BANGER!!!のコラムで書き切れなかった『コン・エアー』のネタあれこれ

先日BANGER!!!のコラムで『コン・エアー』(97)の見どころ&音楽紹介コラムを書きました。

ハリウッド版「魁!!!男塾」? ニコラス・ケイジ主演『コン・エアー』の意外な功績とバンド“イエス”ギタリスト作曲のロックな劇伴 | https://www.banger.jp/movie/93921/

…ちなみにこのコラムタイトルはワタクシが考えたものではありません。
(編集部に「男塾」読者の方がいらっしゃったんでしょうか)
当方の記事がアップされた時に「そう来ましたか…」と思ったほどで。

本当は『マッシブ・タレント』(22)のコラムを書きたかったのですが、諸事情により叶わなかったため、それなら『マッシブ・タレント』の映画本編でもフィーチャーされている『コン・エアー』について書こうかなと思ったのです。何しろ映画が始まって早々に『コン・エアー』のエンディングが流れますから

…とまぁそんなわけでいろいろBANGER!!!でいろいろ書かせて頂きましたが、字数の都合でコラムに書けなかったネタ、マニアックすぎて需要がなさそうなネタなどもいくつかございますので、当方のブログにて補完させて頂きたいと思います。

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2022年に購入して個人的に満足度が高かったサントラ盤10選

今年もいろいろサントラ盤を購入したので、「これは買ってよかったなぁ」と思ったアルバムを挙げていきたいと思います。
新作のサントラよりも旧作のエクスパンデッド盤を買う機会のほうが多かったのかな。

その1;『スカーフェイス』(83) 2枚組エクスパンデッド盤

真っ先にあげるとするなら、やはりこの一枚でしょう。
学生時代に初めてこの映画を観た時から約30年、「ジョルジオ・モロダーの劇伴をフルで聴きたい」というワタクシのささやかな願いが叶ったアルバムでした。
このサントラが発売される前に、BANGER!!!でもこんなコラムを書いてました。

『スカーフェイス』 過激なバイオレンスにセクシーなディスコ音楽!
EDM界の巨匠ジョルジオ・モロダーの功績
https://www.banger.jp/movie/59235/

SCARFACE Expanded Motion Picture Soundtrack (TOWER RECORDS:輸入盤)
SCARFACE Expanded Motion Picture Soundtrack (TOWER RECORDS:輸入盤国内流通仕様)
SCARFACE Expanded Motion Picture Soundtrack (amazon:輸入盤国内流通仕様)

その2:『L.A.コンフィデンシャル』(97) エクスパンデッド・スコア盤

先日買ったばかりですが、これも25年近く発売を待ち続けたスコア盤でした。
拡張盤(完全盤)になっても収録曲が16分ほど増えた程度というのは意外でしたが、先日ブログに書いたとおり、この追加収録分は金額やプレイタイムに換算出来るものではないんですよね。

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今年のクリスマスギフトは『L.A.コンフィデンシャル』と『ミミック』のデラックス・エディション版サントラだった

自分はもうクリスマスプレゼントがどうのこうのという歳ではありませんが、先月某ショップでオーダーしていた『L.A.コンフィデンシャル』(97)と『ミミック』(97)のデラックス・エディション版サントラが、ちょうどクリスマスイブの夕方に届きました。

Varese CD Clubでのリリースの数量限定盤だし、入荷も遅れそうだから年内に手に入れば御の字かなと思っていたのですが、クリスマスイブに手元に届くとは粋なタイミングでの発送になったものです。
自分で買ったものとはいえ、コロナ禍で気が滅入っているこのご時世、ちょっと幸福感を味わえました。

『L.A.コンフィデンシャル』はワタクシの大好きな映画で、映画公開当時リリースになった通常盤のスコアアルバムも長年愛聴しておりました。
ただ収録時間が30分くらいだったので、いくら劇中で既製曲も多く使っていたとはいえ、ジェリー・ゴールドスミスの劇伴はもっと使っていたんじゃないかなと思っておりました。

で、何年か前にスコアアルバムのアナログ盤が限定リリースになったのですが、「違う…自分がほしいのはそれじゃなくて拡張盤のサントラなんだ…。なぜリリースされないんだ…」と人知れず懊悩したものです。そして今回の2,000枚限定での拡張盤リリース。いやこれは嬉しかった。

アルバムの内容としては、ゴールドスミスの完全版のスコアを28曲46分、1997年リリースの通常盤に収録されたスコアを11曲30分収録した、全76分という構成。
スコアを完全収録しても通常盤から16分しか増えていない計算になりますが、それでも「今までずっと聴きたかったあの場面のあの劇伴」が聴けるのは、収録時間や価格では語ることの出来ない喜びがあります。この日をどんなに待ち続けたことか…。

ひとつだけ惜しまれる点があるとするならば、ソングコンピ盤に収録されていたゴールドスミス作曲の「名誉のバッヂ」(劇中ジャック・ヴィンセンスがテクニカル・アドバイザーの仕事で小遣い稼ぎをしていたTVドラマ)のテーマ曲が未収録だったことでしょうか。ソングコンピ盤はVareseからのリリースではなかったから、おそらく権利関係の事情でしょう。ま、些細なことです。

