タレント吹き替えの是非を『アイス・エイジ』を観て考えてみたの巻

ice age

まぁ是非もなにもワタクシ外国映画のタレント吹き替えは否定派でして、
「報道陣を前に公開アフレコ」なんて話題を見たり聞いたりすると拒否反応が起こるのですが、
否定するからには理由を明確にしておこうと思ってあれこれ考えてみました。

やはり「声の演技がヘタだから」というのが第一の理由ですが、
それじゃあ無難な芝居をしていたらいいのかと言われたらやっぱり嫌なわけで。
先日そのへんの理由を真剣に考えてみた次第です。

その結果「タレント吹き替えは役を作り込んでくれないから嫌だ」という結論に至りました。
演じるキャラになりきってくれるのではなくて、
タレントの普段のキャラをそのまま芝居に持ち込んだ吹き替えが嫌だなーというか何というか。

 

例えば手塚秀彰さんのニック・フューリーの吹き替えは、
「サミュエル・L・ジャクソンが演じるニック・フューリー」を意識した役作りをして下さるけども、
竹中直人のニック・フューリーはジャクソンにもキャラにも寄せてくれていない感じがする。
手塚さんのフューリーは「日本語で喋るニック・フューリー(またはサミュエル・L・ジャクソン)」に見えるけど、
竹中直人のフューリーは「竹中直人が喋ってるニック・フューリー」にしか聞こえない。
剛力彩芽の『プロメテウス』(13)なんて役作りとかキャラ寄せ以前の問題だったし。

今度の『アントマン』の吹き替え版も、
マイケル・ペーニャが「ヒーハー!」とか言い出さないか非常に心配です。
(ま、ワタクシは字幕版で観ますけどね…)
マイケル・ペーニャは飄々としてるけど演技派なんですよ!
『エンド・オブ・ウォッチ』(12)とか『フューリー』(14)とかハードな映画にも出てるんですよ!
お笑い芸人が吹き替えるような俳優じゃないんだよ…!

 

それじゃあアニメ映画の原語版はどうなってるの?
プロの声優じゃなくてハリウッドスターが声優やってるよ?という話になるわけですが、
ここでやっと『アイス・エイジ』(02)の話になるのでした。
(そういえばこの映画も竹中直人がアフレコやってたなぁ…)

昨年ランブリング・レコーズさんが『アイス・エイジ』1作目のサントラ盤をDSDリマスタリングで再発売した際、
ワタクシ新たにライナーノーツを書かせて頂くことになったのですが、
原稿執筆のため久々に本編を観直したところ、
ジョン・レグイザモの声の演技がスゴかったことを改めて実感した次第でして。

レグイザモはナマケモノのシドの声を担当しているのですが、
普段映画に出ている時と全然違う調子の声にまず驚くわけです。
話によるとレグイザモはシドのこの声に辿り着くまで30種類ぐらいの声を試したらしく、
動物ドキュメンタリー番組を見た時に、
ナマケモノが口の中に食料を蓄える習性があるのを知って、
「口の中に何か入っているような喋り方」を考案してそれが採用になったのだとか。
スゲェ凝りようです。
レグイザモは『タイタンA.E.』(00)の時もグーン役でヘンな声を出していましたが、
彼はちゃんと演じるキャラに寄せた役作りをしてくれているわけです。

原語音声で俳優が凝りに凝った演技をしているからといって、
タレント吹き替えでここまで再現して演じてくれる人は恐らくいないでしょう。
バイト感覚というかやっつけ仕事的にアフレコやってる人がほとんどなので。
お笑い芸人が吹き替えたからとって、
それほど面白くなるわけでもないのが吹き替えの面白いところですね(ややこしい)。
まぁそれでもタレント吹き替えは減らないと思いますが。
それどころか今後もっと増えていくでしょうね…。
『ファンタスティック・フォー』(15)の吹き替えも悲惨なことになっているので。

 

さて話は戻って『アイス・エイジ』の音楽についてなのですが、
デヴィッド・ニューマンがなかなか手堅い職人気質の仕事をしております。
この人はどうも弟トーマスの活躍の陰に隠れがちですが、
『ギャラクシー・クエスト』(99)とか『ザ・スピリット』(08)とか結構いい仕事してるんですよね。。

ニューマン一家の中では、
どちらかというとワールドミュージックやエレクトロニクスに精通したトーマスが異端な感じで、
兄貴のデヴィッドは父親アルフレッド譲りの正統派オーケストラ音楽を書くタイプではないかと思います。
従兄のランディ・ニューマンはシニカル系のシンガー・ソングライターだし。

『アイス・エイジ』では愉快なオーケストラ音楽を鳴らしてくれているし、
さりげなくドミトリー・カバレフスキーの「道化師」を挿入する”裏技”も披露してくれているので、
この機会にサントラ盤を聴いてみて頂きたいと思います。

『アイス・エイジ』オリジナル・サウンドトラック
音楽:デヴィッド・ニューマン
レーベル:Rambling Records
品番:RBCP-2822
発売日:2014/11/19
価格:1,800円(+税)

 

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