もうひとつの『アドレナリン:ハイ・ボルテージ』サウンドトラック

crank high voltage EP

大したネタじゃないし、書こうかどうしようか考えたのですが、せっかくなので『アドレナリン:ハイ・ボルテージ』(09)関連のネタをもうひとつ。

『ハイ・ボルテージ』は、マイク・パットンのスコア盤がLakeshore Recordsからリリースになっている事を前々回に書かせて頂きましたが、劇中使用曲を7曲収録したミニアルバム『Crank: High Voltage EP』がiTunes限定でこっそりリリースになっていたりします。

収録曲は以下の通り(曲名/アーティスト名)。

1. Honky Tonk Badonkadonk / Jarrett & Long
2. F**k You Tough Guy / T.S.O.L.
3. La Noche / Los Mil Amores
4. Suck My D**k! (X Rated Club Edition) / Dickheads
5. Unmei / Love and Hate
6. Spacer / Raney Shockne
7. Tears on My Pillow Little Anthony and The Imperials

Jarrett & Longは、前作『アドレナリン』(06)でビリー・レイ・サイラスのヒット曲をカヴァーしたカントリー・ロック・アーティスト。監督に気に入られてまた起用されたんだろうなぁ。

5曲目の”Unmei”はどういうわけか日本語の女性ボーカル曲。チープなテクノ風味のオケと「♪そーらをー見上げるとーきーあなーたも見てるー ♪It’s Destiny, I find You」というノーテンキな歌詞が印象に残る珍奇な一品(誰が歌っているのかは不明)。映画の中でもひときわ異彩を放っておりましたね、そういえば。

劇中最も目立った使われ方をしていたREO Speedwagonの”Keep On LovingYou”は、やはりというか何というか「大人の事情(=たぶん権利関係)」で収録されませんでした。といっても、この映画が好きでサントラに興味がある方の6割は『グランド・セフト・オート:バイスシティ』が好きで、そのうちの3割の方は『バイスシティ』のサントラも持っていると思うので、Emotion 98.3を聴けばこの曲が収録されているのでレッツ・トライ。

ちなみにネヴェルダイン/テイラー監督の新作は、ジェラルド・バトラー主演の近未来暴力ゲーム・アクション『Gamer』(09)。主演俳優の人選といい、映画のテーマといい、「無骨な男にイカレたアクションをやらせる」という点で一貫したものがありますな。楽しみだけど。

『Gamer』オフィシャルサイト(英語)
http://gamerthemovie.com/

  

アドレナリン:ハイ・ボルテージ

crank high voltage

先週仕事で東京に行ってきた際、遅ればせながら『アドレナリン:ハイ・ボルテージ』(09)を鑑賞。仙台の上映館は家から遠くて不便だったので、だったら新宿バルト9で見てくるからいいや、という事になったわけです。

前作『アドレナリン』(06)は、「アドレナリンを出し続けないと即、死亡!」という奇抜なアイデア、トニー・スコットも真っ青のガチャガチャした映像、そして大真面目にバカアクションを演じるジェイソン・ステイサムの迫真の演技が奇跡の融合を果たした傑作B級アクション映画。レーティングが前作のR-15からR-18にアップした本作は、きっと前作以上のものを見せてくれるはず・・・と、期待して観に行ったのですが、ま、結論としては「奇跡ってものは、2度は起きないもんなんだな」という感じでした。

いや、確かにスゴイ事はやっているんですが、個人的な感想を述べさせて頂くと、それでも前作のインパクトは超えられなかったなぁ、と思った次第でして。

今回のシェブ・チェリオス(ステイサム)は、いろいろあってバッテリー式の人工心臓を埋め込まれたため、「充電しないと即、死亡!」という状況に陥ってしまうわけですが、充電したければとりあえず何らかの形で電気を喰らえばいいので(わざとスタンガンを喰らうとか、車のバッテリーを身体に繋げるとか)、前作のような「どうすればアドレナリンを一定以上放出できるのか?」「おお、その手があったか!」・・・というアイデアの閃きが感じられないのがちと残念なところ。

あと、シェブのガールフレンド、イヴ(エイミー・スマート)のキャラが変わったのも残念。前作の天然系おとぼけ癒しキャラのままでいてほしかったのに・・・。

レーティングが上がった事で覚悟はしていたのですが、今回はエログロ描写がかなり過激になってます。ヘタなホラー映画以上にスゴイです。しかし無意味に下品な描写が増えたのは個人的にマイナスでした。

ま、前作も決して上品な映画じゃありませんでしたが、チャイナタウンのアレとかカーチェイス中のアレとか、前作の場合、下品な描写には「全てはアドレナリンを放出するため」という理由が一応あったわけです。でも今回の『ハイ・ボルテージ』は、エッチな描写に大して意味がないのがツライ。「下ネタはごくたまに織り交ぜる事でギャグにメリハリがつく。ただ下品なネタは言語道断」と『魁!! クロマティ高校』の山口ノボルも言ってましたが、ま、そういう事です。(出典:『魁!! クロマティ高校 入学案内』より)

と、まぁ期待ほどではなかった続編ではありますが、音楽にはキラリと光るものがありました。パンフレットでは全然触れられてませんでしたが、本作のオリジナル・スコアは、何とあのマイク・パットン(元Faith No More、Mr. Bungle、Fantomas等々)が作曲しているのです。