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『ザリガニの鳴くところ』のBANGER!!!コラムでマイケル・ダナさんにインタビューしました。

11月のBANGER!!!のコラムで、『マネーボール』(11)以来久々にマイケル・ダナさんにインタビューしました。

本屋大賞1位のミステリーを映画化!
『ザリガニの鳴くところ』“湿地帯の音楽”って?
劇伴作曲家マイケル・ダナに独占インタビュー
https://www.banger.jp/movie/87084/

こちらの作品、国内盤サントラが発売される運びになったようなのですが、音楽解説の仕事が当方に回ってこなくて、ここだけの話ものすごく落ち込んでおりました。

そんな折、マイケルさんから「最近どうしてる?」と連絡が来まして、9月に帯状疱疹を患ったり、コロナ禍が全く収束する気がしなかったり、北朝鮮から狂ったようにミサイルがバンバン発射されたり、ロシアのウクライナ侵攻も酷い状況だったりして、つい「正直言ってあんまり調子よくないです。仕事は普段通りなんですが」と本音を漏らしてしまいました…。

すると「そうだな、どこの国も政治がひどいし、2020年代は今のところ最悪の時代だよね。日本も頻繁にミサイルが飛んできて大変だろうけど、気をしっかり持つんだよ」と励ましてくれまして、何だか泣きそうになりました。
それで「今だったらちょっと時間があるけど、なにかインタビューしたいとかある?」とダナさんから聞いてきてくれたので、お言葉に甘えてBANGER!!!のコラム用に『ザリガニの鳴くところ』の音楽について語って頂いたというわけです。

だから今回のマイケルさんへのインタビューは、これまで以上に思い入れがある内容となりました。

Where the Crawdads Sing – Original Motion Picture Soundtrack (amazon)
Where the Crawdads Sing – Original Motion Picture Soundtrack (TOWER RECORDS)

『ザリガニの鳴くところ』(22)の音楽については本記事で全て語り尽くしてしまった感があるので、当方のブログでは補足というか自分の感想を書かせて頂きたいと思います。

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BANGER!!!で書いたクリストファー・ノーラン作品音楽コラムの補足的なお話

ムービープラスでのクリストファー・ノーラン監督作品特集放送に合わせて、BANGER!!!で『プレステージ』(06)、『インセプション』(10)、『インターステラー』(14)、『TENET テネット』(20)の音楽紹介コラムを書きました。

音楽も“逆再生”だった?『テネット』ほかクリストファー・ノーラン作品の音楽を紐解く! 『インターステラー』『インセプション』
https://www.banger.jp/movie/83771/

どの作品も解説を書くなら1タイトルで2,500字くらい必要なくらい緻密な音楽なのですが、今回はノーラン作品4タイトルの音楽を3,000字以内で紹介するという無謀な試みをすることになりました…。

先日twitterにも書きましたが、ノーラン作品の音楽解説コラムを書くことになってから3週間くらい、昼と夜、就寝前に毎日毎日『プレステージ』『インセプション』『インターステラー』『TENET』の音楽を繰り返し聴いて、コラムでそれぞれの劇伴のどの部分を紹介して、どの部分は今更言うまでもないことだから削るかという取捨選択に明け暮れる日々が続きました。

その間、ワタクシの応援している阪神タイガースが連日不甲斐ない試合をしていて、情けない試合を何回も何回も見させられたストレスと、弊社の決算期と原稿締め切りが重なった疲労が祟って、人生初の帯状疱疹を患うという事態になりました…。

せめて当方のBANGER!!!コラムが多くの方に読んで頂けたら、この苦労も報われるかなと思っております。

そんなわけで、今回のブログではコラムで書ききれなかったネタをいくつかお話ししたいと思います。

その1:悲しくなるくらい音楽が注目されなかった『プレステージ』

BANGER!!!のコラムでも書きましたが、劇場公開当時『プレステージ』の音楽は本当に注目されなかった。どのくらい注目されていなかったかというと、パンフレットのスタッフ紹介のページに音楽担当のデヴィッド・ジュリアンの名前がなかったほど。『メメント』(98)と『インソムニア』(02)のパンフにはきちんと紹介されていたにもかかわらず、です。

ネット上に出回っているサントラレビュー(国内・海外の両方)を見てみても、その大半は「退屈な音楽(面白みのない)」という内容のものでした。だから少なくとも2006年当時、この映画のスコアででジュリアンがシェパード・トーン(無限音階)を実験的に使っていることなど誰も気づかなかったし、指摘もしていなかったのですね。自分の場合は「サントラを聴いていたけどシェパード・トーンの存在には気づかなかった」というタイプのリスナーでしたが。

『ダンケルク』(17)のようにハンス・ジマーがシェパード・トーンを使うと注目されるけど、ややマイナーなジュリアンがそれを行ってもなかなか気づかれない。批評なんてそういうものなのかもしれません。自分はそうならないよう気をつけたいと思っています。

ワタクシは『インソムニア』や『ディセント』(06)、『キャビン』(12)のジュリアンの音楽が好きなので、今回のコラムで彼の音楽を紹介する機会をもらえて嬉しかったです。

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