑)。

ちなみに『ニウロマンティック』、『薔薇色の明日』を幸宏さんのベストに挙げる
ワタクシの母は、以前仙台メディアテークで行われた『Something Blue, Extra』の
ライブを観に行った際、そのあまりにも前衛的な音楽を目の当たりにして

「幸宏さんが遠いところに行ってしまった・・・」

と、ショックを受けて寝込んでしまったのですが(笑)、今回の『Page by Page』は
「こういう曲が聴きたかったのよねー」と絶賛しておりました。
いやー、こうして素晴らしいアルバムに出会えると、無性に嬉しくなりますな。

再発盤については後日改めて書かせて頂きます。
(いつになるかは分かりませんが)