前作は既製曲のイカれた選曲と、ポール・ハスリンガーのハードロック・スコアで構成されてましたが、パットンのスコアも相当ヤバイ。全編に渡ってギターを派手にかき鳴らし、ドコドコとドラムを打ち鳴らす。サンプリング/プログラミングも多用し、真っ当な映画音楽家では躊躇しそうなマッドな領域にも軽々と足を踏み入れてます。

一見、場当たり的にヤケクソな音楽を作っているように見えて、きちんと映画のメインテーマ的なメロディー(「たららーーん♪ たららーーん♪」というアレ。詳しくはサントラ2曲目の”Chelios”を聴いて下さい)があって、それを転調したり、アレンジを変えて変奏する効率的な作曲法でスコアを書いているのがまたニクい。さすが「奇才」マイク・パットン。

「電気」とか「充電」という本作の重要な要素をキッチリ表現した、ノイジーでアッパーでハイテンションなサウンドは一聴の価値あり。フツーの音楽に食傷気味のチャレンジ精神旺盛な音楽ファンは、Lakeshore Recordsより発売中の輸入盤をお試しあれ。

前作『アドレナリン』については、後日改めてという事で。

  

ワイルド・スピードMAX(オリジナル・スコアについて)

fast and furious

・・・というわけで、本日は『ワイルド・スピードMAX』の音楽についてのお話です。
音楽といっても、ここでご紹介するのはオリジナル・スコア。歌モノではありません。

スコアの作曲を担当したのは、近年「アクション映画の音楽ならオレに任せろ!」ってな
フィルモグラフィをモノにしてしまっている作曲家、ブライアン・タイラーです。

前作『TOKYO DRIFT』(06)に続いての登板という事で、彼はこのシリーズで初めて連続
登板を果たした作曲家という事になりました(1作目はBT、2作目はデヴィッド・アーノルド、
3作目はタイラー・・・と、監督が代わる度に作曲家も毎回変わっていたのです)。

『TOKYO DRIFT』のスコア盤リリースの時、ライナーノーツ用にタイラーさんにインタビュー
したのですが、あの時は映画音楽家というよりロックバンドのあんちゃん的なノリでいろいろ
語ってくれました。とはいえ、まぁ年に4、5本の映画音楽を担当する多忙な人だし、さすがに
今回は忙しいだろうなーと思いつつ取材のアポを取ってみたら、意外とあっさりOKが出ました。
素晴らしい。

・・・というわけで、今回も国内版スコア・アルバムのライナーノーツ用に「(音楽を担当する
映画の)作品選びのポイント」、「ジャスティン・リン監督との出会い」、「タイラーが語る
『ワイルド・スピードMAX』の音楽」・・・という感じでいろいろ語ってもらいました。

例によって、詳しくはランブリング・レコーズからリリースになった国内盤をお買い求め頂いて、
拙稿に目を通して頂ければと思います。こういう俗っぽい映画でも、結構いろいろ考えたり
分析したりして作曲してるんだなーという事がよく分かるお話でした。

しかも、インタビューから数週間後に「〆切りには間に合ったかな?」なーんて気を遣って
くれるナイスガイっぷりも見せてくれました。こういう気遣いがとっても嬉しい今日この頃。

さて今回のスコア。サウンド的には『TOKYO DRIFT』と同様、タイラーさんが演奏する
ラウドなギター、ドラム、ベース、シンセサイザーにオーケストラを組み合わせたハード
ロック調のスコアです。いわゆるアクション映画における「タイラー節」ってやつでしょうか。
『TOKYO DRIFT』ではかなり鳴らしまくってましたが、今回もかなりイッちゃってます。

一部で「『TOKYO DRIFT』との違いが分からん」という意見もありますが、よーく聴くと
音楽のトーンが微妙に異なります。何と言っても、今回はスコアでも「笑い」の要素がない。
前作のサントラだと、例えば”Hot Fuji”とか”Sumo”あたりのスコアは若干コミカルな要素が
ありましたが、今回は全体的にシリアス仕様になってます。

さらに今回はカーアクション・シーンで既製のヒップホップとかハードロックではなく、タイラー
さんのスコアで盛り上げてくれるのがスコア・ファンとしては嬉しいところ。映画冒頭の
タンクローリー襲撃シーンの”Landtrain”、道路封鎖なしのストリート・レース時の”Dom vs
Brian”、メキシコ国境の隠しトンネル内を疾走するシーンの”Tunnel”など、タイラーさんの
激アツ・スコアが炸裂。多分、本作がシリーズで一番スコア比率の高い作品なんじゃないかと
思います(歌モノはパーティーのシーンとかで使ってます)。

個人的には、アルバムの中でもイカレ系な感じの”Outta Sight”や”Fast and Furious”が
ラウドかつノイジーでお気に入り。メロディーを堪能したい方はメインテーマをフィーチャーした
“Suite”をどうぞ。78分近くスコアをCDに収録しているので、そういう意味でもお得な感じです。

『ワイルド・スピードMAX』オリジナル・サウンドトラック・スコア
音楽:ブライアン・タイラー
品番:GNCE7061
定価:2,625円

  

豪華ミュージシャンが粋なフュージョン・サウンドを聴かせてくれる『デュプリシティ』のサントラ盤

duplicity

ワタクシはジュリア・ロバーツが苦手なので、
劇場公開時はスルーしていたのですが、
ま、DVDレンタルなら見てもいいかな、という事で『デュプリシティ』(09)を鑑賞。

ジュリア嫌いの自分がなぜ本作を見るに至ったかというと、
先日サントラ盤を購入したところ、
ジェームズ・ニュートン・ハワード(以下JNH)のスコアが実によかったので、
本編の方もどんな感じか見てみたくなったわけでございます。

 

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