28年前にやるべきだったこと――『トレインスポッティング』拡張版サントラを自作したお話。

Filmarksの1990年代名作上映「Filmarks 90’s」企画の第13弾で、2026年1月30日から2週間限定で『トレインスポッティング』『ファーゴ』『ユージュアル・サスペクツ』(いずれも1996年)のリバイバル上映があるとか。いや懐かしいですね…。これら全部仙台駅東口の今はなき映画館「シネアート」で観た作品です。

『トレインスポッティング』は当時日本でも大ヒット、ついでにサントラ盤も売れに売れたわけですが、自分も当時東芝EMIから出ていた国内盤サントラを買いました。ブラーやニュー・オーダーを聴くようになったのもこのサントラの影響だったと思います。


Trainspotting Music from the Motion Picture (2016 reissue) – amazon
Trainspotting Music from the Motion Picture (Analog) – TOWER RECORDS

自分はスコア盤(劇伴集)に比べると歌曲集のサントラにあまり思い入れがないので、大学を卒業する頃に聞き飽きてしまってサントラ盤を売ってしまったのでした。
しかしいまの仕事(映画音楽物書き)をするようになってから、「あれは1990年代のサントラ業界を知る資料として重要なアルバムなのではないか?」と思うようになり、結局サントラを買い直したという経緯がございました。「一度売っちゃってごめんな…」と『トレインスポッティング』のサントラに謝った次第です。

閑話休題。

さて熱心なサントラリスナーの方には説明不要ですが、『トレインスポッティング』のサントラ盤は、映画のVHS/LDが発売になるタイミングに合わせて第2弾サントラ(通称”緑盤”)が発売されました。

第2弾サントラ発売の情報は当時もちゃんとキャッチしていたのですが、自分は購入を見送ったのでした。それはなぜかと申しますと、まず収録曲をご覧頂きたい。

  1. PF Project Featuring Ewan McGregor – Choose Life
  2. Iggy Pop – The Passenger
  3. David Bowie – Golden Years
  4. Iggy Pop – Nightclubbing (Baby Doc Remix)
  5. Fun Boy Three – Our Lips Are Sealed
  6. Primal Scream – Come Together
  7. Joy Division – Atmosphere
  8. Goldie – Inner City Life
  9. Underworld – Born Slippy / NUXX (Darren Price Mix)

このように第1弾サントラに収録しきれなかった劇中使用曲は5曲(「A Final Hit」の長尺版も入れれば6曲)だけで、あとは”映画の雰囲気を象徴する”未使用曲と第1弾サントラ収録曲の別ミックスだったのですね。
いわゆる「インスパイア盤サントラ」に全く興味がない当方としては、劇中使用曲5曲には心を引かれたものの、「5曲のためだけに2,548円出すのはいかがなものか」と逡巡の末購入を見送ったのでありました。

そして時は流れて2025年。ネットで『トレインスポッティング』第2集サントラの中古相場を調べてみたら、だいたい500円以下で買えそうだということが分かりました。
「今度リバイバル上映があるんだから、この機会に2つのサントラをひとつにまとめて完全版サントラでも自作するか」と思い立ち、第2集サントラを330円で入手してサントラ盤の編集作業に入ったのでした。

なお”橙盤”こと第1集のサントラ収録曲はこんな感じ。

  1. Iggy Pop – Lust For Life
  2. Brian Eno – Deep Blue Day
  3. Primal Scream – Trainspotting
  4. Sleeper – Atomic
  5. New Order – Temptation
  6. Iggy Pop – Nightclubbing
  7. Blur – Sing
  8. Lou Reed – Perfect Day
  9. Pulp – Mile End
  10. Bedrock Featuring KYO – For What You Dream Of (Full On Renaissance Mix)
  11. Elastica – 2:1
  12. Leftfield – A Final Hit
  13. Underworld – Born Slippy (NUXX)
  14. Damon Albarn – Closet Romantic

「どうせなら映画で使われた順番に曲を並べたいなぁ」と考えるのがサントラ愛好家。そこで取り出したるは『トレインスポッティング』の劇場用パンフレット。
使用曲リストが載っておりまして、しかも劇中で使われた順番に楽曲名が記載されている。これは便利。
ただ1箇所だけ、ニュー・オーダーの「テンプテーション」がサントラ未収録で、ヘヴン17の「テンプテーション」のほうがサントラに収録という記載ミスがございます。おそらく同じ曲名なので間違ったのでしょう。

2枚のサントラから「映画本編で使われた曲」だけを使用順に並べてみたら、このような感じになりました。

トミーの葬儀のシーンで流れたバッハの「わが心の切なる願い」と、スパッドが口ずさんでいた「Two Little Boys」は割愛。あとレフトフィールドの「A Final Hit」は個人的な趣味で第2集の長尺版のほうを選びました。
総プレイタイムは100分くらい。28年前にやるべきだった作業を終えて達成感がありました。

ちなみに当方の好きな『トレインスポッティング』使用曲トップ5はこんな感じです。

Temptation – New Order
Perfect Day – Lou Reed
Closet Romantic – Damon Albarn
Underworld – Dark & Long (Dark Train Mix)
Atomic – Sleeper

「Closet Romantic」を聴いて「デーモンさんは映画音楽の劇伴もいけるんじゃないか?」と当時思いましたが、その後『ラビナス』(99)や『私が愛したギャングスター』(00)の劇伴を作曲していたので、当方の感覚も満更ではなかったなと思ったりもします。
また、ダニー・ボイル監督はアンダーワールドの”Dark & Long”とプライマル・スクリームの”Trainspotting”を劇伴的に使っていたのではないかな、という気がします。アンダーワールドは後年『こわれゆく世界の中で』(06)などで劇伴作曲にチャレンジしていましたし。

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