追悼 リー・タマホリ監督 個人的に好きだった作品を振り返る(その2:『スパイダー』『007 ダイ・アナザー・デイ』+『ワンス・ウォリアーズ』)

2025年11月7日に亡くなった映画監督、リー・タマホリ氏に追悼の意を表し、先日個人的に好きな彼の監督作を振り返るブログを書きました。

一度で全部ご紹介するつもりが、思ったより文章が長くなってしまったので、二回に分けることにした次第です。
前回タマホリ監督がジェリー・ゴールドスミスの音楽を好んでいたという話を書いて終わったので、本日はその続きから。

で、タマホリ監督が『ザ・ワイルド』(97)に続いて敬愛するゴールドスミスにスコア作曲を依頼したのが、『コレクター(原題:Kiss the Girls)』(97)に続くモーガン・フリーマン主演の”アレックス・クロス”シリーズ第二弾『スパイダー』(01)でした。

正直に申しますと、初見時はオーソドックスな作りの映画…というかあまりパッとしない印象でした。しかしVareseから2021年に発売になった拡張版サントラのブックレットを読んで見方が少し変わりました。
タマホリ監督曰く「『セブン』(95)のようなスタイリッシュなシリアルキラー映画を模倣して作っても意味がない」ので、「70年代のドン・シーゲル監督作の精神に原点回帰して撮った」そうで、ああ、自分が『スパイダー』を観て「オーソドックス」と思ったのはそういうところだったのかと気がついたのでした。彼に言わせればゲイリー・フレダーが監督した前作『コレクター』ですらも「『セブン』のクローンのような映画」なのだとか。

そのせいなのか、ゴールドスミスの劇伴にもどことなく1970年代の雰囲気が感じられる。タイトルの「蜘蛛」の足音(?)を意識したような打ち込みのリズムの音色がちょっと面白い感じ。そういった細かい点も含めて、当時よりもいま聴いたほうが劇伴の”味”が分かるような気がします。

『007 ダイ・アナザー・デイ』については、以前BANGER!!!のコラムでいろいろ書いたので、そちらをご覧頂ければと思います。

巨匠のお墨付き! テクノ系「次世代型『007』音楽」を確立した作曲家デヴィッド・アーノルド | BANGER!!! https://www.banger.jp/movie/36451/

あとブログでもいろいろ書いてました。

ま、ひと言で申し上げるなら「007で『トリプルX』(00)のような映画を撮ろうと思ったらあのようになった」と(のちにタマホリは『トリプルX:ネクスト・レベル』(05)を撮っています)。

なお前回のブログで書いた『ワンス・ウォリアーズ』(94)ですが、何とMilan Recordsからサントラが出ていたのでした。確か国内盤も出ていたんじゃないかな…?当時「スクリーン」の「今月のサントラ」のコーナーで見かけた気がするのです。輸入盤の発売元がMilanだから、日本だと当時BMGビクターの取り扱いだったはず。

Once Were Warriors (1994) Original Motion Picture Soundtrack – amazon

ちなみに収録曲はこんな感じ。

  1. Unknown Artist – Karanga (Trad.)
  2. Tama Renata – Once Were Warriors (The Awakening)
  3. Gifted & Brown – So Much Soul
  4. Murray Grindlay, Murray McNabb & H. Melbourne – Sunrise Flutes (Koauau)
  5. Southside Of Bombay – What’s The Time Mr Wolf
  6. Murray Grindlay & Murray McNabb –Grace In The Alley
  7. Herbs – Home Grown
  8. Murray Grindlay & Murray McNabb – Grace Visiting Toot
  9. Survival (2) –Rua Kenana
  10. H. Melbourne – Paatere
  11. Moana & The Moa Hunters –Tahi (Roots Mix)
  12. Murray Grindlay, Murray McNabb & H. Melbourne – Screaming Flutes/Haka (Koauau)
  13. Merenia – U Know (I Like It)
  14. Murray Grindlay & Murray McNabb – Radio Thief
  15. Maree Sheenan – Kia Tu Mahea (To Be Free)
  16. Murray Grindlay & Murray McNabb – Gang Car
  17. Upper Hutt Posse – Ragga Girl
  18. Ardijah – Gim’me Time
  19. Jake & Beth – Here Is My Heart
  20. E.Tu – Whakamutungia Tenei Mahi
  21. Murray Grindlay, Murray McNabb & Tama Renata –Bully Gets His
  22. Tama Renata – Theme From Once Were Warriors

あと『ワンス・ウォリアーズ』はブルーレイ化されました。

『ワンス・ウォリアーズ』[Blu-ray] – amazon

2006年のやらかしはさておき、「無粋なツッコミをパワフルな演出で押さえ込む」という豪快な手腕を持ったユニークな監督だったと思います。タマホリ監督のご冥福をお祈りいたします。

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