スピード・レーサー

映画『スピード・レーサー』のDVDがリリースになりました。

ワタクシがこの映画のサントラ盤ライナーノーツの仕事を担当したのは、
5月中旬頃でした。サロンパスルーブル丸の内の完成披露試写で本編を
見たのですが、極彩色のギラギラしたヴィジュアルに目がヤラレました。
DVDを見る時は、お部屋を明るくして鑑賞することをお勧めします。

資料によると、ウォシャウスキー兄弟は「ファミリー映画を作りたかった」と
言っているようなのですが、ううむ、どうなんだろう。この作品は懐かしの
アニメ『マッハGoGoGo』をハリウッドで実写化したもの。となればターゲットは
「子供の頃にアニメを見ていた大人」なのではないかと思うのですが、
それならシナリオをもっと大人向けにした方がよかったのでは?とワタクシは
思いました。

しかし、来年公開予定の『ドラゴンボール』実写版の出来がかなりヤバそうな
感じなので、それに比べたらこの映画は『マッハGoGoGo』への愛やリスペクトに
溢れていて、真摯な映画になっているんじゃないかと思います。

…とまぁ、内容的には難点もあるのですが、音楽は文句のつけようがありません。
『Mr.インクレディブル』(04)や『M:I:3』(06)のマイケル・ジアッキノが作曲を担当して
いるのですが、全編ド派手なオーケストラ・サウンドをカマしてくれておりまして、
これが実に気持ちよくて最高なのです。

ジアッキノ自身、子供の頃に原作アニメに熱中していたクチらしく、越部信義氏の
作曲したテーマ曲のメロディーをスコアの中に引用しているので、聴いていて
何とも懐かしい気分にさせてくれます(エレキギターの音も何となくレトロっぽいし)。
テクノ/ハードロック系のスカしたサントラにしなかったあたりに、原作のイメージを
大切にした製作スタッフの「愛」を感じます。

CDのハイライトは、何と言ってもエンドクレジットで流れる[20]の”Speed Racer”
でしょう。オリジナル主題歌のインスト・カヴァー曲なのですが、日本の歌謡曲の
雰囲気を忠実に再現したアレンジと、サンプリングされた「マッハGo!」の掛け声に
感涙必至。リップサービスで「日本のアニメは最高だぜ!」とおっしゃって下さる
ハリウッドの方がよくいますが、ジアッキノの『スピード・レーサー』愛はホンモノです。
多分。

国内盤CDはランブリング・レコーズより発売中。

『スピード・レーサー』オリジナル・サウンドトラック
音楽:マイケル・ジアッキノ
品番:GNCE7024
定価:2,625円

   

X-ファイル:真実を求めて

本日は今週7日から公開になる『X-ファイル:真実を求めて』についてのお話。

ワタクシこの映画を20世紀FOXさんのマスコミ試写室で拝見させて頂いたのですが、
当日はあのゲリラ豪雨が猛威をふるった日で、試写室に着いた時には全身ズブ濡れに
なっておりました。ま、今となってはいい思い出かも(話のネタとして)。

厳寒のウェストバージニア州でFBIの女性捜査官が失踪。サイキックな透視能力を持つ
ジョー神父がFBIに捜査協力を申し出るものの、当局はその超能力の真偽が判断出来ない。
そこで彼らはFBIを引退したスカリーに接近し、どこかで隠遁生活を送っている超常現象の
プロ、フォックス・モルダーを探し出し、捜査協力を要請する…というのが物語の導入部です。

モルダーはTVシリーズ最終話で第一級殺人(実は捏造)の罪で死刑を宣告され、
スカリーやドゲットの協力で辛くも刑務所から脱走したわけですが、はてさて一体
どうやって現場復帰するのかと思ったら、「捜査に協力すれば過去の事は水に流す」の
ひと言で片付いてしまいました。あっさりしてるなぁ〜(笑)。
あんまり書くとネタバレになるので、これ以降の展開については書かないでおきますね。

1998年の劇場版第1作は宇宙人を題材にした大がかりなSFドラマでしたが、
今回はオカルト/サイコスリラーに仕上がってます。ぱっと見た感じ地味〜な感じは
否めませんが、個人的にはシーズン6への壮大な予告編のようだった前作より、
話がきちっと完結している本作の方が気に入ってます。
思ったよりモルダーもスカリーも老け込んでなかったのもポイント高いかも。

さて前回はスコア盤とコンピ盤の2種類のCDが発売されましたが、今回は1種類のみ。
『X-ファイル』の全エピソードの音楽を手掛けたマーク・スノウによる入魂のオーケストラ・
スコア20曲と、UNKLEがリミックスした「X-ファイルのテーマ」とボーカル曲の”Broken”、
劇中にFBI捜査官役で顔を出しているイグジビットの書き下ろし曲の合計23曲を収録。

TVだと予算の都合でシンセサイザーで補わなくてはいけない部分も、映画版だと
贅沢にオーケストラが使えるので、スノウのスコアも音に重みがあって迫力があります。
また、エンドクレジットで流れるUNKLEのクールでビートの効いた曲もカッコイイです。
特に「X-ファイルのテーマ」のリミックスが耽美的な感じでオススメ。

輸入盤とジャケットの異なる国内盤は、ユニバーサルミュージックより発売中。

『X-ファイル:真実を求めて』オリジナル・サウンドトラック
音楽:マーク・スノウ
品番:UCCL1130
定価:2,500円