大傑作『ゼロ・グラビティ』のサントラは是非”アルバム”で買って下さい…!

gravity

映画『ゼロ・グラビティ』(13)は映像、物語のみならず音楽(オリジナル・スコア)も素晴らしかった。
僕個人としては、作家性の強いSF映画の音楽はクリフ・マルチネスの『ソラリス』(02)と、
クリント・マンセルの『月に囚われた男』(09)の2本でもう最高レベルに達したと思っていました。
もうこれ以上のものは出て来ないのではないか、と。

ところが出てしまったんですねー。
今回の『ゼロ・グラビティ』の音楽、聴いていて鳥肌が立ちました。
こんなにも心の底から感情を沸き立たせてくれる音楽がまだあったとは、と驚いたほどです。

作曲はスティーブン・プライス。
『ワールズ・エンド 酔っぱらいが地球を救う!』(13)とか、
『アタック・ザ・ブロック』(11)の音楽を手掛けた若手作曲家です。
プライスのバイオグラフィーはサントラ盤封入のライナーノーツに詳しく書かせて頂きましたが、
それにしてもエドガー・ライト印のコメディ映画の音楽を作曲していた人に、
シリアス極まりないSFサバイバル映画の音楽を任せてしまうのだから、
アルフォンソ・キュアロン監督の人選もスゴイものがありますね…。
結果的にその選択は大正解だったわけですが。

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『キャプテン・フィリップス』でヘンリー・ジャックマンが描く「単純じゃない世界」の音楽

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今回は『キャプテン・フィリップス』(13)の音楽について。
作曲は『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(11)のヘンリー・ジャックマン。
ポール・グリーングラス作品の常連、ジョン・パウエルではありません。

まず起用されたのがパウエルではなくジャックマンだった事に驚いたのですが、
近年のパウエルはアニメ映画の作曲機会が増えてきたので、
作品傾向が若干変わってきたのかもしれません。
とはいえ、リモート・コントロール所属のジャックマンも、
過去にパウエルの作品(『ハンコック』(08)など)で追加音楽を作曲しているので、
全く繋がりがないというわけでもないでしょう。
「パウエルに作曲を依頼したらジャックマンを推薦された」なんて経緯もあったかもしれません。
(あくまで推測)

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要注目! 新進気鋭の作曲家ライアン・アモンによる『エリジウム』の音楽

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前回のつづき。
何で自分が『エリジウム』(13)の日本最速試写を観られたかというと、
この映画のサントラ盤にライナーノーツを書かせて頂く事になったからです。
仕事のお声がけを頂くまでは、
「『エリジウム』の音楽は『第9地区』(09)のクリントン・ショーターじゃないんだぁ」
「ライアン・アモンってどういう人なのかなー」などと呑気にしていたのですが、
嬉しい事に自分がライナーを書くという事態になり、
慌てて資料をかき集める事になった次第です。

何しろ今回が映画音楽初挑戦のコンポーザーなので、資料が少ない。
試写も日本最速試写だったのでまだプレス資料が出来上がってなかったし。
キリアン・マーフィーの『Watching the Detectives』(07)という日本未公開映画の追加音楽を担当したらしいのですが、
マネージメント事務所の公式資料にはその事が掲載されていなかったりして、
情報の扱いがいろいろ難しい。
ハッキリ分かっているのは、City of the Fallen名義で映画の予告編音楽を作曲しているという事。
基本的にユニット名だと思うのですが、一応社名として登録されているらしいです。
最近は予告編音楽がアツいですね。Two Steps From Hellとか。

 

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『スマーフ2』のスコア盤でヘイター・ペレイラの職人技を楽しむ

smurfs2

本日は前回のつづき。
『スマーフ2 アイドル救出大作戦!』(13)の音楽について。
作曲は前作に引き続きヘイター・ペレイラの担当。
この方、シンプリー・レッドの元ギタリストでもあります。
1988年から1996年までバンドメンバーでした。

ペレイラの名前はハンス・ジマーの音楽が好きな人なら既にご存じでしょう。
ジマーの『グラディエーター』(00)とか『M:I-2』(00)、
ハリー・グレッグソン=ウィリアムズの『アンストッパブル』(10)とか、
『サブウェイ123 激突』(09)、『ドミノ』(05)などのスコアでもギターを弾いてます。

 

ギタリストとしてはアクションからシリアスドラマ、ロマコメまで、
幅広いジャンルに起用されているのですが、
「映画音楽家」としては圧倒的にロマコメとアニメ映画が多いのがこの人の特徴です。
『怪盗グルーの月泥棒』(10)とその続編、
『ビバリー・ヒルズ・チワワ』(08)に『おさるのジョージ』(06)、
バンドメンバー役でカメオ出演もしている『恋するベーカリー』(09:ジマーと共作)、
そして『スマーフ』シリーズというラインナップをモノにしています。
シリアスドラマは『ヘイヴン 墜ちた楽園』(04)と、
『Ask The Dust』(06:ラミン・ジャワディと共作)くらいではないかと。

で、今回サントラ盤のライナーノーツを書かせて頂く事になったわけですが、
共通の知人がいたのでペレイラさんにインタビューさせて貰う事が出来ました。
先に結論から申し上げますと、すごくいい人でした。

リモート・コントロール所属アーティストから引っ張りだこの多忙な人なので、
当初の予定より質問の回答が遅れたのですが、
後になって「この前は返事遅れてゴメンな。〆切りには間に合ったかい?」
なーんてわざわざペレイラさんの方から連絡を寄越してくれたりして、
それが嬉しかった…というか、誇張でも何でもなくちょっと感動しました。
『ホワイトハウス・ダウン』(13)のトーマス・ヴァンカーさんもいい人だったけど。

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メインテーマがカッコいい『ホワイトハウス・ダウン』の音楽

white house down

というわけで前回の投稿の続き。
『ホワイトハウス・ダウン』(13:以下WHD)の音楽について。
こちらのサントラ盤のライナーノーツを書かせて頂きました。

作曲はハラルド・クローサーとトーマス・ヴァンカーの二人。
スコアの作曲から映画の共同プロデュース、
さらに共同で脚本まで手掛けてしまうクローサーと、
彼の下で下積みをしながらキャリアを築いてきたヴァンカー。
綴りは「Thomas Wandar」なので表記は「ワンダー」じゃないの?とも思うのですが、
いろいろ調べてみたら「ワンダーでもヴァンカーでもどっちでもOK」という状態で、
こういう場合どっちにするべきかとかなり悩みました。

しかしながら同じ発売元(ランブリング・レコーズさん)の
『デイ・アフター・トゥモロー』(04)のサントラ盤ライナーノーツには、
「トーマス・ヴァンカー」と記載されておりましたので、
今回もそれに合わせた形になります。
ハンス・ジマーも今の表記になるまで「ズィマー」とか「ツィマー」とか安定しなかったので、
ヴァンカーも今よりもっとメジャーになったら、
カタカナ表記も統一されるのではないかなーと思います。

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